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158 委員長・吉田真子の恋

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ルナだけでなく、梓、カオルの3人が、勇太と同じ2年3組の吉田真子委員長を認識した。

勇太の嫁候補として。
そして数学に全員が弱い勇太ファミリーの理系担当として。

勇太が気付くのは先になるけど、『失恋』の定義が前世とかなり違う。というか、前世の男女比1対1の失恋はドラマの中の想像の世界と化している。

真子が勇太に惚れ切ってしまったのは、つい最近。

前世なら、もう結婚を約束した相手がいる勇太を手に入れるには略奪しかない。

または秘めた想いを隠して、むっつりスケベらしく悶々とするしかない。


だけど、この世界では十分にチャンスあり。純子&麗子のことは公表されておらず、現在の勇太の嫁と婚約者3人。それなら、次が入る余地ありと見なされる。

あきらめなければゲームセットではない。


歴史の中で貞操観念が逆転した世界。女性の男性1人に対するシェアリング意識が強い。

この世界の、典型的な女子の思考をしているのがルナ。

男子では勇太に操をたてている。けれど女子となら何人でも関係を持つ気でいる。そして勇太の嫁を増やす気満々。

吉田真子も性欲強そうだから、絶倫勇太の相手に持ってこいだよね、くらいのイメージ。


だから、真子がアクションを起こすのを待っている。

男女比狂いの世界で、女子が男子を獲得するのは戦い。梓だって攻めた。

勇太からダイレクトにアプローチした、ルナとカオルの方がレアケースなのである。

ルナ、梓、カオルは吉田真子の人柄が勇太が話してくれる通りなら受け入れる気でいる。

ただし接触する前に、真子から先にアクションを起こすことが大切なのだ。

勇太と真子がある程度の接近をしてから、嫁3人が動き出す。

貞操観念は女性が捕食者側。

手をこまねいている女に、ルナ達も協力しない。普通は雌ライオンか女豹しか男子をゲットできないのだ。


10月23日の水曜日、勇太が2年3組に入った。

「みんな、おはよ~」

「おはよ、勇太君」
「おはよう」

「おはよう勇太君、今日も元気だね」

今日は水曜日だから伊集院君も出席している。そして吉田真子やクラスメイトと話している。

「お、おはよう勇太君」

「おはよ、委員長」

真子の気持ちは、みんなにバレバレ。なんだか、クラスメイトは伊集院君も含めて応援ムードに入っている。

「・・・いい天気だね」
「そうだね」

真子が勇太に惚れているのは、文化祭の打ち上げのときから伊集院君も承知している。

だから今日も「吉田さん、僕と勇太君ならどっちがいい?」と、勇太に吉田真子を意識させようと励んでいる。

これ、真子を応援したいクラスメイトに伊集院君が相談されて、やっている。

ただ伊集院君、友情のために純粋に自分が一肌脱いだ気でいるけれど、別クラスの女子をざわつかせている。

アシストにしては、カロリーが高すぎる。

ちなみにクラスメイトは、今までの経緯もあって真子以外は伊集院君狙い。

なので真子が勇太の嫁のひとりになることを応援している。


ただ・・

「ゆ、勇太君、今日の放課後はなにするの?」
「柔道部とカフェの手伝いだよ~。委員長は?」

「あ、あの・・文芸部と勉強かな」
「そう、なんか書いたら読ませてね~」

「あ、う、うん」

真子の肉食女子にしては珍しい弱パンチなアプローチ。

そして基本的には、鈍い勇太。

5月にエロカワ変身した勇太はルナ、梓、カオル、純子、伊集院君と簡単に分かり合えた。

罅が入っていたはずのルナと純子の関係さえ改善させた。

自分の義母・葉子のカフェ、純子の彼女である麗子の家業のパン屋も立て直した。

さらに作った歌の歌詞も、多角的な心情を洗練された言葉で綴っている。

なので勇太は人の気持ちを読む達人と思われている。

勘違いなのだ。

ルナはじめ、現在の親密なメンバーとの瞬間接着剤になったのは、前世の経験。

歌なんてもっとひどくて、前世の名曲をパクっただけだ。


「勇太君、クッキー焼いてきたら食べてくれる?」

「俺も焼いてくるから、食べ比べしようよ~」

この誰が見ても、色恋沙汰に発展しなさそうな勇太と真子の会話。

クラスメイトは、この鈍感さが本物の勇太だなんて思いもせず、不思議で仕方ない。

また、クラスメイトは真子にアドバイスした。
『勇太君は嫁を何人まで増やすの?』
『勇太君は、どんな体位が好き?』
『勇太君が好きな下着はどんなの?』
などなど。

気がある相手への無難な質問を教えたが、それすら真子が言えない。


吉田真子と勇太は、前世の高1でもクラスメイトだった。

だけど、勇太が6月に難病になり、親密になる前に学校をやめてしまった。

素の恋愛下手な勇太を相手にするパラレル真子。

クラスメイトは当分の間、じれじれアプローチを見せられることになる。



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