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119 秋の新人戦も始まる前から・・
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いよいよ県北地区の柔道新人戦。日程は9月28、29日。土、日の2日間。
今年は原西市のパラ西記念体育館で開催される。
パラレル市と隣接した街で、1回乗り換えがあるローカル線の駅前。普段は人通りが少ないけど、朝から賑わっている。
ルナ部長率いる10人で移動。今回は梓はいない。バドミントン部も同じ日程で新人戦だ。
相変わらず、現在の日本で1人だけの柔道男子・勇太を見に来た人がいる。
駅前では、茶薔薇学園のみんなとばったり会った。
「おっはよー勇太君。今日はよろしくね」
「ツバキ部長、元気~。今日はお手柔らかにね」
右手で握手しながら、左手でお互いの肩をぱんぱんと軽くたたいている。
茶薔薇のハンサム系美女・山田ツバキ部長が右手を差し出して、勇太も応じた。
2人の関係を知らない女の子がざわっとしている。
ツバキ部長は努力家。この自然に握手を求めるしぐさとセリフも、一生懸命に練習してきた。
ツバキの健気な頑張りに、部員達は時として涙を流している。
早速、体育館に入って奥のコーナーにパラ高ブースを作った。勇太には大した問題ではないが、問題があった。
この体育館は前に試合をしたパラレル市民体育館よりも小さい。だから着替えスペースが足りない。
勇太専用の着替え用に第4会議室を提供すると言われた。
勇太は断った。本来なら広めの医務スペースらしく、勇太が独り占めすると色んな人にしわ寄せがいく。
役員さんには謝られたが、事前連絡があったので準備していた。
大きな布を持ってきて、それをコーナーに縦に張って前から見えないように三角地帯を作った。
ただ、この体育館は2階観覧席がある。ごく限られた角度からだが、勇太の生着替えが見えた。距離も8メートル程度。
見たのは地元のパラ西高校の人間5人。柔道部の友人を応援しにきて、たまたま勇太のボクサーパンツ一枚を見た。
ガン見してしまったが、辛うじて理性が働いてスマホは格納した。
これならギリギリセーフ。小4から保健体育の座学に組み込まれた『男性へのセクハラと犯罪』の授業で習う。
防犯の目的から男子へのスマホ撮影が黙認されている。けれど越えてはならない一線がある。
今回の勇太のように、公共の場で自分から肌をさらした男子を見てしまったのはセーフ。
個室に入った男子をドアを開けて撮影するのはアウト。今のように、見られないように目隠ししているのに撮影するのもアウト。
だから彼女ら5人は、脳裏に焼き付けることに集中している。見えてしまったのは偶然の産物だからグレーなり。
しかし・・
視線を感じた勇太が2階席を見てしまった。そのときの勇太は下は着替えていたが、上は裸のままだ。
「あちゃあ、見苦しいもんを見せてしまったな・・。あ、この世界では逆だった」
この場合、女子から覗かれた形になることは知識として学んだ。しかし勇太の感覚では、別に食らったという訳でもない。
とりあえず勇太は5人の女子に手を振ってみた。するとこわごわと、向こうも手を振ってくれた。
お互いに、トラブルに発展せず安心した。
◆
初日の団体戦は各校が5人出場。先鋒戦、次鋒戦と順番に戦っていき、3勝した学校が勝ち。
24校参加のトーナメント形式。シードなしなら4回勝てば優勝。パラ高は勝ち抜いていけば準決勝でカオルの茶薔薇学園と当たる。
団体戦には黒帯4人と勇太が出場して、明日の個人戦に10人全員がエントリーしている。
試合前だが苦笑いのカオルが、ルナと勇太のところに来た。
3月には籍を入れる3人なので、ざわっとしている。
「どうしたのカオル」
「なんだ、難しい顔して」
「うーん、本来は御法度なんだけどさ・・」
カオルが他校の顔見知りに頼まれて、勇太が何番目で出るか聞きに来た。
全国を目指すインターハイ予選や春の大会なら、作戦を晒すのは絶対にNG。だけど今回は、ここで完結する腕試しのような大会。少しムードが緩い。
「大会役員の人にもこっそり頼まれたけど、パラ高と1回戦で当たる聖ジョバンヌ学園の試合順が決まらないんだとさ」
そういう訳で、勇太の順番だけ明かすことにした。
勇太は先鋒。勇太、キヨミ、タマミ、マルミ、ルナにしている。
