111 / 300
111 父だと思ったら姉のようなもんだった
しおりを挟む
そのあとも、勇太達は公園で何曲も歌った。
その場面はネットにも流れた。
純子と風花、女性2人だけのものもあったけど、勇太が加わらなくても、とんでもない反響があった。
レコード会社の人も、風花と純子のユニットで売れると踏んだ。
勇太がギャラリーの人に聞かれ、風花と純子に曲を提供すると言った。そしたら、レコード会社に問い合わせが殺到しているそうだ。
それから1週間の勇太は、とにかく忙しかった。
基本は学校のあとは風花、純子と曲作り。夜は、思い出した前世歌の題名をメモしたり、録音したりで過ごした。
ルナや梓とは学校の休み時間や昼休みだけ一緒だった。カオルには早朝のランニングで会った程度だ。
曲作りといっても、勇太は前世のパクリ歌を思い出して口ずさむだけ。あとは歌担当の純子、ギター担当の風花が曲の形を作る。
そこから先の大変な作業は、風花、純子、そしてプロの方々がやってくれる。
1週間が過ぎて、勇太だけは一段落ついた。
勇太は、再びランニング、パンのウスヤ、パラ高、柔道部、リーフカフェの1日22時間モードに戻った。
勇太は、これで作詞作曲を名乗っていいのかと思ったが、1番大事なゼロから曲を生み出す部分を担っているから勇太の曲だそうだ。
なので、出来上がった作品はメインの作詞作曲が勇太。編曲とギターが風花、歌が純子となる。
著作権は勇太にある。だけど風花、純子と作ったCDでは利益を3等分にすることにした。
出会って1週間の風花は驚いていたが、勇太の中では納得できている。
純子はこのやり取りを見て、風花も勇太の『特別』だと改めて思った。
◆◆
9月12日、木曜日。
勇太は放課後に柔道部に顔を出し、ルナと一緒にパラレル総合芸術大学に向かった。
曲のアレンジで風花と話すことがあって待ち合わせ。婚約者と嫁の誰かを連れてきて欲しいと言われて、まずルナにした。
例によって学食に入った。
「風花さん、お待たせしました」
「おっす勇太。彼女が愛しのルナさんだね。初めまして周防風花だよ」
風花の言葉のチョイスは、前世の父に微妙に似ている。それに風花も勇太と呼ぶようになって、気安い関係になってきている。
「花木ルナです。よろしくお願いします」
「ね、ルナ。風花さんって梓によく似てるだろ」
「だね。胸は風花さんが圧倒的だけど、顔はそっくり」
「あっはっは。おっぱいもむかい?」
風花はルナにも気楽に話しかけている。
今日はルナをイメージした歌についての話。風花が本物のルナに会って曲のアレンジを考えている。
20分ほど意見を出し合っていると、風花の友人から勇太が四つ折りの紙を渡された。
「勇太くーん、私の出生番号」
「私のも。あとで確認してね」
前世のマイナンバーカードに当たるものの個人番号15桁から抜粋した、父親の特定番号だ。
勇太は『F321A19P』。ルナは『R2367U7N』
8月に中学生のメイちゃんから勇太が、この番号を渡された。
そしてメイちゃんと勇太が腹違いの兄妹と知ってしまった。ともに人工授精で産まれてるから父親は誰か分からないが、結婚は許されない。
大半の男子は、この紙をもらうことを拒絶する。「あなたと結婚できますか」の意味がこもっている。
受け取り方次第では、すごく重いものだ。
勇太が軽い気持ちでメイちゃんから受け取って以降、よく渡されるようになった。
このへんでも、勇太は希少男子なのだ。
「おっ、勇太はモテモテだね。またもらったね」
「みんな遊び感覚ですよねー」
「風花さんも、やりましたか?」ルナが聞いてみた。
「いや。私は中学、高校と荒れてた時期もあったから、やってない。ほら、まだヤンキーだった片鱗あるだろ」
そう。父親の特定番号を教え合う遊びはあるが、不良やヤンキーは無縁。そりゃ、怖い人間と異母姉妹だと分かった方が嫌だ。
この世界の、ひとつの常識だ。
「大学生になると、実際に結婚するやつも増えてくるから、ガチのときしか教え合わないしね」
「ふーん。じゃあ、風花さんの番号、教えて下さいよ」
「あれ、勇太君は私と結婚したいのかな」
見ていた女子達がざわっとした。
「あはは。それこそ遊びですよ」
「ちっ、残念。ははは」
ここ数日、勇太は風花とこんなノリで話す。ルナやカオルとも違う気楽さがあるのだ。
「じゃあ人生初の申告だな」
風花は勇太とルナに顔を寄せて、小さい声で呟いた。
「私の精子提供者の番号は『QP36591G』だよ」
「・・あ、俺のと違いますね~」
「私とも違うな」
勇太とルナは笑った。だけど、心の中は大きく揺れていた。
それから1時間して風花と別れた。
◆
大学の門を出て、勇太とルナは顔を見合わせた。
「勇太、あの風花さんの番号」
「『QP36591G』って言ったよな」
「間違いない、私もそう聞こえた」
