111 / 256
111 父だと思ったら姉のようなもんだった
しおりを挟む
そのあとも、勇太達は公園で何曲も歌った。
その場面はネットにも流れた。
純子と風花、女性2人だけのものもあったけど、勇太が加わらなくても、とんでもない反響があった。
レコード会社の人も、風花と純子のユニットで売れると踏んだ。
勇太がギャラリーの人に聞かれ、風花と純子に曲を提供すると言った。そしたら、レコード会社に問い合わせが殺到しているそうだ。
それから1週間の勇太は、とにかく忙しかった。
基本は学校のあとは風花、純子と曲作り。夜は、思い出した前世歌の題名をメモしたり、録音したりで過ごした。
ルナや梓とは学校の休み時間や昼休みだけ一緒だった。カオルには早朝のランニングで会った程度だ。
曲作りといっても、勇太は前世のパクリ歌を思い出して口ずさむだけ。あとは歌担当の純子、ギター担当の風花が曲の形を作る。
そこから先の大変な作業は、風花、純子、そしてプロの方々がやってくれる。
1週間が過ぎて、勇太だけは一段落ついた。
勇太は、再びランニング、パンのウスヤ、パラ高、柔道部、リーフカフェの1日22時間モードに戻った。
勇太は、これで作詞作曲を名乗っていいのかと思ったが、1番大事なゼロから曲を生み出す部分を担っているから勇太の曲だそうだ。
なので、出来上がった作品はメインの作詞作曲が勇太。編曲とギターが風花、歌が純子となる。
著作権は勇太にある。だけど風花、純子と作ったCDでは利益を3等分にすることにした。
出会って1週間の風花は驚いていたが、勇太の中では納得できている。
純子はこのやり取りを見て、風花も勇太の『特別』だと改めて思った。
◆◆
9月12日、木曜日。
勇太は放課後に柔道部に顔を出し、ルナと一緒にパラレル総合芸術大学に向かった。
曲のアレンジで風花と話すことがあって待ち合わせ。婚約者と嫁の誰かを連れてきて欲しいと言われて、まずルナにした。
例によって学食に入った。
「風花さん、お待たせしました」
「おっす勇太。彼女が愛しのルナさんだね。初めまして周防風花だよ」
風花の言葉のチョイスは、前世の父に微妙に似ている。それに風花も勇太と呼ぶようになって、気安い関係になってきている。
「花木ルナです。よろしくお願いします」
「ね、ルナ。風花さんって梓によく似てるだろ」
「だね。胸は風花さんが圧倒的だけど、顔はそっくり」
「あっはっは。おっぱいもむかい?」
風花はルナにも気楽に話しかけている。
今日はルナをイメージした歌についての話。風花が本物のルナに会って曲のアレンジを考えている。
20分ほど意見を出し合っていると、風花の友人から勇太が四つ折りの紙を渡された。
「勇太くーん、私の出生番号」
「私のも。あとで確認してね」
前世のマイナンバーカードに当たるものの個人番号15桁から抜粋した、父親の特定番号だ。
勇太は『F321A19P』。ルナは『R2367U7N』
8月に中学生のメイちゃんから勇太が、この番号を渡された。
そしてメイちゃんと勇太が腹違いの兄妹と知ってしまった。ともに人工授精で産まれてるから父親は誰か分からないが、結婚は許されない。
大半の男子は、この紙をもらうことを拒絶する。「あなたと結婚できますか」の意味がこもっている。
受け取り方次第では、すごく重いものだ。
勇太が軽い気持ちでメイちゃんから受け取って以降、よく渡されるようになった。
このへんでも、勇太は希少男子なのだ。
「おっ、勇太はモテモテだね。またもらったね」
「みんな遊び感覚ですよねー」
「風花さんも、やりましたか?」ルナが聞いてみた。
「いや。私は中学、高校と荒れてた時期もあったから、やってない。ほら、まだヤンキーだった片鱗あるだろ」
そう。父親の特定番号を教え合う遊びはあるが、不良やヤンキーは無縁。そりゃ、怖い人間と異母姉妹だと分かった方が嫌だ。
この世界の、ひとつの常識だ。
「大学生になると、実際に結婚するやつも増えてくるから、ガチのときしか教え合わないしね」
「ふーん。じゃあ、風花さんの番号、教えて下さいよ」
「あれ、勇太君は私と結婚したいのかな」
見ていた女子達がざわっとした。
「あはは。それこそ遊びですよ」
「ちっ、残念。ははは」
ここ数日、勇太は風花とこんなノリで話す。ルナやカオルとも違う気楽さがあるのだ。
「じゃあ人生初の申告だな」
風花は勇太とルナに顔を寄せて、小さい声で呟いた。
「私の精子提供者の番号は『QP36591G』だよ」
「・・あ、俺のと違いますね~」
「私とも違うな」
勇太とルナは笑った。だけど、心の中は大きく揺れていた。
それから1時間して風花と別れた。
◆
大学の門を出て、勇太とルナは顔を見合わせた。
「勇太、あの風花さんの番号」
「『QP36591G』って言ったよな」
「間違いない、私もそう聞こえた」
2人が共通して覚えている番号が2つだけある。それは家族になる人間の番号だから。
風花の精子提供者の番号は、勇太の従妹で嫁、梓の番号と一致した。
「梓だよね・・」
「うん。顔も似てるし、間違いない」
前世では親子だった2人。今世のパラレル父・風花とパラレル梓は異母姉妹だった。
勇太は嬉しくなった。
前世の父親と同じく、子供時代に家族に恵まれなかった時期があるパラレル父・風花Dカップ。
今度は、腹違いでも姉妹が分かる場所にいる。
