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177 外堀を埋めさせたの俺自身だった

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11月11日の月曜日、放課後。

なぜ勇太が間門家と家庭裁判所で調停を行い、みずから負けを選んだかという話題になった。


登校日でない伊集院君がわざわざ登校して、2年3組の教室で断言した。

「真子君と嘉菜君への『愛』しか思い付かない」

クラスメイト、他クラスの女子達がライブ配信をしている。

すごい決め顔だ。もう、これが事実になってしまった。

間門嘉菜、吉田真子が涙ぐんで喜んだ。

きゃ~、きゃ~、きゃ~。集まった女子達から巻き起こる大歓声。

伊集院君の肯定で、真子と嘉菜は本当に勇太との恋が大きく進展したと思った。

◇◇

思い切り、勇太が思っていなかった方向に事態が進んでいる。

しかし勇太の外堀は埋まっていくし、勇太も嘉菜からの好意を自覚するようになった。

伊集院君の『名推理』の場には、他のクラスの女子もいた。

さらにこの時、1年生の梓まで2年3組に入ってきてダメ押しした。カオルまで茶薔薇学園から駆けつけてきた。

「よろしくな、真子、嘉菜さん」

カオルが嘉菜と真子の手をつかんだ。

「私、ルナさん、カオルちゃんも同じ結論に達しました。私達もお二人を歓迎します」

伊集院君の話を完璧に肯定してしまった。

梓も、真子と嘉菜と握手した。

そう、梓ら勇太ファミリーは、勇太の選択を聞いた時点で腹が決まった。真子と嘉菜も受け入れる、ということだと思っている。

肝心の勇太本人は何も知らず、体育館で部活の準備をしていた。

梓に連絡をもらったルナが勇太を呼んだ。

「どした?ルナ」
「吉田真子さんも、間門嘉菜さんも、勇太の気持ちを理解していたよ」

そう言うルナはヒマワリのような笑顔を見せてくれる。

え、と思いつつも、今朝からの真子の熱い視線の意味を理解した。

「そういうことだったんだ・・」

そして間門嘉菜さんもセットで『勇太君にふさわしくなれたと思ったら、2人で返事をしに行きます』ですと。

えええ、と声を出してしまった。


しかし、考えてみて分かった。やっぱり誤解させたのは勇太。

客観的に視点を変えた。

勇太がパラレル勇太の責任を取ったなんて、ルナでさえ分からない。

だから、最近の間門嘉菜のことを主点に置いた。

本来、勇太は間門との調停で100パーセント勝てるはずだった。

それを捨てた理由が言えない。

言えないから、みんな起こった事象だけで判断する。

最近になって、真子と嘉菜が付き合い始めた。

真子はパラ高1年のときから最低だった勇太を見捨てなかった、ただ一人のクラスメイト女子。

嘉菜は勇太が表面上は家の大人達と敵対する間門の人間。けれど梓の異母姉妹。

2人と勇太は仲よくなった。

2人はルナ、梓、カオルとも仲良くなった。

しかし間門嘉菜と吉田真子は、母親が『マカド』の社長と秘書という関係。

勇太と2人の両親は敵対関係にある。

まだ熱愛というには早いけど、真子と嘉菜は勇太に取って大切な女の子。

軟着陸の解決策が見つからない。けれど、調停という大きな転機が訪れてしまった。

勇太が調停に勝つと、間門と表面上の和解はできるが、嘉菜の将来、引いては親が間門で働く真子とまで遺恨を残す。

2人との絆を勇太は選んだ。

結果、自分だけでなく、ファミリーの傷も残した。間門の大人達の矜持と覚悟も行き場をなくさせた。

そうして傷付かず残るもの。

「ああ、そうか。俺、パラレル勇太抜きだと、2人を守るためだけに動いたみたくなってるよ・・」

推理した人達も、その結論に行き着いた。

勇太は来たばかりの部活を離れ、ルナと一緒に2年3組の教室に向かった。

柔道部員も付いてきた。

教室に入った。

伊集院君、真子は当たり前として下級生の梓、他校のカオルと嘉菜もいる。

「ユウ兄ちゃん、嘉菜さんも真子さんも、ユウ兄ちゃんの真意に気付いてくれてたよ」

「おう、アタイ達は大歓迎だ」

ルナは勇太の背中をパンパンしながら、「勇太、素敵だよ」と褒めてくれた。

「ふむ?」

巻き起こる大拍手の中、『ふむ?』しか言葉を発せない勇太だった。


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