上 下
119 / 266

119 秋の新人戦も始まる前から・・

しおりを挟む
いよいよ県北地区の柔道新人戦。日程は9月28、29日。土、日の2日間。

今年は原西市のパラ西記念体育館で開催される。

パラレル市と隣接した街で、1回乗り換えがあるローカル線の駅前。普段は人通りが少ないけど、朝から賑わっている。

ルナ部長率いる10人で移動。今回は梓はいない。バドミントン部も同じ日程で新人戦だ。

相変わらず、現在の日本で1人だけの柔道男子・勇太を見に来た人がいる。

駅前では、茶薔薇学園のみんなとばったり会った。

「おっはよー勇太君。今日はよろしくね」
「ツバキ部長、元気~。今日はお手柔らかにね」

右手で握手しながら、左手でお互いの肩をぱんぱんと軽くたたいている。

茶薔薇のハンサム系美女・山田ツバキ部長が右手を差し出して、勇太も応じた。

2人の関係を知らない女の子がざわっとしている。

ツバキ部長は努力家。この自然に握手を求めるしぐさとセリフも、一生懸命に練習してきた。

ツバキの健気な頑張りに、部員達は時として涙を流している。


早速、体育館に入って奥のコーナーにパラ高ブースを作った。勇太には大した問題ではないが、問題があった。

この体育館は前に試合をしたパラレル市民体育館よりも小さい。だから着替えスペースが足りない。

勇太専用の着替え用に第4会議室を提供すると言われた。

勇太は断った。本来なら広めの医務スペースらしく、勇太が独り占めすると色んな人にしわ寄せがいく。

役員さんには謝られたが、事前連絡があったので準備していた。

大きな布を持ってきて、それをコーナーに縦に張って前から見えないように三角地帯を作った。

ただ、この体育館は2階観覧席がある。ごく限られた角度からだが、勇太の生着替えが見えた。距離も8メートル程度。

見たのは地元のパラ西高校の人間5人。柔道部の友人を応援しにきて、たまたま勇太のボクサーパンツ一枚を見た。

ガン見してしまったが、辛うじて理性が働いてスマホは格納した。

これならギリギリセーフ。小4から保健体育の座学に組み込まれた『男性へのセクハラと犯罪』の授業で習う。

防犯の目的から男子へのスマホ撮影が黙認されている。けれど越えてはならない一線がある。

今回の勇太のように、公共の場で自分から肌をさらした男子を見てしまったのはセーフ。

個室に入った男子をドアを開けて撮影するのはアウト。今のように、見られないように目隠ししているのに撮影するのもアウト。

だから彼女ら5人は、脳裏に焼き付けることに集中している。見えてしまったのは偶然の産物だからグレーなり。

しかし・・

視線を感じた勇太が2階席を見てしまった。そのときの勇太は下は着替えていたが、上は裸のままだ。

「あちゃあ、見苦しいもんを見せてしまったな・・。あ、この世界では逆だった」

この場合、女子から覗かれた形になることは知識として学んだ。しかし勇太の感覚では、別に食らったという訳でもない。

とりあえず勇太は5人の女子に手を振ってみた。するとこわごわと、向こうも手を振ってくれた。

お互いに、トラブルに発展せず安心した。


初日の団体戦は各校が5人出場。先鋒戦、次鋒戦と順番に戦っていき、3勝した学校が勝ち。

24校参加のトーナメント形式。シードなしなら4回勝てば優勝。パラ高は勝ち抜いていけば準決勝でカオルの茶薔薇学園と当たる。

団体戦には黒帯4人と勇太が出場して、明日の個人戦に10人全員がエントリーしている。

試合前だが苦笑いのカオルが、ルナと勇太のところに来た。

3月には籍を入れる3人なので、ざわっとしている。

「どうしたのカオル」
「なんだ、難しい顔して」
「うーん、本来は御法度なんだけどさ・・」

カオルが他校の顔見知りに頼まれて、勇太が何番目で出るか聞きに来た。

全国を目指すインターハイ予選や春の大会なら、作戦を晒すのは絶対にNG。だけど今回は、ここで完結する腕試しのような大会。少しムードが緩い。

「大会役員の人にもこっそり頼まれたけど、パラ高と1回戦で当たる聖ジョバンヌ学園の試合順が決まらないんだとさ」

そういう訳で、勇太の順番だけ明かすことにした。

勇太は先鋒。勇太、キヨミ、タマミ、マルミ、ルナにしている。

聖ジョバンヌ学園の出場選手はじゃんけん大会を始めた。

先鋒になった高田選手が、右手を高々と上げている。

まだ試合前だぞ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

処理中です...