その場面はネットにも流れた。
純子と風花、女性2人だけのものもあったけど、勇太が加わらなくても、とんでもない反響があった。
レコード会社の人も、風花と純子のユニットで売れると踏んだ。
勇太がギャラリーの人に聞かれ、風花と純子に曲を提供すると言った。そしたら、レコード会社に問い合わせが殺到しているそうだ。
それから1週間の勇太は、とにかく忙しかった。
基本は学校のあとは風花、純子と曲作り。夜は、思い出した前世歌の題名をメモしたり、録音したりで過ごした。
ルナや梓とは学校の休み時間や昼休みだけ一緒だった。カオルには早朝のランニングで会った程度だ。
曲作りといっても、勇太は前世のパクリ歌を思い出して口ずさむだけ。あとは歌担当の純子、ギター担当の風花が曲の形を作る。
そこから先の大変な作業は、風花、純子、そしてプロの方々がやってくれる。
1週間が過ぎて、勇太だけは一段落ついた。
勇太は、再びランニング、パンのウスヤ、パラ高、柔道部、リーフカフェの1日22時間モードに戻った。
勇太は、これで作詞作曲を名乗っていいのかと思ったが、1番大事なゼロから曲を生み出す部分を担っているから勇太の曲だそうだ。
なので、出来上がった作品はメインの作詞作曲が勇太。編曲とギターが風花、歌が純子となる。
著作権は勇太にある。だけど風花、純子と作ったCDでは利益を3等分にすることにした。
出会って1週間の風花は驚いていたが、勇太の中では納得できている。
純子はこのやり取りを見て、風花も勇太の『特別』だと改めて思った。
◆◆
9月12日、木曜日。
勇太は放課後に柔道部に顔を出し、ルナと一緒にパラレル総合芸術大学に向かった。
曲のアレンジで風花と話すことがあって待ち合わせ。婚約者と嫁の誰かを連れてきて欲しいと言われて、まずルナにした。
例によって学食に入った。
「風花さん、お待たせしました」
「おっす勇太。彼女が愛しのルナさんだね。初めまして周防風花だよ」
風花の言葉のチョイスは、前世の父に微妙に似ている。それに風花も勇太と呼ぶようになって、気安い関係になってきている。
「花木ルナです。よろしくお願いします」
「ね、ルナ。風花さんって梓によく似てるだろ」
「だね。胸は風花さんが圧倒的だけど、顔はそっくり」
「あっはっは。おっぱいもむかい?」
風花はルナにも気楽に話しかけている。
今日はルナをイメージした歌についての話。風花が本物のルナに会って曲のアレンジを考えている。
20分ほど意見を出し合っていると、風花の友人から勇太が四つ折りの紙を渡された。
「勇太くーん、私の出生番号」
「私のも。あとで確認してね」
前世のマイナンバーカードに当たるものの個人番号15桁から抜粋した、父親の特定番号だ。
勇太は『F321A19P』。ルナは『R2367U7N』
8月に中学生のメイちゃんから勇太が、この番号を渡された。
そしてメイちゃんと勇太が腹違いの兄妹と知ってしまった。ともに人工授精で産まれてるから父親は誰か分からないが、結婚は許されない。
大半の男子は、この紙をもらうことを拒絶する。「あなたと結婚できますか」の意味がこもっている。
受け取り方次第では、すごく重いものだ。
勇太が軽い気持ちでメイちゃんから受け取って以降、よく渡されるようになった。
このへんでも、勇太は希少男子なのだ。
「おっ、勇太はモテモテだね。またもらったね」
「みんな遊び感覚ですよねー」
「風花さんも、やりましたか?」ルナが聞いてみた。
「いや。私は中学、高校と荒れてた時期もあったから、やってない。ほら、まだヤンキーだった片鱗あるだろ」
そう。父親の特定番号を教え合う遊びはあるが、不良やヤンキーは無縁。そりゃ、怖い人間と異母姉妹だと分かった方が嫌だ。
この世界の、ひとつの常識だ。
「大学生になると、実際に結婚するやつも増えてくるから、ガチのときしか教え合わないしね」
「ふーん。じゃあ、風花さんの番号、教えて下さいよ」
「あれ、勇太君は私と結婚したいのかな」
見ていた女子達がざわっとした。
「あはは。それこそ遊びですよ」
「ちっ、残念。ははは」
ここ数日、勇太は風花とこんなノリで話す。ルナやカオルとも違う気楽さがあるのだ。
「じゃあ人生初の申告だな」
風花は勇太とルナに顔を寄せて、小さい声で呟いた。
「私の精子提供者の番号は『QP36591G』だよ」
「・・あ、俺のと違いますね~」
「私とも違うな」
勇太とルナは笑った。だけど、心の中は大きく揺れていた。
それから1時間して風花と別れた。
◆
大学の門を出て、勇太とルナは顔を見合わせた。
「勇太、あの風花さんの番号」
「『QP36591G』って言ったよな」
「間違いない、私もそう聞こえた」
2人が共通して覚えている番号が2つだけある。それは家族になる人間の番号だから。
風花の精子提供者の番号は、勇太の従妹で嫁、梓の番号と一致した。
「梓だよね・・」
「うん。顔も似てるし、間違いない」
前世では親子だった2人。今世のパラレル父・風花とパラレル梓は異母姉妹だった。
勇太は嬉しくなった。
前世の父親と同じく、子供時代に家族に恵まれなかった時期があるパラレル父・風花Dカップ。
今度は、腹違いでも姉妹が分かる場所にいる。
41
お気に入りに追加
252
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる