上 下
140 / 256

140 文化祭2日目は海軍下士官

しおりを挟む
文化祭初日が終わって帰宅した勇太だが、やっぱり暇ではない。2日目の仕込みがある。

柔道部、バドミントン部合同の海軍カフェ『蜃気楼』で飲み物と茶菓子を出したのだけど、茶菓子が足りなかった。

ぶっちゃけ、勇太の手作りクッキーが売れまくった。

現在は夜の12時。

疲れて10時に寝たのに女神印の回復力により2時間睡眠で全快。これから、クッキーを焼きまくる。

クッキーを誰が焼いたかなんて分からない。ごまかしてもバレないけど、勇太は律儀なのだ。

ゴブリンパンの勇太くん、という不本意な異名も取る勇太は、ゴブリンクッキーもリクエストされた。

そして、パラレル工業高校の女子がわざわざ金型を作って海軍カフェでプレゼントしてくれた。

早速作るはめになった。

まずは寝る前にシャカシャカと作った生地を焼いた。プレーン、ゆず味、チョコの3種類。

海軍カフェの『三等兵のクッキーセット』ではクッキー3枚とドリンクのセットで200円なり。

家には勇太専用のオーブンレンジも買った。

焼きながら次の生地作り。ひたすらにシャカシャカと焼き作業を繰り返して、300セットの出来上がり。

夜明け前に味噌汁を作って、梓の起床を待った。

「おはよ~、ユウ兄ちゃん」
「梓、おはよ~」

「わ、台所が甘い匂い。ありがとー」

「味噌汁も出来てるぞ」
「嬉しいー」

梓がベーコンエッグを作って、2人で簡単な朝食を取った。

勇太の味噌汁をネットに上げて自慢したいところだけど、先週やってクラスメイトはじめパラ高1年生を刺激してしまった。

今回は自重する梓だ。

◆◆

何だかんだとパラ高文化祭の2日目スタート。

海軍カフェの最初のお客さんには、勇太下士官が対応した。

前を向いて笑顔もなく、真剣な顔と口調。

「ようこそ上官どの、戦艦蜃気楼へ」

いきなりお客さんの顔が赤い。前日の光景をネットで見て、3つ隣の街から来た女の子3人組だ。

前の日に伊集院君の劇も終わり、勇太のところへ女の子が流れてきた。

今日は午後2時から、体育館で3年男子2人を含む7人バンドの演奏がある。

それが目玉だけど、前日の伊集院君が出たシンデレラほど期待されていない。

勇太も梓を通じて軽音楽部の女子に出演を打診された。そちらは丁重にお断りした。

実は、こっちの世界の歌がまともに歌えない。

気に入って聞いている曲はある。しかし最初から最後まで通して覚えてる曲がない。

勇太の前世の歌がこちらの世界で斬新なのと同様に、勇太からしても今世の歌に馴染んだものがない。

最近では風花&純子のために、前世の名曲を思い出す作業に時間を割いている。

それをふと思い出して人前で口ずさむことがある。だから作詞作曲の才能が飛び抜けていると勘違いされている。

それが前世名曲のパクりなんて誰も思わないから、打診してきた女の子は勇太が歌に精通していると思い込んでいる。

打診されたのは2週間前。そこから今世の歌を練習して形になるほど、転生勇太はハイスペックでもない。

軽音楽部には直接行って謝っておいた。


2日目の海軍カフェは全員が接客に慣れてきた。この世界で珍しい詰め襟学生服を着回し、みんなが男装の麗人風になると女の子の受けが良かった。

ルナも吹き出さず、演技ができるようになった。

本物の男性・勇太と一緒の写真をリクエストする子が一番多いが、次に梓へのリクエストが増えていった。

身長160センチで男性と見るなら小柄だけど、美形女子の男装には破壊力がある。

「ふわぁ~、エロカワ勇太君の1人目のお嫁さんだよね。なんか高1とは思えない雰囲気持ってる」
「すごくカッコいいよね」
「やっぱり、勇太君に抱かれているうちに・・」
「勇太君と梓ちゃんのBLプレイが見たい・・」

言われてみれば梓には色気がある。女性経験が二桁というのは伊達じゃない。

ルナも勇太とそういう関係になり色気が出てきた。カフェの男装姿で梓の次に人気がある。

ここにいないが、カオルは不思議がられている。

勇太、ルナ、梓と一緒に3月3日の4人婚が決まっている。

それなのに色気ゼロ。

カオルの入籍日予定日は知られているけど、梓の希望により入籍日まで処女を守ることは公開していない。

だからカオルがバリバリの処女だと知る人は少ない。

世間的には夜のカオルは、勇太を裸で押さえ込んだり、梓とルナに押さえ込まれたりしていると思われている。


海軍カフェの客足が途絶えず、勇太が休憩が取れないまま午後2時になった。

ほぼリーフカフェで働いているときと同じ状況だ。

残り1時間。逆算して、あと30人で打ち切らせてもらうことにした。

勇太の手作りクッキーも30セットを残して、販売希望の人に売ってしまった。

勇太の転生後初となる文化祭は、日常と同じく忙しく時間が過ぎた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【旧作改訂】イレギュラー召喚で神器をもらえませんでした。だけど、勝手に付いてきたスキルがまずまず強力です

とみっしぇる
ファンタジー
途中で止まった作品のリメイクです。 底辺冒険者サーシャは、薬草採取中に『神器』を持つ日本人と共に危険な国に召喚される。 サーシャには神器が見当たらない。増えていたのは用途不明なスキルがひとつだけ。絶体絶命のピンチを切り抜けて、生き延びられるのか。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...