12 / 266
12 私は出会ってしまった
しおりを挟む
◇ルナ◇
坂元くん・・いや、勇太君に抱き締められたあと、家に送ると言われた。
え?と聞き返してしまった。
普通は同じ肉食系女子から希少な男の子を守るため、私が送るべきでしょ。
優しくて変な人だ。
今、顔が火照ったまんま1人で歩いている。
勇太君は、私に会えたからって泣いていた。
月曜日の朝、学校の最寄駅で待ち合わせもした。
そこまで思われてるのに、やっぱり、会った記憶がない。
私の家族は双子の妹・純子、純子を大人にしたような母親。
そして、この世界には珍しく父親が同居している。
父は現代日本なのに、一夫一妻を貫いている。
父、母、妹は高身長で細面の美形ばかり。鼻も高くて目も大きい。3人ともスレンダー高身長。
私は誰にも似てない。丸顔で目も細い。そして身長は155センチで胸もひとりだけ大きい。
だけど両親に、愛されている。
あまりに私が両親に似ていないから、法事のとき叔母が騒いだこともある。
この叔母は、自分の仕事を有利に動かすために、父に2人目の妻を娶ることを勧めていた。拒否した恨みだった。
父は、叔母に大きな音が鳴るくらいのビンタをした。
そして父は、私を抱き締めた。
大きくなっても妹の純子とふたりして、父と仲が良かった。会話も多く冗談も言い合えた。
ほぼ毎日、一緒にご飯を食べて、食後のお茶を飲みながら談笑していた。
父親がいる女子がいても、完全な同居、そして父親の時間を多くもらえる子は稀な世界。
私達の日常は、普通の同級生が経験していない。
妹の純子は、父と培った話術を魅力のひとつとして、すごくモテる。
私はその経験値があって、何とか人とのコミニュケーションが取れている。
だからなのか、私にも伊集院光輝君という男子が話しかけてくれる。
きっと父親で男性に慣れていて、相手に話やすくしてあげられるからだろう。
他に理由が見当たらない。
素の私に魅力はない。タヌキ顔だし。
伊集院君が私に近付いてきた理由に心当たりがある。
きっと、伊集院君も純子が目当てだと思う。
現に過去にも2人、純子目当てで私に近付いてきた男子がいた。
どちらも純子とうまくいってセックスした。そして別れた。
男子2人は、もう私と話さなくなった。
そこはいい。
私の中に問題がある。その男子2人に、まったく何も感じなかった。
じゃあ自分が純粋なレズかと思って、半年前に女の子と付き合った。
家に連れて帰った。
その子と関係を持てば何か分かるかと思った。だけど、その子は純子が目当てだった。
純子の部屋で純子とシてた。
面倒なことに、母親にバレて純子が怒られた。
私は何も気にしてなかったのに・・
その後は父も私を慰めてくれた。
純子は両親とギクシャクし、最近は家族でお茶をするとき加わらなくなった。
周囲の人には、何かあるたびに私がかわいそうだと言われた。それには何も感じてない。
そんな自分にショックを受けた。
自分が冷めた人間かと思えて寂しかった。愛してくれる人はいるのに、孤独感があった。
良くしてくれる人に申し訳ないし、口に出したことはない。
だけど昨日、5月10日の金曜日。私の冤罪を晴らしてくれた男子がいた。
坂元勇太君。
太ってたけど、あんな必死になってくれる男子と初めて会った。
今日は助けてもらったお礼を言いに来た。
痩せて大変身していた。
私は相手にされないと思った。
お礼のクッキーを受け取ってくれただけでうれしかった。
帰ろうとしたら、呼び止められた。嬉しそうに話をしてくれた。
会話は短かったのに、すごく楽しかった。
集中しすぎて、言葉をまとめずに話し始めてしまった。
途切れながら、あちこちに飛んでいく思考。
本当に、自分の言葉で喋りたいときにやってしまう、変なしぐさ。