2人が共通して覚えている番号が2つだけある。それは家族になる人間の番号だから。
風花の精子提供者の番号は、勇太の従妹で嫁、梓の番号と一致した。
「梓だよね・・」
「うん。顔も似てるし、間違いない」
前世では親子だった2人。今世のパラレル父・風花とパラレル梓は異母姉妹だった。
勇太は嬉しくなった。
前世の父親と同じく、子供時代に家族に恵まれなかった時期があるパラレル父・風花Dカップ。
今度は、腹違いでも姉妹が分かる場所にいる。
その場面はネットにも流れた。
純子と風花、女性2人だけのものもあったけど、勇太が加わらなくても、とんでもない反響があった。
レコード会社の人も、風花と純子のユニットで売れると踏んだ。
勇太がギャラリーの人に聞かれ、風花と純子に曲を提供すると言った。そしたら、レコード会社に問い合わせが殺到しているそうだ。
それから1週間の勇太は、とにかく忙しかった。
基本は学校のあとは風花、純子と曲作り。夜は、思い出した前世歌の題名をメモしたり、録音したりで過ごした。
ルナや梓とは学校の休み時間や昼休みだけ一緒だった。カオルには早朝のランニングで会った程度だ。
曲作りといっても、勇太は前世のパクリ歌を思い出して口ずさむだけ。あとは歌担当の純子、ギター担当の風花が曲の形を作る。
そこから先の大変な作業は、風花、純子、そしてプロの方々がやってくれる。
1週間が過ぎて、勇太だけは一段落ついた。
勇太は、再びランニング、パンのウスヤ、パラ高、柔道部、リーフカフェの1日22時間モードに戻った。
勇太は、これで作詞作曲を名乗っていいのかと思ったが、1番大事なゼロから曲を生み出す部分を担っているから勇太の曲だそうだ。
なので、出来上がった作品はメインの作詞作曲が勇太。編曲とギターが風花、歌が純子となる。
著作権は勇太にある。だけど風花、純子と作ったCDでは利益を3等分にすることにした。
出会って1週間の風花は驚いていたが、勇太の中では納得できている。
純子はこのやり取りを見て、風花も勇太の『特別』だと改めて思った。
◆◆
9月12日、木曜日。
勇太は放課後に柔道部に顔を出し、ルナと一緒にパラレル総合芸術大学に向かった。
曲のアレンジで風花と話すことがあって待ち合わせ。婚約者と嫁の誰かを連れてきて欲しいと言われて、まずルナにした。
例によって学食に入った。
「風花さん、お待たせしました」
「おっす勇太。彼女が愛しのルナさんだね。初めまして周防風花だよ」
風花の言葉のチョイスは、前世の父に微妙に似ている。それに風花も勇太と呼ぶようになって、気安い関係になってきている。
「花木ルナです。よろしくお願いします」
「ね、ルナ。風花さんって梓によく似てるだろ」
「だね。胸は風花さんが圧倒的だけど、顔はそっくり」
「あっはっは。おっぱいもむかい?」
風花はルナにも気楽に話しかけている。
今日はルナをイメージした歌についての話。風花が本物のルナに会って曲のアレンジを考えている。
20分ほど意見を出し合っていると、風花の友人から勇太が四つ折りの紙を渡された。
「勇太くーん、私の出生番号」
「私のも。あとで確認してね」
前世のマイナンバーカードに当たるものの個人番号15桁から抜粋した、父親の特定番号だ。
勇太は『F321A19P』。ルナは『R2367U7N』
8月に中学生のメイちゃんから勇太が、この番号を渡された。
そしてメイちゃんと勇太が腹違いの兄妹と知ってしまった。ともに人工授精で産まれてるから父親は誰か分からないが、結婚は許されない。
大半の男子は、この紙をもらうことを拒絶する。「あなたと結婚できますか」の意味がこもっている。
受け取り方次第では、すごく重いものだ。
勇太が軽い気持ちでメイちゃんから受け取って以降、よく渡されるようになった。
このへんでも、勇太は希少男子なのだ。
「おっ、勇太はモテモテだね。またもらったね」
「みんな遊び感覚ですよねー」
「風花さんも、やりましたか?」ルナが聞いてみた。
「いや。私は中学、高校と荒れてた時期もあったから、やってない。ほら、まだヤンキーだった片鱗あるだろ」
そう。父親の特定番号を教え合う遊びはあるが、不良やヤンキーは無縁。そりゃ、怖い人間と異母姉妹だと分かった方が嫌だ。
この世界の、ひとつの常識だ。
「大学生になると、実際に結婚するやつも増えてくるから、ガチのときしか教え合わないしね」
「ふーん。じゃあ、風花さんの番号、教えて下さいよ」
「あれ、勇太君は私と結婚したいのかな」
見ていた女子達がざわっとした。
「あはは。それこそ遊びですよ」
「ちっ、残念。ははは」
ここ数日、勇太は風花とこんなノリで話す。ルナやカオルとも違う気楽さがあるのだ。
「じゃあ人生初の申告だな」
風花は勇太とルナに顔を寄せて、小さい声で呟いた。
