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163 どうせ片思いですから
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間門嘉菜は落ち込みながらも、資料を置いてある部屋に入った。
勇太と間門家の確執。具体的に間門が課したものは、どんな制約なのか確認しようとしている。
間門家の会社は服飾関連の製造、販売が主な事業。勇太前世のユ●ク●のような展開もしている。
店舗もあり、スポーツウエアの『マカド』製品も若年層に人気がある。
嘉菜は聡明で、家を継ぐために法律も勉強している。家を継いでから見る予定だったファイルの中に坂元家に関するものを見つけた。
弁護士を立てて作った書類を確認した。
ショックだった。
制限レベルが10段階あるとして、レベル2相当の相互財産放棄くらいなら解除は簡単。葉子と梓は法的には、その程度の約束をしている。
間門家から勇太へ出した制限は、4年前はレベル2相当だった。しかし1年前にレベル5くらいに強めてある。
勇太が間門家の親戚だと、公的な名乗りの禁止。両者が絡む営利的な交渉の制限と厳しいものだった。
嘉菜が『マカド』の歌を勇太に依頼できない。そこに金銭が絡むから。
勇太が作詞作曲を担当する純子&風花も、間門関連のセレモニーなどで歌えない。勇太に利益が入るから。
嘉菜は資料に目を通しながら目が潤んできた。親戚として勇太と交渉しようとしたことが、ひとつずつ潰れていくことで悲しくなった。
ちなみにインターハイではスポーツ用品も扱う『マカド』も商品を提供していた。そこで勇太が歌ったけど、非公式だから問題なかった。
柔道新人戦では、正式な依頼で純子&風花が歌った。しかし規模が小さな大会だから間門が絡んでいなかった。
問題にならなかっただけで、ニアミスしていたと嘉菜は知った。
レベル2相当の相続権絡みなら、間門家から役所に書類を持って行けば坂元家に相続権が再発生しましたの通知がいく。
レベル5相当では役所への申請では解除できない。家庭裁判所で調停員を立てて、双方のOKが出なければならない。
今度は一方的ではない。間門側から解除申請をすると、勇太は被害者的な立ち位置を取れる。
勇太側に発言権も含めた強い権利が発生する。
申告がなければ単なる拒絶。だけど申告すれば、社会的に間門が加害者、勇太が被害者となる。
さらに勇太が男子。間門側から歩み寄る理由を知るため、厚生省の男子保護局から調査が入る。
当事者の父陽介と母親10人が、ひとりずつ保護局に呼ばれて解除の目的を聞かれる。
「解除のお願いは、お父さんやお母さん、会社に迷惑がかかりますね・・」
梓と自分が異母姉妹と知り、大きな希望を持ってしまった。だから悲しくなってきた。
けれどあきらめる。それが次期当主の役目だ。
ところで、勇太は制限のこと自体を把握していない。
パラレル勇太が葉子に通達の紙は渡された。しかし、目も通していないので記憶の中にない。
葉子に把握したかと聞かれ、パラレル勇太は何のことかも分からず「把握した」と答えた。だから葉子も今回、あえて説明し直していない。
パラレル勇太はダメすぎた。
けれど、そのダメさのお陰で勇太は葉子と間門の女の相互嫌悪なども知らない。
疎遠なのは、4年前のパラレル勇太だけが原因と思っている。
だから間門の家に悪い印象も持っていない。
さて、高いレベルで縁を切った側から復縁を望むのは難しい。裏があると見なされる。
勇太が、ただの男子高校生でも厳しい。
まして今や、歌で知名度と資産が作れる見込みがある。
プラス政界、経済界、芸術界に婚約者つながりで太いパイプを持つ伊集院君が大切な友人と公言している。
このタイミングの復縁要請は、世間では娘との交際や婚姻の障害を取り除くためだと思われない。
間門家が営利目的で、1度は見捨てた坂元家を取り込もうとしていると思われる。
この世界、家庭裁判所の調停となれば結果が誰でも閲覧可能になる。
歌で有名になった勇太を『マカド』が、1度は弾いたことが必ず漏れる。
服飾系の販売も行う間門家側からしたら、勇太への接触はイメージダウンのリスクが高い。
そもそも経営は順調で、申し訳ないが勇太の見込み資産などで左右されない。
嘉菜もそのことを考えた。自分の希望を叶えることは家のデメリットが大きい。
母彩奈は厳しいけれど理不尽ではない。柔軟性もある。
血筋のことばかり言う自分の本家の人間にも、特に最近は塩対応だ。
それに父陽介を愛しているのに、他の妻達が寂しくならないように色んなものを人に譲ってきた。
そんな母親を見てきたから嘉菜も頑張れる。
その母親が下した判断だから、本当に1年前の勇太は何か問題を抱えていたのだろう。
「ふふっ、納得しました。どうせ、ただの片思いです・・。私が今まで通りに過ごせばいいだけです・・なにもかも」