誰もが欠点と言う。だから隠してきた。
それを勇太君の前でやってしまった。終わったと思った。
なのに彼は、優しい目になった。ゆっくりと聞いてくれた。
まるで迷走した私が、ゴールにたどり着くタイミングを知っているかのようだった。
言い終えた直後に、言葉を返してくれた。
考えずに次の言葉が出た。そして勇太君が褒めてくれた。
勇太君は、私のリズムにぴったり合わせてくれた。
地味子のくせに、生意気にも『見つけた』と思ってしまった。
勇太君に過去に会ったことがあると言われ、愛おしそうに見つめられた。
きっと、私に雰囲気が似ているルナという、別人がいたんだと思った。
そしてそのルナさんと勇太君は、もう会えないんだと思う。
本物のルナさんは亡くなっているのかもしれない。
勇太くんは、私なんかに連絡先を聞いてくれた。
だけど、大きな期待を寄せてはならない。
勇太君は昨日までの太ってモテないキャラじゃない。
誰も邪魔が入らない場所に行って、独占できる人じゃない。好きなだけ話ができる相手ではなくなるだろう。
昨日、私は勇太君に助けられたとき、好かれていたのかと錯覚した。
『花木姉妹の地味な方』のくせに。
私の錯覚かと思えば、周りにいたクラスメイトも、私と同じように愛情を感じたそうだ。
過去に勇太君との間に何があったか聞かれた。
やっぱり、何も思い出せない。
あんな素敵な男の子に好かれて忘れていたら、頭がおかしいだろう。
それに彼は、もうネットで話題になっている。彼に抱き締められた私にアンチの人まで現れている。
モテ女の純子が勇太君を見つけるのも時間の問題だろう。
私と仲良くなった人は、最後は純子を好きになる。
期待させられて、最後にはしごを外される。そんなことには慣れている。
けれど、おかしい。
今回だけは、その悲しいゴールを思うだけで胸が痛くなってきた・・・
坂元くん・・いや、勇太君に抱き締められたあと、家に送ると言われた。
え?と聞き返してしまった。
普通は同じ肉食系女子から希少な男の子を守るため、私が送るべきでしょ。
優しくて変な人だ。
今、顔が火照ったまんま1人で歩いている。
勇太君は、私に会えたからって泣いていた。
月曜日の朝、学校の最寄駅で待ち合わせもした。
そこまで思われてるのに、やっぱり、会った記憶がない。
私の家族は双子の妹・純子、純子を大人にしたような母親。
そして、この世界には珍しく父親が同居している。
父は現代日本なのに、一夫一妻を貫いている。
父、母、妹は高身長で細面の美形ばかり。鼻も高くて目も大きい。3人ともスレンダー高身長。
私は誰にも似てない。丸顔で目も細い。そして身長は155センチで胸もひとりだけ大きい。
だけど両親に、愛されている。
あまりに私が両親に似ていないから、法事のとき叔母が騒いだこともある。
この叔母は、自分の仕事を有利に動かすために、父に2人目の妻を娶ることを勧めていた。拒否した恨みだった。
父は、叔母に大きな音が鳴るくらいのビンタをした。
そして父は、私を抱き締めた。
大きくなっても妹の純子とふたりして、父と仲が良かった。会話も多く冗談も言い合えた。
ほぼ毎日、一緒にご飯を食べて、食後のお茶を飲みながら談笑していた。
父親がいる女子がいても、完全な同居、そして父親の時間を多くもらえる子は稀な世界。
私達の日常は、普通の同級生が経験していない。
妹の純子は、父と培った話術を魅力のひとつとして、すごくモテる。
私はその経験値があって、何とか人とのコミニュケーションが取れている。
だからなのか、私にも伊集院光輝君という男子が話しかけてくれる。
きっと父親で男性に慣れていて、相手に話やすくしてあげられるからだろう。
他に理由が見当たらない。
素の私に魅力はない。タヌキ顔だし。
伊集院君が私に近付いてきた理由に心当たりがある。
きっと、伊集院君も純子が目当てだと思う。
現に過去にも2人、純子目当てで私に近付いてきた男子がいた。
どちらも純子とうまくいってセックスした。そして別れた。
男子2人は、もう私と話さなくなった。
そこはいい。
私の中に問題がある。その男子2人に、まったく何も感じなかった。
じゃあ自分が純粋なレズかと思って、半年前に女の子と付き合った。
家に連れて帰った。
その子と関係を持てば何か分かるかと思った。だけど、その子は純子が目当てだった。
純子の部屋で純子とシてた。
面倒なことに、母親にバレて純子が怒られた。
私は何も気にしてなかったのに・・
その後は父も私を慰めてくれた。
純子は両親とギクシャクし、最近は家族でお茶をするとき加わらなくなった。
周囲の人には、何かあるたびに私がかわいそうだと言われた。それには何も感じてない。
そんな自分にショックを受けた。
自分が冷めた人間かと思えて寂しかった。愛してくれる人はいるのに、孤独感があった。
良くしてくれる人に申し訳ないし、口に出したことはない。
だけど昨日、5月10日の金曜日。私の冤罪を晴らしてくれた男子がいた。
坂元勇太君。
太ってたけど、あんな必死になってくれる男子と初めて会った。
今日は助けてもらったお礼を言いに来た。
痩せて大変身していた。
私は相手にされないと思った。
お礼のクッキーを受け取ってくれただけでうれしかった。
帰ろうとしたら、呼び止められた。嬉しそうに話をしてくれた。
会話は短かったのに、すごく楽しかった。
集中しすぎて、言葉をまとめずに話し始めてしまった。
途切れながら、あちこちに飛んでいく思考。
本当に、自分の言葉で喋りたいときにやってしまう、変なしぐさ。
誰もが欠点と言う。だから隠してきた。
それを勇太君の前でやってしまった。終わったと思った。
なのに彼は、優しい目になった。ゆっくりと聞いてくれた。
まるで迷走した私が、ゴールにたどり着くタイミングを知っているかのようだった。
言い終えた直後に、言葉を返してくれた。
考えずに次の言葉が出た。そして勇太君が褒めてくれた。
勇太君は、私のリズムにぴったり合わせてくれた。
地味子のくせに、生意気にも『見つけた』と思ってしまった。
勇太君に過去に会ったことがあると言われ、愛おしそうに見つめられた。
きっと、私に雰囲気が似ているルナという、別人がいたんだと思った。
そしてそのルナさんと勇太君は、もう会えないんだと思う。
本物のルナさんは亡くなっているのかもしれない。
勇太くんは、私なんかに連絡先を聞いてくれた。
だけど、大きな期待を寄せてはならない。
勇太君は昨日までの太ってモテないキャラじゃない。
誰も邪魔が入らない場所に行って、独占できる人じゃない。好きなだけ話ができる相手ではなくなるだろう。
昨日、私は勇太君に助けられたとき、好かれていたのかと錯覚した。
『花木姉妹の地味な方』のくせに。
私の錯覚かと思えば、周りにいたクラスメイトも、私と同じように愛情を感じたそうだ。
過去に勇太君との間に何があったか聞かれた。
やっぱり、何も思い出せない。
あんな素敵な男の子に好かれて忘れていたら、頭がおかしいだろう。
それに彼は、もうネットで話題になっている。彼に抱き締められた私にアンチの人まで現れている。
モテ女の純子が勇太君を見つけるのも時間の問題だろう。
私と仲良くなった人は、最後は純子を好きになる。
期待させられて、最後にはしごを外される。そんなことには慣れている。
けれど、おかしい。
今回だけは、その悲しいゴールを思うだけで胸が痛くなってきた・・・
40
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる