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46 パン屋を探して純子を見つけた

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勇太はパラ高の女子達に、純子は性に奔放な女王的存在だと聞いていた。

なかなかパラレル純子に会わないと思ったら、思わぬところで会えた。

7月9日のパン屋で。

探していたパン屋だけでなく、純子まで見つけた。

ブラウスの上からエプロンを着けた店員さん。

身長168センチの瞳が青みがかったスレンダー美女。頭には三角巾を被っている。

髪は茶色いが、ルナと付き合うときに挨拶したフランス人ハーフのお母さんと同じ色。フランスの人形みたいだ。

勇太が愛するルナは丸顔、黒目、黒髪、やや細目。155センチの巨乳。

純子と双子だから、間違いなくフランス人の血が入っているはす。なのになぜ、ルナの幼少時代の写真は、こけし人形みたいだったのか。

勇太からしたから愛くるしかったけど、解せない。

やっぱり、この2人に関しては女神のイタズラと勇太は疑う。


ただ、パラレルな純子のイメージも思い描いていたのと違う。

勇太が人に聞いて作った人物像とかけ離れている。

きっと、ワイシャツのボタン3個空けで黒いブラ見せ。金髪、ガン黒、付け睫毛、ばっちりメイク、ミニスカートを考えていた。

勇太、それはコテコテの黒ギャルではないか。それも少しズレている。

勇太はセッ●スクイーンの異名を取る純子のイメージを前世基準で作り上げていた。

勇太の前世を考えれば、仕方なしか。

男女比1対12。日本政府には人口維持省があり、その中の性交課という勇太の前世なら摩訶不思議な部署もある。

そこに属する人達はエリートである。

何か間違えば、人類滅亡が見えてしまう男女比。それを防ぐために必要な『性』に関する称号は、勇太の前世より格が上なのだ。

目の前のパラレル純子は勇太が知っている前世純子と同じ顔だ。身長が少し今の方が高い。

純子もルナも、勇太も驚いている。
「ルナお姉ちゃん、どうしたの、ここ誰かに聞いたの?」
「いや本当に偶然だよね、勇太。パン屋でバイトしてたなんて知らなかった」

「誰にも教えてないから・・」
「なんで?」

純子は口ごもっている。

「ども、花木さん」
「・・初めまして。お姉ちゃんの彼氏で坂元君だね。有名人だから知ってるよ」

「純子・・・」
平日の午後4時半。もうパンは多く残っていないが、お客さんはいる。

接客が始まった純子の邪魔はできない。勇太はパンを買って店を出た。

純子の所作はきちんとしていて、お客さんに笑顔で丁寧に対応していた。


ルナが仲良くなった女子を純子に寝取られてから、姉妹に会話らしいものが少ないとは聞いていた。

ルナは、もう気にしていないと言う。

だけど純子が家でも学校でもルナを避けているらしい。

ルナが教えなかった訳でもなく、勇太も特には聞かなかった。

ご飯も週に1回くらいしか家族と食べず、即時撤収。普段は遅く帰ってきて1人で用意してあるものを食べるそうだ。

最近は、友人の家に泊まる日もあるらしい。一応は連絡アリ。

そのきっかけの寝取り事件が昨年の10月。

元から純子は夜遅い帰宅もあったから、現在の両親は様子見。そのうち元に戻るだろう待っているそうだ。

勇太は女の子の夜遊びを親が放っておくの、と渋い顔をした。

直後に、そうだここは女子が獲物を求めて徘徊する世界だったと思い出した。

むしろ勇太が、男子の夜の一人歩きは危ないといろんな人に心配されている。

パラレル純子がルナを見たときの表情。これが勇太は気になった。

前世純子とは3歳からの付き合いだった。パラレル純子に当てはめていいのか分からないが、純子の表情から罪悪感のようなものを感じた。


周りに聞くパラレル純子は、平気な顔をしてルナと仲良くなった人間と寝るという。

対抗意識でもあるかのようだと聞く。

そんなことをする子が、今の表情を浮かべるだろうかと思った。

◆◆
ルナは、とりあえず帰った。純子にはパン屋のことは両親には言わないでくれと頼まれていた。

勇太は近くに来たついでに、リーフカフェに行って閉店の手伝いをした。
作業をしながら考えた。

パラレル純子に会った。

人に聞いてイメージを勝手に作っていた。なぜかパンツが見えそうなガン黒ギャルである。

ちなみにガン黒なんて、誰も勇太には言っていない。

一緒に合気道の道場に行っていた頃のイメージと大きく離れ、別人になっていると思っていた。

だけど実際に会ってみると前世の印象そのものだった。


前世では1学年下だった純子も目を引く美女だった。もちろん男女比は1対1だから、多くの男子が彼女に興味を持っていた。

読者モデルとやらで少し自信が付いたと、勇太は純子に聞かされた。

本業を目指したいと高校は家から通えないヨコハマコシホリ学園に行った。場所のチョイスは母の妹が、そこに住んでいて居候OKだったから。

時期は勇太が病気で高校退学を余儀なくされ頃と重なった。

勇太は夢に向かう純子に心配をかけたくなくて、家族や純子の両親にも自分の病気のことを口止めしていた。

歩き方がおかしくなっていたのも、柔道で股関節を痛めたとごまかしていた。

純子が勇太の病気のことを正確に知ったのは、純子が高1の夏休みに帰省したとき。勇太の病気発症から1年2か月経っていた。

自宅療養中だった勇太の家に飛び込んできた純子が見せた顔。その顔とパラレル純子の表情が重なった。

前世純子は勝ち気な性格だった。病気のことを黙っていて怒るかと思ったら違っていた。

泣きながら純子が謝ってきた。

その純子の泣き顔を思い出して、今のパラレル純子が気になっている。


午後8時20分。今日も月明かりが綺麗だ。

今日はオーナーの叔母葉子と2人で閉店作業をしている。

勇太はテラス席を片付けながら、約2ヶ月前にルナが最初に来てくれた日を思い出した。


「・・あの」

「そうそう、あの日も片付けしてたら、こんな風にルナが声かけてきて・・ん?」

「仕事中ごめん、ほんの少しでいいから話せるかな・・」


そこには、さっきと同じ夏服姿でエプロンを外したパラレル純子がいた。



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