涙がぽろぽろ・・。
納得したんだろ、なぜ泣く。
勇太と間門家の確執。具体的に間門が課したものは、どんな制約なのか確認しようとしている。
間門家の会社は服飾関連の製造、販売が主な事業。勇太前世のユ●ク●のような展開もしている。
店舗もあり、スポーツウエアの『マカド』製品も若年層に人気がある。
嘉菜は聡明で、家を継ぐために法律も勉強している。家を継いでから見る予定だったファイルの中に坂元家に関するものを見つけた。
弁護士を立てて作った書類を確認した。
ショックだった。
制限レベルが10段階あるとして、レベル2相当の相互財産放棄くらいなら解除は簡単。葉子と梓は法的には、その程度の約束をしている。
間門家から勇太へ出した制限は、4年前はレベル2相当だった。しかし1年前にレベル5くらいに強めてある。
勇太が間門家の親戚だと、公的な名乗りの禁止。両者が絡む営利的な交渉の制限と厳しいものだった。
嘉菜が『マカド』の歌を勇太に依頼できない。そこに金銭が絡むから。
勇太が作詞作曲を担当する純子&風花も、間門関連のセレモニーなどで歌えない。勇太に利益が入るから。
嘉菜は資料に目を通しながら目が潤んできた。親戚として勇太と交渉しようとしたことが、ひとつずつ潰れていくことで悲しくなった。
ちなみにインターハイではスポーツ用品も扱う『マカド』も商品を提供していた。そこで勇太が歌ったけど、非公式だから問題なかった。
柔道新人戦では、正式な依頼で純子&風花が歌った。しかし規模が小さな大会だから間門が絡んでいなかった。
問題にならなかっただけで、ニアミスしていたと嘉菜は知った。
レベル2相当の相続権絡みなら、間門家から役所に書類を持って行けば坂元家に相続権が再発生しましたの通知がいく。
レベル5相当では役所への申請では解除できない。家庭裁判所で調停員を立てて、双方のOKが出なければならない。
今度は一方的ではない。間門側から解除申請をすると、勇太は被害者的な立ち位置を取れる。
勇太側に発言権も含めた強い権利が発生する。
申告がなければ単なる拒絶。だけど申告すれば、社会的に間門が加害者、勇太が被害者となる。
さらに勇太が男子。間門側から歩み寄る理由を知るため、厚生省の男子保護局から調査が入る。
当事者の父陽介と母親10人が、ひとりずつ保護局に呼ばれて解除の目的を聞かれる。
「解除のお願いは、お父さんやお母さん、会社に迷惑がかかりますね・・」
梓と自分が異母姉妹と知り、大きな希望を持ってしまった。だから悲しくなってきた。
けれどあきらめる。それが次期当主の役目だ。
ところで、勇太は制限のこと自体を把握していない。
パラレル勇太が葉子に通達の紙は渡された。しかし、目も通していないので記憶の中にない。
葉子に把握したかと聞かれ、パラレル勇太は何のことかも分からず「把握した」と答えた。だから葉子も今回、あえて説明し直していない。
パラレル勇太はダメすぎた。
けれど、そのダメさのお陰で勇太は葉子と間門の女の相互嫌悪なども知らない。
疎遠なのは、4年前のパラレル勇太だけが原因と思っている。
だから間門の家に悪い印象も持っていない。
さて、高いレベルで縁を切った側から復縁を望むのは難しい。裏があると見なされる。
勇太が、ただの男子高校生でも厳しい。
まして今や、歌で知名度と資産が作れる見込みがある。
プラス政界、経済界、芸術界に婚約者つながりで太いパイプを持つ伊集院君が大切な友人と公言している。
このタイミングの復縁要請は、世間では娘との交際や婚姻の障害を取り除くためだと思われない。
間門家が営利目的で、1度は見捨てた坂元家を取り込もうとしていると思われる。
この世界、家庭裁判所の調停となれば結果が誰でも閲覧可能になる。
歌で有名になった勇太を『マカド』が、1度は弾いたことが必ず漏れる。
服飾系の販売も行う間門家側からしたら、勇太への接触はイメージダウンのリスクが高い。
そもそも経営は順調で、申し訳ないが勇太の見込み資産などで左右されない。
嘉菜もそのことを考えた。自分の希望を叶えることは家のデメリットが大きい。
母彩奈は厳しいけれど理不尽ではない。柔軟性もある。
血筋のことばかり言う自分の本家の人間にも、特に最近は塩対応だ。
それに父陽介を愛しているのに、他の妻達が寂しくならないように色んなものを人に譲ってきた。
そんな母親を見てきたから嘉菜も頑張れる。
その母親が下した判断だから、本当に1年前の勇太は何か問題を抱えていたのだろう。
「ふふっ、納得しました。どうせ、ただの片思いです・・。私が今まで通りに過ごせばいいだけです・・なにもかも」
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納得したんだろ、なぜ泣く。
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