「私の精子提供者の番号は『QP36591G』だよ」
「・・あ、俺のと違いますね~」
「私とも違うな」
勇太とルナは笑った。だけど、心の中は大きく揺れていた。
それから1時間して風花と別れた。
◆
大学の門を出て、勇太とルナは顔を見合わせた。
「勇太、あの風花さんの番号」
「『QP36591G』って言ったよな」
「間違いない、私もそう聞こえた」
2人が共通して覚えている番号が2つだけある。それは家族になる人間の番号だから。
風花の精子提供者の番号は、勇太の従妹で嫁、梓の番号と一致した。
「梓だよね・・」
「うん。顔も似てるし、間違いない」
前世では親子だった2人。今世のパラレル父・風花とパラレル梓は異母姉妹だった。
勇太は嬉しくなった。
前世の父親と同じく、子供時代に家族に恵まれなかった時期があるパラレル父・風花Dカップ。
今度は、腹違いでも姉妹が分かる場所にいる。
41
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~
雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。
新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。
助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。
彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。
『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。
女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。
この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。
だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。
ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。
噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。
その資金源も目的もわからない。
不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。
その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。
だが、ジルドランは人間。娘は魔族。
血が繋がっていないことは明白。
いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います
七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。
独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。
が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。
再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。
独自世界のゆるふわ設定です。
誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。
毎日0時にアップしていきます。
タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。
よろしくお願いします。
※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。
※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る
イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。
《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。
彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。
だが、彼が次に目覚めた時。
そこは十三歳の自分だった。
処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。
これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる