モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

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勇太は、朝から梓のキスで起こされた。それも濃厚な。

現世の従妹とはいえ、梓は前世の勇太の妹と同じ顔。目覚めから心臓に悪い。

結婚すると明言したのは昨日の夜。

誕生日までは清い関係でいることを約束したのに、猛チャージを食らっている。

勇太の部屋は、家を抜けやすいように、1階の勝手口近く。梓を自分の部屋に追い返した。

キッチンでは叔母葉子が朝食を用意していた。

「葉子母さんおはよう」
「おはよう勇太。梓が勇太の部屋から上機嫌で出てきたわよ。はいお茶」

「いやいや、誤解しないで。大事な梓に何もしてないよ」

「あら、まだセ●クスしてないの」

ぶっ、と勇太はお茶を吹き出した。貞操逆転世界、男女比偏り世界の常識に、慣れていける気がしない。

「・・キスだけだよ。昨日、梓の誕生日まで婚姻届も出さないって決めたよね」

「律儀ね。私なんて、ワンチャンスで男の子を押さえ込んで関係持って、16歳になる前に梓を産んだのに」

前世の母親の顔で生々しい話をするのは、やめてくれと思った。

「すげえ・・。とにかく3月29日までは、何もしない」
「え、3月29日って、私の誕生日よ」

「・・・は?」

勇太は悪い予感がした。そういえば、誕生日の入籍と言ったとき、梓が極上の笑顔を見せていた。

「葉子母さんの誕生日って、7月31日じゃ・・」

「そっちは梓の誕生日じゃない。勘違いでもしたの」

梓と葉子で前世の誕生日と入れ替わっていた。勇太は、女神によるトラップが張り巡らされている気がしてきた。

勇太は覚悟するしかない。

肉食獣の本性を現しつつある梓から、もう逃げられそうにない・・

前世梓の可憐なイメージから離れていく。いや、いっそのこと、もっと離れてくれた方がいい。

「梓の誕生日は夏休み中だから、隣県にある姉さんの墓前に2人で結婚の報告していらっしゃい」

必ず、前の日から行って、一泊してこいと念を押された。

すでに、お墓がある街のシティホテル23階、ダブルベッドの部屋に予約がしてあった。


「うわあ、完全にがんじがらめじゃん・・」


急展開だけれど、勇太はルナに不義理はできないと思っている。

梓もルナに会って、謝罪と断りを入れると言ってくれた。

「ユウ兄ちゃんはルナさんが誰よりも大事だよね。邪魔はしないよ」

梓が儚く笑った。

「心当たりはないけど、ルナさんと運命的な再会だったんだよね」

「まあ、運命といえば、運命のような・・」

「そんな素敵な人とユウ兄ちゃんの間に、ただ従妹っていうだけで私が割込むんだよね。謝りたいの・・」

「・・梓。そんなことはないぞ。お前だって、すごく魅力的な女の子だ。お前のために命をかけてもいい」

うつむく梓がいじましくなって、勇太は肩を抱いた。

その梓・・・。下を向いてちょっと笑ってしまった。

勇太は単純で純粋で、いい人間に変身したと改めて思った。

以前とは違う、新たな『好き』が心に沸いてきた。

心から幸せにしたい。

梓はこれ以上、ルナに対して抜け駆けはしない。

控えめなルナを引き立てて、絶対に疎外感なんて味合わせない。ルナのことをたくさん知る。女同士で仲良くするために努力する。

そうやって勇太が居心地がいい場所を作る。

それが最初の妻に名乗り出た自分の役割だと思っている。

梓は、最終的に勇太の嫁の数は2桁になると考えている。

1度は勇太をフッた臼鳥麗子も、勇太の次の告白を待っているという噂まである。

しかし当面は、ルナと自分の2人で勇太との愛を育もうと思っている。

自分の領域は自宅、外はルナだと決めている。

パラレル高校で自分が勇太に近づくと、カリンや同級生が付いてきてしまう。

だからと、モテる勇太を足かせなしで泳がせておくと、何人の嫁を釣ってくるか分からない。

勇太の癒しになり、なにげに格闘スキルも持つルナは、虫除けの強い駒になる。

◆◆◆

金、土、日と怒涛の時間を過ごした次の月曜日。

勇太は駅でルナと待ち合わせた。

待ち合わせ時間は7時40分。勇太が10分前に到着すると、すでにルナはいた。

ルナは30分前に着いていた。

ルナの周囲が騒がしい。

いくら勇太の自己評価が低くても、学校でも外でも人気者なのだ。

公開プロポーズをされて3日、金曜日、土曜日は勇太のカフェのバイトが終わって会った。

勇太がリーフカフェの合鍵を持ってるから、カフェの控え室で話し込んだ。

キスもたくさんした。

土曜日の昼には梓が訪ねて来て、先に勇太と籍を入れることを謝られた。自分は勇太のプロポーズの返事もしていないのに、律儀に挨拶してくれた。

ハンサム男子1人に複数女子のハーレム登校グループが3組いるが、ルナは自分と勇太に注目が集まっているなと感じている。


「おはようルナ!」
「おはよう勇太君」

「あ~、まだ勇太君って言ってる」

「勇太・・、なんか照れるよ、へへへ」

ルナは、駅で驚いた。とにかく周囲で何人かスマホを構えている。

今日の勇太もワイシャツのボタン2個空けに、バンダナ。うっすら汗をかいて、すごく色気がある。

ルナが困惑して固まっていると、勇太が困った顔になった。

「ごめん、ボタン開けすぎかな。とにかく暑いんだよね」

ボタンの3つ目を外して、パタパタしないでくれとルナは思っている。

ルナは、過去に勇太と愛を育んだ『ルナ』がいたから、自分のラッキーがあると思っている。

それでエロ一色に染まりそうな気持ちを抑えている。けどギリギリだ。

「どうしたルナ、顔が赤いぜ。熱か?」

ぴと、と額に勇太の手を当てられ、なおさら顔が熱くなる、

「そ、そんなことするから暑いんだよ~」
「そんな照れるようなことでもないだろ」

屈託がない。勇太の笑顔に、ルナも癒される。

「ルナ、今日もお昼ごはん誘っていい?」

「もちろんだよ、大歓迎」

「そんな笑顔見せられたら、休み時間もいっちゃうぞ」

「いつでも来て」
「遠慮しないよ。やっぱルナといると楽しい」

パラレルルナに出会えて良かったと思った勇太は、前世の感覚でルナに肩をぶつけた。

「ほれっ」
「きゃっ」

不意を突かれたルナはよろけそうになって、勇太に支えられた。

「おっとっと。わりいルナ」

結果、肩を組まれて、今日もフェロモンの直撃を食らった。ルナは意識が飛びそうになっている。

ここは男女比1対12。貞操観念逆転。

昨日、自分が柔道着を着たままプロポーズされた動画は、再生回数が180万とカウントされていた。

一体、自分の身に何か起きているんだと怖くなってきた。

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