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155 パラレル武蔵は己を貫けず

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宮本武蔵を巡る逸話が、勇太の前世とパラレル世界では途中から変わってしまう。

まさに男女比1対12になってしまう疫病の影響を受けた。本人はぴんぴんしてたのに・・

本来の宮本伊織が亡くなり、その姉のギャル伊織を武蔵が養子にした。

年齢差は26。伊織の故郷の母と村長とは、弟子でなく嫁にもらう約束した。だけど純粋に剣の才能を感じて貰い受けた現在17歳。

手を出す気はない。

純粋に剣術を教える、唯一のよこしまな考えを起こさない女子として一緒に過ごしていた。

時として厳しくも接した5年間、娘のように大切にしてきた。


だけどギャル伊織は、そんな武蔵の二刀流にダメ出しした。

端的にいえば、「そんな剣術できるの、力有り余ってる師匠だけじゃん。女ばかりになった日本でできるやつなんか、おらんやん」と。

「じゃあ、俺は今後はどうすれば世に認められる・・」

ギャル伊織は短刀を出した。

「師匠、男子の戦闘職自体が当分は出てこないよ。思い切って女子用に組み替えよう」

「し、しかし後世の男子には・・」

「色んなとこで招かれて技を披露したけど、男子を怪我させちゃいかんと、師匠の相手は女子ばっかだったでしょ」
「ま、まあな」

「そんな世で、10歳から剣を持って殺し合いをしてきた師匠に師事する男子なんて現れないって」

「ぐぬぬぬぬ」

勇太前世の宮本武蔵なら拒否しただろう。しかしパラレル武蔵の周りで戦闘職といえば、すでに女子ばかり。

男子の腕力を基準にして武技を伝授しても、自分の極めしものが消え去るだろうと考えられた。

「師匠は男子向けの体系も残してよ。平行して、私の腕力でも使える二刀流を編み出そうよ」

「そうだな、非力な人間でも使える武技を作るのもアリかのう」
「そうっすよ。時代は変わってるんだよ、師匠」

「しかし、それしか、俺の剣を後世に残す方法はないのか・・」
「戦いの中に身を置きたいのは分かったけど、男子同士の1回の戦いにつきまとうモンが、前とは違うんよ」

「うぬぬぬぬ」
「うぬぬじゃない。3か月前も、剣で勝ってナニかに負けたでしょ。それも、こてんぱんに」

「ひえっ。思い出すから言うな」

前世武蔵のように戦いの中の100人斬りだけした男なら、意思は揺らがなかった。

だけどこの武蔵、刀で男子を100人斬ったが、刀以外でも100人斬りをした。いや、100人どころではない。

男女比が狂って、武蔵の人生のレールも少しずつ曲がっている。

「師匠に求められしは、鋼の剣じゃなくて、肉の剣」

「こりゃ、若い娘がそんなことを言うな」

ギャル伊織を弟子にもらう条件に、その村の女達に子種を搾り取られた。周辺の村の娘達まで来て裸の無手で100人斬りするはめになった2か月間。地獄だった。

伊織と修業の旅を続け5年間が経った。

3ヶ月前、久々に男子剣術家から戦いを挑まれた。アラフォーのハンサムだった。

武蔵が斬った。相手はやがて息絶えたが、武蔵の剣をほめ、やりきった顔で逝った。

斬った者と斬られた者。その間にある『剣を介して認め合うもの』
久々に爽快な気分だった。

しかし決闘直後、対戦相手の愛人8人に囲まれた。仇打ちかと思えば、手に縄を持っていた。
伊織は武蔵を手助けせず、女達の加勢に加わった。

そして捕まった。

女達に詰め寄られ賠償に子種を搾り取られた。

ふんどしをはぎとられ、4日後の朝に解放されたパラレル武蔵を見て、ギャル伊織は苦笑い。

「だから、挑戦受けるなっていったやん、師匠。今時、イケてる男子が1人減ることの大変さ、分かってないっしょ」

男の愛人を自称する女が8人増えて、16人を相手にさせられて太陽が黄色く見えた武蔵。その上、愛弟子に思い切りディスられた。

お陰で軽い女性恐怖症となり、ギャル伊織に強く出られると無意識のうちに引いてしまうのである。


パラレル武蔵は小太刀も研究していた。

パラレル佐々木小次郎が疫病で亡くなり、勇太の世界で1612年に行われた巌流島の戦いはなかった。

パラレル小次郎、1610年没。

ただし武蔵はパラレル小次郎と戦うことを想定して研究していた。出身地に諸説あった謎の達人。

長刀使いの達人であると同時に、小太刀を使って要人を守るロイヤルガード出身とも言われていた。

対抗策として練習した短刀術が生きた。

◆◆
1年後、わずかな期間でギャル伊織が小太刀二刀流をマスターした。

修業と新天地を求めての旅を続けながら剣の研究をしていた。

本州から西に向かい、九州も西から南にぐるりと回って熊本に行き着いたとき、転機が訪れた。

野盗に襲われている、金持ちが乗ってそうな籠を発見した。




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