モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

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57 勇太の造形力

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水曜日に宣伝用のパンをこねた勇太。

木曜日の朝4時にはパンのウスヤに来た。

「ユリエさん、おはようございまーす」
「勇太君おはよう。さっそく道具を並べるのを手伝ってもらおうかな」

ユリエは感心した。昨日は学校に行ったあとウスヤに直行。さらにリーフカフェの閉店作業も手伝ったはず。

帰宅は優に夜9時を過ぎていたはずなのに、朝3時過ぎから走って店まで来たという。

ユリエの前職の自衛隊にも、なかなかいなかった体力の持ち主だと感じた。女神印の回復力のおかげである。

今日は食べ物を扱うから、勇太も白い長袖の制服に帽子。暑いが我慢である。

「ところでユリエさん、作るパンの量を一気に増やして負担はないですか」

「ああ、最近は売れるパンの量も減っていて、セーブして作ってたんだ。勇太君が手伝ってくれるから、元の量に増やせるな」

「売れるといいですね」
「そこは大丈夫だと思うよ」

ユリエさんは男前な笑顔を見せた。

ネットで調べると、男子の手作りパン屋さんは全国で10軒ほどある。売り上げは、みんな上々とか。

「へえ、やっぱ男子って有利な世界だな」

雑談もそこまで。ユリエさんも真剣だし、勇太も冷やかしではない。

勇太は動物パンを任されて、脱ゴブリンをテーマに頑張っていた。

焼けたパンを敷物の鉄板ごと出したり、並べていったりと忙しい。

窯から出る熱気で汗をかき、控えめながらフェロモンを厨房に漂わせた勇太。

ユリエ母さんが、ちょっと勇太を見て、色気がある横顔にムラっとしたのは内緒だ。

◆◆
午前7時。

「できたー」

「こっちもサンドイッチが完成した。ありがとう勇太君」

この頃には起きて朝食を用意し終えた麗子、泊まった純子も手伝い始めた。勇太はおにぎりをもらって食べて、ルナを迎えに駅に向かった。

記念すべき、動物中心の造形パンを6個もらった。

あとは空いたオーブンで焼かせてもらった、大量のクッキー。生地は家で作っておいて持ち込んだ。

駅でルナと合流。今日はルナだけではなかった。

4組のルナのクラスメイトが5人いた。

「おはよー。みんなどうしたの」

「勇太君、パン屋の手伝いも始めたって本当」
「パラ横商店街にあるんだよね、そのお店」

「昨日、ルナが流したネット動画で勇太君がパンを作ってるとこ見たよ」
「もしかして、その右手のビニール袋に入っているのは・・」

ギャラリーが増えてきた。勇太は、店の宣伝をしてみた。

「うん、6個だけど俺が造形したパンがあるよ。パン屋はウスヤだよ~」

「おおっ。ルナの動画に勇太君のコネコネは撮られてたけど、肝心の出来上がりがなかったのよ」
「私、見たい~」
「この県には、男子の手作りパン屋がないんだよねー」

「私も勇太君にコネコネされた~い」

ひとつだけ不純物が混じっているが、男子コネコネのパンは、勇太の予想以上に期待されていた。


「へへへ。まあ、簡単作業だけだよ。造形パン3種類だよー」

「いくら、買うから、それ分けて」
「私もほしー」

ネットで勇太がパン屋に関わりだしたという情報が流れた。

普段は勇太とルナの登校を邪魔しない女子達も、噂の勇太パンを食べてみたくて待ち伏せしてしまった。

「みんなには、よくお昼のおかずももらってるし、良かったらどうぞー」

おおおーとどよめきの声。勇太のパンにみんなが注目した。

「パンのデザインは3種類あるよ。何か当ててね」

ちょっと顔の造形が崩れ気味のデザイン。

パンを作る映像は流れているが、勇太に造形の才能はない。さらに転生2か月で、まだ繊細な指先の動きに関しては熟練度が低い。

そんなパンでも1個目を手にした女子が喜びの声を上げた。

「うわあ面白い。片耳のゴブリンだ」「・・ええ?」
リボンを付けたルナのイメージで作ったと言えなくなった。

「このゴブリン可愛い」「猫です・・」

「私のゴブリンパン、耳が大きい」「ウサ・・、はい、ゴブリンでいいです」

「なんだ勇太。今日は熊とかのデザインパン作るって言ってたのに、またゴブリンにしたんだー」

綺麗な目をしたルナの言葉がグサッときた。

転生して、もっとも傷ついている勇太である。


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