上 下
243 / 300

243 シャッフル◇嘉菜&梓◇

しおりを挟む
◇異母姉妹の嘉菜と梓◇

ふたりは神社の裏の方を歩いている。

ふたりで歩くのは初めて。

「嘉菜さん、そういえば私達って姉妹でしたね」
「そうですよ。挨拶して数ヵ月だけど」

「じゃあ、そんなにかしこまらないで下さい。呼び方も呼び捨てがいいです」

嘉菜は考え込んだ。すごく真面目だ。

「私達の結び付きは姉妹というより、勇太さんの嫁ズですよ。だから、大変な最初の妻を買って出てくれた梓ちゃんに敬意を払わないと」

「だけど、実際に陽介父さんを介して、血が繋がってますもん」

「私の個人意見です。梓ちゃんとの結びつきは、嫁同士の方が嬉しいんです」
 
嘘偽りない嘉菜の本心だ。

「うわ、お姉ちゃん頑固だ。カッチカチ」
「これでも『マカド』の跡継ぎですからね」

ふたりして、少し笑った。

「そもそも私達って、姉妹っぽい過ごし方皆無でしたね」

「そうですね。勇太さんが捨て身で助けてくれなければ、家の都合で絶縁してたかもだし」
「ユウ兄ちゃんの捨て身か・・うらやましい」

「ええ? うらやましいのは私の方ですよ。勇太さんと普通にキスしているし、梓ちゃん」

「けどね・・」

梓は自分が運命の女性達に割り込んでいるのではないかと気がかりだ。

自分以外はみんな勇太の嫁ズに加わるときドラマチックな出来事があった。

勇太の嫁ズはルナの冤罪晴らしに始まり、目立つところで嫁ズと転機を迎えた。

嘉菜の時だって、勇太は裁判所で勝てる調停で負けを選んだ。そして半分前科を付けたような形で嘉菜への愛を示した。

自分も愛されているとは思うけど、麗子のように告白をされた訳でもない。純子のように歌ってシンクロした訳でもない。

※ちなみに麗子に告白したのはパラレル勇太。

梓はカオルとルナに、間違いなく勇太に愛されていると言われた。だから最初の嫁だと言われたけど、気持ちが揺らぐことがある。

「ふふふ、逆ですよ、梓ちゃん」
「え・・逆って」

「私、梓ちゃんの不安のことをちらりと耳にして、みんなに話を聞きました」

すると嘉菜は、自分達も含め少ないタイミングで勇太と会えたことが分かった。

「どういう・・」
「私と真子ちゃんは図書館前で会わなければ、お互いにひとりで自信がないままでした。こんなにうまくいってないです」

ルナにしてもしかりで、階段から落ちる勇太と遭遇しなければ何もなかった。

カオルもルナを試合で失神させなかったら、特筆する出会いになっていない。

純子&麗子など、お腹を減らした勇太が偶然にパン屋に入ったから逢えた。

「私達は、何かがずれていれば勇太さんと接点がなかったかもしれない。けれど梓ちゃんだけは違います」

勇太が心を入れ替えたとき、最初に梓の生活を整えるためのお金を母の葉子に渡した。

梓がバイトで大事な最初の約束をドタキャンした。すると勇太は次の日に延期してくれた。

バイトも手伝ってくれた。

7月末に籍を入れた日、3月にカオルと一緒に処女喪失をしたいと言ったら快諾してくれた。

「他にも色々とありますよね、梓ちゃん」
「ありますね・・」

「私だったら、ドタキャン1回で殿方に捨てられる自信があります」

「言われてみれば、普通はそうかもです・・」

「この男女比1対12の世界で、そんな都合を受け入れられてるでしょ」

真子&嘉菜は、少しのボタンの掛け違いがあったなら、勇太との縁は途切れていたと感じている。

逆に梓は、2番目以下の嫁ズが入れ替わっていたとしても1番目は間違いなかった。嘉菜はそう言う。

「それにね、勇太さんがエロカワ変身したのは、梓ちゃんの仕事を手伝ったことがきっかけでしょう」

「あ・・」

「自信を持ちましょうよ。私も真子ちゃんも、別格の梓ちゃんが羨ましいんですから」


梓は、このテーマで初めてすっきりしている。

嘉菜に言われた『別格』の二文字が心に響いた。

「ありがとう嘉菜さん、なんか元気出た」

「どういたしまして。少しだけ借りを返せましたかね」


嘉菜は思い出す。

勇太の6人目の嫁ズになれた日も、パラ高でお膳立てを整えていてくれたのは梓。

勇太ファミリーがスムーズなのは勇太の人格が大きい。だけど色んな調整は梓がやってくれる。

勇太&真子の誕生日の放課後デート、クリスマスの勇太&カオルも梓が誘導した。

梓自身は自分が得することもないのに、率先してやってくれる。

自分の1月5日の勇太とのデートも、梓が調整してくれた。

嘉菜は右手を差し出した。

「さ、私の頼りになる妹様、そろそろみんなの待ち合わせ時間ですよ」
「うん、お姉ちゃん」


人混みの中でみんなと合流するために、ふたりはしっかり手を繋いだ。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る

イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。 《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。 彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。 だが、彼が次に目覚めた時。 そこは十三歳の自分だった。 処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。 これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。

処理中です...