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138 脇役・伊集院の独壇場

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パラ高文化祭の初日。

伊集院が、脇役なのに出ずっぱりの劇・シンデレラが続いている。

今のシーン。王子様の最初の王妃を決めるため、舞踏会を開くとお触れが出る。

ちなみに原作の大人版でも王子様は最終的に20人の嫁をもらう予定だ。勇太には違和感だけど、よりリアリティーを出すための設定だ。

やっぱり異世界だ。舞台袖でカボチャの馬車をスタンバっている勇太は感心した。

伊集院君は2番目の役にチェンジ。シンデレラの意地悪な異母姉妹の妹・ドリゼラだ。

『灰かぶりのエラ』ことシンデレラも2人目と交代。台本にはシンデレラ2とある。

伊集院ドリゼラ。「アナスタシアお姉様、お母様にお願いして。さっそくドレスを作ってもらいましょう」

「そうね、10人の異母姉妹はもちろん、国中の女どもに負けていられないわ」

「あ、あの私の服は・・」

「あら、エラったら自分も舞踏会に行く気なのね。ふふふ、どうしましょうドリゼラ」

「私のお下がりをあげるわ」
伊集院ドリゼラが、ぼろぼろの服をシンデレラ2の首に巻き付けた。

「あなたには、これがお似合いよ。おほほほほほ」

伊集院ドリゼラにぼろ布で首を絞められたまま、顔を引き寄せられるシンデレラ2。

いやいやシンデレラ2よ、うっとりしていないで悔しそうな顔しろよ。


舞台は変わって、みんなが出かけた家に残されたシンデレラ3。

シンデレラ3が泣いていると183センチの長身美魔女が現れた。ドレッドヘアに見える紫髪の魔法使い伊集院君だ。

「さあエラ、泣き止んで」

魔法使い伊集院君に腰を引き寄せられたシンデレラ3、お互いの顔が至近距離にある。

「あなたは誰ですか?」
「私は、西の森に住んでる魔法使い。そろそろ婿が欲しくて、街に出てきたの」

シンデレラ3の頬を指でぬぐう魔法使い伊集院君。

シンデレラ3は2番人気の役だ。伊集院君との密着時間が長い。

きゃー、きゃーと歓声を上げてしまった観客がいたりする。

シンデレラ3の腰を抱いたまま、魔法使いが棒を振った。
「さあ、私が魔法をかけてあげる」

舞台袖に下がったシンデレラ3に代わってドレスアップしたシンデレラ4が登場。

同時に馬扮装の勇太が引っ張ってカボチャの馬車も出てきた。

貴重な男子の使いどころが・・とクラスメイト、勇太に気づいた観客から漏れている。

魔法使い伊集院君のエスコートでカボチャの馬車に一緒に乗って、お城に向かうシンデレラ4。

馬車を「ぐぬぬ・・」と引き摺って、舞台をゆっくり5往復する勇太。


とうとうクライマックスの舞踏会シーンである。

シンデレラの義母、異母姉妹に伊集院王子様が言い寄られているシーンから始まる。

タキシード姿の伊集院君は、普通に王子様である。

ここだけ自前で服を用意したが、光沢の放ち方が尋常でではない。みんな怖くて、お値段が聞けない。

伊集院王子がシンデレラ5を見つけ、ファーストダンスを申し込んだ。

そして音楽が始まり2人で優雅に踊り出した。

シンデレラ5のドレスはブルーで、やはり光沢が強烈。これも伊集院君が家から持ってきてくれたものだ。

「うわあ、素敵」
「伊集院君、すごい。本当の貴族みたい」
「あの子、うらやましい!」

長~いダンスシーンが終わった。

一瞬の静寂のあと、ものすごい拍手が鳴り出した。まだ終盤にさしかかったところなのに拍手が終わらない。

5分くらい劇が中断してしまった。

そしてシンデレラ5が12時の鐘とともに退場。


伊集院君は王子の命令でガラスの靴を持ってシンデレラを探しに来る女の役人に変身。これで5役目。

ガラスの靴をはけず、悔しがるシンデレラの異母姉妹の姉アナスタシアで6役目。

シンデレラ6がガラスの靴をはいて、そのシンデレラ6に再びドレスアップの魔法をかける魔法使いで7役目。

最後にシンデレラ7と大団円を迎える王子様で8役目。

魔法使いと王子様が2回ずつだけど、8つの変化をこなした伊集院君だ。

大歓声とともに幕が閉じた。


舞台裏では、伊集院君が満面の笑顔だった。まだ拍手が鳴り響いたままだ。

「いやあ、本当に楽しかった。みんな、ありがとう」

伊集院君は婚約者の絡みでテレビCMにも出ているが、ただ台本を読んだだけだと言った。

このシンデレラ、パラレルなシャルル・ペローの2つある原作とも少し違う流れになった。

だけどみんなで考えて自分達で作り上げた劇。伊集院君にとっては、すごい充実感だったそうだ。


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