上 下
103 / 266

103 一部怒涛の2学期スタート

しおりを挟む
夏休みが終わった。

パン屋、茶薔薇学園柔道部、リーフカェを基本に、最後の1週間も勇太らしく過ごした。

26日のリーフカェ定休日には、ルナと梓とお出かけした。

変化といえば、葉子義母さんの彼女さんが、実家を継ぐとかで葉子義母さんと別れてしまったくらいか。


9月2日月曜日。

勇太ファミリーの4人は、『静と動』に別れたとでも、いうべきか。

『静』は勇太とルナ。

1年生の梓も入れて3人で登校。

ルナの2年4組に挨拶に行って、その後で自分の教室。

伊集院君が再び水、金の週2登校に切り替えたから、2年3組の男子は勇太のみ。

今日も委員長だけ挨拶かと思ったが・・

「お、おはよう、坂元君」
「元気・・だった?」
「2学期もよろしくね」
「い、今までごめん」

委員長と一緒に、距離が縮まらなかったクラスメイトも次々と挨拶してくれた。

「あ、おはよう。これからよろしく」

特に会話もなかったが、少しだけお互いに気持ちが緩んだ感じだ。

ルナは、特になにもない。

というか、勇太とのセットが普通に受け入れられている。東京観光と、柔道部合宿に関しては、根掘り葉掘り聞かれた。


問題は残る2人。

梓は、恐る恐る教室に入った。

7月31日に勇太と入籍したのは秘密にするつもりだった。

けれど、前日のお泊まりから思い切りネットに流れていた。勇太との仲が進展していないと騙していたクラスメイトにバレた。

親友の渋谷カリンをはじめ、友人に取り囲まれている。

「梓、この1ヶ月、逃げて回ってたでしょ!」
「てへへ」

「てへへ、じゃないよ。勇太と籍入れたんでしょ。ルナさんに勝てないとか泣き真似して」
「騙されたあ~」
「くっそ~、梓が花木ルナさんより先に、勇太さんと入籍してたのか」

「あんた、茶薔薇のカオルさんだけじゃなかったんかい」
「やられた~」

みんな、勝手なことを言うが勇太だけじゃなく、カオルとルナとも上手くいっている。

にやにやした梓がクラスメイトに、たっぷり責められることになった。

ピロロラロ~ンと梓のスマホが鳴った。勇太ファミリー専用のLIME着信音である。

「ちょっとごめん」。梓が画面を見た。

茶薔薇学園の山田ツバキ→ルナ経由でLIMEにカオルの画像が届いていた。そして驚いた。


カオルが茶薔薇学園の自分の教室に入った。クラスは2年1組。体育系の推薦で入った人間ばかりの教室。

みんなガタイがいい。

そしてスポーツ枠で高校に入る男子なんていないから、共学校なのに女子オンリーのクラス。

「う、うい~す」

カオルはなに食わぬ顔をして教室に入った。

しかし、予想通りに取り囲まれた。クラスメイト26人全員に。

「カオル、インターハイ個人戦、準優勝おめでとう」
「おう、ありがとな」

「そ、れ、か、ら、婚約おめで、と、う」

「あ、あ、あひがどう」

やっぱりきたかと、汗びっしょりである。

「カオル~、てめえ勇太君とは、ただの友達って言ってたよな」
「花木ルナちゃんの彼氏だから、勝手にあたしらに紹介できねーってな!」

「うへっ。すまね~」

「笑うな!」

「何なんだよ、公開プロポーズとか4人婚とかって」
「歌ってもらって、テレビでもインターハイ特集の主役みたくなってたじゃんよ」
「ホテルのロビーでエロカワ君とキスって、やらせかよーー!」

「茶薔薇学園、創立50年間の『1組の伝統』を壊しやがった」

すごい言いがかりである。

茶薔薇学園の各学年の『1組』には伝統がある。スポーツ推薦で入ってきた女子のクラスで固定されてきた。

茶薔薇では特に格闘技系の空手、柔道、レスリング、剣道、テコンドー、ボクシングに力を入れている。そしてラグビーやウエイトリフティングの推薦も受け付けている。

強く凶暴に見える女子率が高く、男子は1組の教室には近付かない。在学中に男子と付き合った『1組』の女の子は過去にいない。

警察や警備会社に就職し、男子護衛から見初められて結婚するケースはあるが、それは卒業後。

カオルは50年間に渡る1組の伝統を壊してしまったのだ。

茶薔薇柔道部員から1組の伝統を聞いた勇太は、ルナと一緒に「知らんがな」とハモった。

ともかくカオルはクラスメイトから、やっかみ95パーセント、伝統破りの罪5パーセントで吊し上げられている。

カオルは屈強な女子達に拘束され、1人だけ椅子に座らされている。

そこはアスリート同士。怪我が完治していないから、手荒なことはしない。

「てめえ、もう勇太君とセッ●ス何回したんだよ」
「してねえ」

「嘘言うなあ」

「キ、キ、キスとスキンシップだけだよ」

「うがーー」
「だけ、じゃねえだろ」
「自慢だろおおお!」

なぜか椅子の上で正座になるカオル。その回りを取り囲む女の子達。

ちょっと誤解されそうな絵図だけど、カオルがニヤけてしまっている。

そのときのニヤけたカオルの写真が、柔道部の山田ツバキ部長からルナにLIMEされた。

彼女も2年1組だ。

そしてルナが大笑いしながら、写真を勇太ファミリーのグループLIMEに乗せた。

照れ笑いしたカオルは、髪の毛をわしゃわしゃされていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...