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106 ギタリストと会おう

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急展開ながら、ルナの双子の妹・純子とパンのウスヤの臼鳥麗子が学生結婚した。

純子が用意した婚姻届には、麗子のとこのユリエママ、純子のお父さんのサイン入り。

麗子がサインして、9月3日の夜には役所に提出した。

純子のお父さんも、純子を変えてくれた麗子相手ならOKと快諾したそうだ。


そこまではいいが、2人して来年の6月に勇太の婚約者になる気だ。

勇太は、梓、ルナ、カオルと相談すると言ったが、なんだか麗子の思い込みのパワーに押し負けそうな予感がしている。

ルナは「これで勇太のお嫁さんは5人だね」と笑顔で、そして甘い声で笑っている。

梓がカオルに電話したら「いいんじゃね?」と賛同した。

「え、3人とも軽くね?」と勇太から声が漏れた。

女の子の5股。

前世なら、笑顔の梓が包丁を持っていても不思議ではない。

まだまだ、この世界の常識に慣れていけない。


9月3日には、勇太は純子とパラレル総合芸術大学に来ている。

純子と麗子が入籍を急いだのは、麗子のところのハル母さんの病気を根治するため。

あからさまに言えば、純子が麗子に堂々とお金を援助するため。麗子に遠慮させないためだ。

パンの歌の収益でハル母さんの病気は完治させられる見込み。

だけど、再発の可能性もある。そのときは、パラレルアメリカに行って、ワンランク上の治療を受けねばならない。

勇太の昼はカフェ、柔道部、柔道連盟との絡みがある。色んな仕事が増えたけど、今回は下手をしたら麗子のハル母さんの命に関わってくる。

だから歌作りの目処を早めにつけようとしている。

まあ、勇太が歌って、楽譜に起こしてもらう。

勇太自身の作業は意外に少ない。伊集院君頼りだけど、大人の手を借りる。

レコード会社も協力してくれて、純子と期間限定のユニットを組むアコースティックギターの奏者を探している。

理由は、純子の力が未知数だから。

エロカワ男子勇太の歌があるから、3年間は売れる見込みがある。

その後も、勇太の歌は確実に売れる。一部披露した歌のレバートリーが多いし、歌詞もいい。

そりゃ、前世の名曲だから・・

しかし純子が歌手として地位を確立できるかは分からない。

営業や製作の専門職の人に、そう言われている。

だからまずは、1年間限定で純子がギタリストとユニットを組むことを提案された。

勇太のパクり歌は、比較的古いものが多くて、オリジナルにギターの弾き語りもたくさんある。

勇太は、自分の適当パクり歌を作品に仕上げてくれる人達に感謝している。

女性達からしたら、人生初の男子作詞作曲の作品作りに関わることを歓迎している。


純子とパラ芸大に来た。

男子はゼロ。ガチな入試でしか入れない体育大学、芸術大学を受ける男子は、最近いない。

ギターコードが押さえられたら、ミュージシャンを名乗る男子もまれにいるが、レベルは低い。

だから、待ち合わせの学生食堂に行くまで、すごく騒ぎになっている。芸術的な才能も溢れていると勘違いされてるから、尊敬の眼差しもある。


「純子、何人かのギタリストさんと会って、早くも1人に絞ったんだって?」

「うん。勇太君がイメージに合わないと思ったら選考し直しだけど、ネットで勇太君が歌った歌を全部、綺麗にアレンジしてるんだよ」

「ふ~ん。顔とか雰囲気は?」

「勇太君の知り合いに、そっくりな人がいるよ」

「そうなんだ」

「あ、いた~。本人を見てみて」

「どれどれ」

大学の学食に勝手に入ると、窓際の椅子に座ってギターを弾いている女の人がいた。

彼女の真後ろには『学食内演奏禁止』と張り紙がある。彼女の精神力が強いことは分かった。

彼女は勇太が1度だけ歌った『泳ぐ君と僕のバラッド』を弾いていた。

勇太は驚いた。

まず、その再現力の高さ。1度だけ歌ったシロウト勇太の歌を本物に近い感じで再現している。

そして顔。

向こうが気付いた。

「純子ちゃ~ん、こっち~」
「周防さ~ん、お待たせしました」

勇太はドキドキしている。女性は梓にかなり似ている。

手がかりがなくなりすぎて、探せなかったバラレル人物かもしれない。

「あ、あの、初めまして、坂元勇太です」

「わ、かっわいい~。男子なのにご丁寧にありがとう。周防風花21歳。勇太君の歌の大ファンです」

勇太は異世界に来て、久々に面食らっている。

軽い口調と梓似の美形。

名字の周防も、入婿の前と一致する。

周防風花が、勇太が思っているパラレル人物なら、前世の名前は周防風太。

今回はフウタから、フウカへと変わっている。

パラレル梓の父親と顔が一致しなかったから、気長に探そうと思っていた。


前世の勇太の父親。そのパラレル人物に間違いないと思った。


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