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93 この世界の神事とは

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パラレルお盆になった。

カオルは安静期間も過ぎて、右手だけの筋トレを始めた。普通に外出も可能だ。

タイミングも良かったので、夏祭りに行くことにした。

今回は8人。

今日は8月15日で、由緒あるパラ南神社のお祭り。境内に続く道と階段に提灯が並んで、まずまずの規模。人もたくさん出ている。

勇太、ルナ、梓、カオルに、純子と臼鳥麗子のカップルで6人。

ダメ元で誘ってみた伊集院君も、婚約者の1人笠山ヒスイとデートの予定だったから、そのまんま合流してくれた。

このメンバーの総勢8人で歩いている。

電車をパラ南神社前で降りて伊集院君を待っていると、伊集院君は黒塗りの高級車でやってきた。

一旦は車に乗せられて、近くの呉服屋に入った。

そして神社まで歩いてきた。

やはり伊集院君といると目立つ。普段の数倍は注目されている。

そう素直に思う勇太だ。


伊集院君は、意外にも初めての夏祭り。

小さい頃は、警備がとうだとか言われて我慢したとか。大事にされてきたけれど、やりたいことが全部できたわけでもない。

優しい伊集院君は周囲に気遣って生きてきた。

ただ、世界の有名な祭典を直接見ている。生のパラレルオーロラも見ている。

「すげっ、前世と違ってパラレル伊集院君って、すげえセレブなんだよな」。勇太は呟いている。

伊集院君は勇太に感謝している。

パラレル市限定になるが、勇太やみんなとセットなら、特攻してくる女子はいない。

だから、『普通』に歩ける。

「射的やろうよ勇太君。あれが金魚すくいだね。ヒスイ君、あのリンゴ飴とはなんだい」
「うふふ。光輝さん、落ち着いて。みんなビックリしてるよ」

「あはは。ついね」

なんと伊集院君のテンションがムチャ高い。

完全に珍しいものを見た子供だ。

笠山ヒスイが笑っている。それを見た伊集院君が照れている。


勇太と伊集院君は、普通の格好。

女子6人は伊集院君が用意してくれた浴衣を着ている。急なお誘いなのに、伊集院君は手配してくれた。

笠山ヒスイは黄色が基調。純子と麗子は、赤でお揃いのデザイン。

ルナは少しだけ黄色が入った青の基調。日暮れ直後に浮かんだ月のイメージだ。

梓は赤とピンクのベースに大きな花。美人だし華やかだ。

カオルは白にヒマワリをあらかじめリクエストしていた。一応は乙女だ。

小6で青い浴衣を着たとき、上野駅の西郷隆盛子像そっくりだった。濃い色の浴衣はトラウマなのだ。

勇太はどこでも人気だ。
「勇太くーん、こんばんはー」
「あ、どうもでーす」

「あ、今日はおふたり一緒ですね~」
「伊集院君、勇太君、楽しんでますかー」
「はいよ」
「うん、楽しんでますよ~」

勇太かパラレル市で目立ち始めて3か月。注目はされているが、東京のような過剰な感じはしなくなった。

女子達は、軽い挨拶だけで通り過ぎていく。

撮影されるのは相変わらずでも、伊集院君、勇太自身というより、その彼女らに遠慮してくれている感じだ。

カフェ店員で色んな女性と話すうち、相手も考えてくれるようになったようだ。

「そうそう、この距離感がいいんだよね。勇太君」
「ははは。東京では違ったけど、やっぱり地元がいいね」

「そうだね。勇太君のおかげで色んなことが分かったよ」

最近は7人の婚約者との関係が円滑とか。勇太から学んだ通り、無理に全員平等に接することなく、相手のリクエストを聞いて動くという。

勇太が東京で会った婚約者は茶道の家元の娘さん。普段はお堅い雰囲気だけど、2人のときは意外と甘えん坊だったとか。

ごちそうさんです。げぷっ。


ぱんっと、射的の音がむなしく響いている。

「ちくしょー、もうやってらんねー」
「もう行こうよ、カオルちゃん。巫女さんの舞が始まるよ」

「左手さえ無事なら・・」。負けず嫌いのカオルだ。


今日のメインイベント。神社の境内で子宝祈願を願って巫女が踊る。

この辺は勇太の元の世界とまったく違う。男子減少からこっち、五穀豊穣よりも大事にされている。

4メートルある巨大で黒光りする木製ペ●スが地面からギンギンに立っている。周りを囲んだ4人の巫女が、箏楽器の音に合わせて舞っている。

白い巫女服の襟が大きく開き、胸がはみ出ている。赤い袴もスリットがすごい。

巫女さんの表情を見ると真剣。巨大●ニスに乳を押しつけたりするけど真剣。

まさに神事だ。

男女比1対12の世界。世界中に、こんなお祭りがある。むしろ、こっちがスタンダードだ。

女性陣だけでなく、パラレル伊集院君も手を合わせて真剣に舞を見ている。

勇太は集中できない。

どうしても、巨大ペニ●の巨大な亀頭にしか目がいかない。

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