聖ジョバンヌ学園の出場選手はじゃんけん大会を始めた。
先鋒になった高田選手が、右手を高々と上げている。
まだ試合前だぞ。
今年は原西市のパラ西記念体育館で開催される。
パラレル市と隣接した街で、1回乗り換えがあるローカル線の駅前。普段は人通りが少ないけど、朝から賑わっている。
ルナ部長率いる10人で移動。今回は梓はいない。バドミントン部も同じ日程で新人戦だ。
相変わらず、現在の日本で1人だけの柔道男子・勇太を見に来た人がいる。
駅前では、茶薔薇学園のみんなとばったり会った。
「おっはよー勇太君。今日はよろしくね」
「ツバキ部長、元気~。今日はお手柔らかにね」
右手で握手しながら、左手でお互いの肩をぱんぱんと軽くたたいている。
茶薔薇のハンサム系美女・山田ツバキ部長が右手を差し出して、勇太も応じた。
2人の関係を知らない女の子がざわっとしている。
ツバキ部長は努力家。この自然に握手を求めるしぐさとセリフも、一生懸命に練習してきた。
ツバキの健気な頑張りに、部員達は時として涙を流している。
早速、体育館に入って奥のコーナーにパラ高ブースを作った。勇太には大した問題ではないが、問題があった。
この体育館は前に試合をしたパラレル市民体育館よりも小さい。だから着替えスペースが足りない。
勇太専用の着替え用に第4会議室を提供すると言われた。
勇太は断った。本来なら広めの医務スペースらしく、勇太が独り占めすると色んな人にしわ寄せがいく。
役員さんには謝られたが、事前連絡があったので準備していた。
大きな布を持ってきて、それをコーナーに縦に張って前から見えないように三角地帯を作った。
ただ、この体育館は2階観覧席がある。ごく限られた角度からだが、勇太の生着替えが見えた。距離も8メートル程度。
見たのは地元のパラ西高校の人間5人。柔道部の友人を応援しにきて、たまたま勇太のボクサーパンツ一枚を見た。
ガン見してしまったが、辛うじて理性が働いてスマホは格納した。
これならギリギリセーフ。小4から保健体育の座学に組み込まれた『男性へのセクハラと犯罪』の授業で習う。
防犯の目的から男子へのスマホ撮影が黙認されている。けれど越えてはならない一線がある。
今回の勇太のように、公共の場で自分から肌をさらした男子を見てしまったのはセーフ。
個室に入った男子をドアを開けて撮影するのはアウト。今のように、見られないように目隠ししているのに撮影するのもアウト。
だから彼女ら5人は、脳裏に焼き付けることに集中している。見えてしまったのは偶然の産物だからグレーなり。
しかし・・
視線を感じた勇太が2階席を見てしまった。そのときの勇太は下は着替えていたが、上は裸のままだ。
「あちゃあ、見苦しいもんを見せてしまったな・・。あ、この世界では逆だった」
この場合、女子から覗かれた形になることは知識として学んだ。しかし勇太の感覚では、別に食らったという訳でもない。
とりあえず勇太は5人の女子に手を振ってみた。するとこわごわと、向こうも手を振ってくれた。
お互いに、トラブルに発展せず安心した。
◆
初日の団体戦は各校が5人出場。先鋒戦、次鋒戦と順番に戦っていき、3勝した学校が勝ち。
24校参加のトーナメント形式。シードなしなら4回勝てば優勝。パラ高は勝ち抜いていけば準決勝でカオルの茶薔薇学園と当たる。
団体戦には黒帯4人と勇太が出場して、明日の個人戦に10人全員がエントリーしている。
試合前だが苦笑いのカオルが、ルナと勇太のところに来た。
3月には籍を入れる3人なので、ざわっとしている。
「どうしたのカオル」
「なんだ、難しい顔して」
「うーん、本来は御法度なんだけどさ・・」
カオルが他校の顔見知りに頼まれて、勇太が何番目で出るか聞きに来た。
全国を目指すインターハイ予選や春の大会なら、作戦を晒すのは絶対にNG。だけど今回は、ここで完結する腕試しのような大会。少しムードが緩い。
「大会役員の人にもこっそり頼まれたけど、パラ高と1回戦で当たる聖ジョバンヌ学園の試合順が決まらないんだとさ」
そういう訳で、勇太の順番だけ明かすことにした。
勇太は先鋒。勇太、キヨミ、タマミ、マルミ、ルナにしている。
聖ジョバンヌ学園の出場選手はじゃんけん大会を始めた。
先鋒になった高田選手が、右手を高々と上げている。
まだ試合前だぞ。
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