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15 クラスメイトに迷惑かけません

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勇太は職員室で挨拶し、そこまで担任に嫌われていないと思った。

そして愛着があったパラレル佳央理先生を見て、ほっこりした気分になった。

だけど、自分のクラスでは空気になろうと思っている。

勇太の2年3組は1年生のときからクラス替えをしていない。

1年生の6月に別クラスの臼鳥麗子に告白してフラれたパラレル勇太は、同じメンバーに笑われた。

侮られ、シカトされていた。

「希少な男子なのに、情けねえよ、パラレルな俺・・」

辛うじて挨拶をしてくれたのは、パラレル伊集院光輝君と、委員長のパラレル吉田真子さん。

どちらも前世で仲良くしてくれた人のパラレル体だ。

そしてパラレル勇太の記憶が間違いないなら、クラスで勇太が前世で愛着があった顔は2つだけ。

別のクラスメイトはどうでもいい。

勇太自身、クラスメイトに恨みはない。

だけど、記憶から引き出した以上は、シカトされていた相手にいい感情が持てない。

クラスでは伊集院君、吉田さんの2人だけ、挨拶しておけばいい。

学校で1番人気の伊集院君がいるクラス。根暗男に目がいかないのも分かる。

今更、自分がかき乱して、クラスの和をおかしくすべきでないとも思っている。


思い切って、2年3組の教室に入った。

目の前には、週一登校のパラレル勇太と話もしなくなっていた、1年生から同じメンバーのクラスメイト。

彼女らが、月曜日に現れた自分を睨んでいるように見える。

逆に、クラスメイトは困惑している。勇太に見えて、勇太に見えない人物が教室に入ってきた。

普通の体型でシャツのボタンを2つ空け。それ以前に目元に優しさがにじみ出て、妙な色気がある。

勇太の席は後ろの廊下側。3歩で席に付いて座った。

クラス委員長が声をかけた。

メガネの平均的な顔と体型の女子。吉田委員長。

「あの、教室を間違えていませんか・・」

吉田真子は、勇太が登校する金曜日ではないし、勇太かどうか確信が持てなかった。

「おはよう、委員長」

「え、やっぱり坂元君なんだ。おはよう」

勇太は立ち上がった。

「今日から週4登校に切り替えたんだ。今まで挨拶も返さずに申し訳なかった」

パラレル勇太はクラスで浮いていたが、女子では吉田委員長だけは挨拶してくれた。

しかし、パラレル勇太は挨拶を返さなかった。

今、返事を返さなかった理由を、パラレル勇太の記憶から探った。

なんと、委員長が美人でないから。そんなしょ~もない理由だ。

本当に申し訳ないと思った勇太。立ち上がって、深々と頭を下げた。

「本当に今までごめん!」

66キロに痩せた勇太が着ているのは、84キロだったパラレル勇太に合わせて買った大きなシャツ。

ボタンを2つ空けた勇太が頭を下げると、委員長には胸元が空いて中が見える。

ふわっと、いい匂い付き。

むっつりスケベの委員長は真っ赤になって絶句した。勇太の言葉も心地良い。

昨晩、ネットで漁ったエロ画像以上の刺激が目の前にある。

視線はシャツの中。

4回目に頭を下げられたとき、勇太の右乳首が見えた。

「あ、あの、とりあえず座って・・」

勇太は思った。

まだギクシャクしている。委員長だけは、しっかりケアしようと。


他の女子生徒には何も言わない。

自分は根暗勇太の人生を引き継いでいる。勇太の方が異物だと思っている。

ホームルームが始まる。佳央理先生が教室に入ってきた。

「おう、出席を取る前に言っとく。伊集院じゃない方の男子、坂元だ。これから週4で学校に来るそうだ。以上」

じゃない方、である。
「やっぱ、パラレル勇太って佳央理先生に信用されてないな・・」

しかし担任の佳央理先生は、梓が所属するバドミントン部の顧問。

隣のクラスメイトにも2人、バドミントン部員がいると記憶している。

その2人、前世の中学からの同級生。勇太のために千羽鶴を折ってくれた人間だ。

梓に人間関係で迷惑をかけないために、その女生徒に挨拶しに行くかと思った。


思考にふけっていると、佳央理先生に名前を呼ばれていた。
「おい、坂元。何か言いたいことはあるか」

「あ、はい。あの、これから俺・・」
「おい坂元・・」

「はい、なんでしょうか先生」

「教室の片隅でごにょごにょ言うな。前に出ろ」

妙に明るくなった勇太の真意がつかめない佳央理先生。何となく声が気になって、大きな声で喋らせてみようと思った。

勇太は女子生徒の間を通って前に進んだ。

全員が目を見張った。

自分たちの横を通るとき、勇太からそそられる匂いがする。そして、何か格好いい。

先週の金曜日、放課後に階段から落ちた。

デブだった。


事件にならなかったから、学校側も早急に処理した。だから、所用で学校を離れていた佳央理先生は、事故の詳細を知らない。


「これから週4登校をさせてもらいます!」

佳央理だけでなく、全員の腹にずんときた。はっきり言えば濡れた。

女神がいたずらして、声にも細工した効果だ。

佳央理が知る勇太と、今の勇太が結び付かない。

クラス全員が、この勇太と仲良くなれると期待した。

しかし、次の瞬間、しくじりに気づいた。

「これまでも俺の登校日にみんなを不快にさせていたことは自覚しています。迂闊にみなさんに話しかけたりして、ご迷惑はかけません。安心してください」

このクラスは伊集院君を中心にまとまっている。勇太は自分が波風を立てようと思わないから、こう言った。

クラスメイトは、これまで勇太のことをシカトしていた。この言葉を勇太からの拒絶だと受け取った。

みんな沈黙した。

委員長だけがにやけていた。

1時間目はそのまま、佳央理が受け持つ日本史の授業。

佳央理が驚いたのは、勇太の授業態度。

真剣そのもので、うなずきながらノートを取っている。

何が起こったか分からない。


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