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159 VS土魔法使い×2

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イーサイド男爵家の長男ライナーと決着を付けるときが来たようだ。

ノエルが障壁で守るフランソワ夫人、フロマージュちゃんと10人から約30メートル。

私はライナーと妹ちゃんに、10メートルの間隔ではさまれている。

どんな魔法を練っているのか不明。確かなことは、片方は適正Aの土魔法使い。

「魔法を受けてあげる。言い訳させたくないから、これ以上ないくらいのやつで来てよ」

エールを出して、あおった。

「舐めてるな。奴隷にしてやる」
「平民女にエリートの魔法を見せてやるわ」

見下されていた方がいい。

その方が、大魔法を破られたショックは大きいだろう。

ただ、雰囲気がヤバい。死ぬかも。


それはそれで、仕方ない。

勝ったら殺す。なら逆も覚悟しないとね。

「大地に潜む龍よ、顕現し生ける者をのみ込め「マッドドラゴン」!」×2

兄妹でハモると、土の最上位魔法が発動した。

ライナーの左側地面から直径5メートルの龍が飛び出した。

上空にそびえ立ち、首をもたげると私に向かって降りてきた。

「魔力が2人分こもった龍か・・。耐えられるかな」

違った。

呑気なことを言っていると、足元がせり上がった。

妹も同じ龍を発動させていた。狙いは分かった。

2匹の龍は1匹が下から、1匹は上から攻めてきた。

挟む気だ。

「おいおい、捕獲目的にしては強烈すぎ。ミンチになるんじゃない、私」

舐めすぎた。

下から龍の顎に捕らえられながら持ち上げられた。そこに上からもう一匹のぶつかってくる。

私を捕まえられたらよし。ダメでも殺して、恨みを晴らす気だ。

「ユリナ、それは食らっちゃダメ!」

ノエルが叫んでいる。

あんなに強くて剛胆なノエルが、私のことであせっている。

根がお調子者の私は、ノエルに向かって格好良く言ってみた。

「ノエル、安心して。魔物、大召喚!」  

・・だたし死骸。どさどさどさどさ。

収納指輪から、ちょこちょこ集めたノーマルオーク50匹。
肉が多いダチョウ30匹。
耐久性が高いランドドラゴン15匹。

愉快な仲間たち、の死骸の中に私は埋もれた。

ゴンッ。ゴゴガゴガゴゴガガガガガ!

高密度の、鉄以上に固くなった土の塊に上下から潰された。

「『超回復』「等価交換」『超回復』「等価交換」『超回復』「等価交換」」ばちばちばちばち。

ゴゴゴゴゴゴガガガゴゴゴ!

「『超回復』「等価交換」『超回復』「等価交換」『超回復』「等価交換」」ばちばちばちばち。

注ぎ込まれる膨大な魔力と、私の物量の勝負。と思わせている。

「いでで、けど、私の、いで、方が、余裕が・いででで」

余裕がある。こいつらは怖くない。

所詮は、大まかに狙いをつけた魔法攻撃のみ。

私は、「氷のシクル」が怖かった。

『超回復』を応用しても、的確に拘束される氷魔法。

「火のジュリア」が怖かった。

正面から戦っていれば、「等価交換」の材料を出しても、それごと焼かれていた。


ジュリアを倒しに行く前、アルバさんに本気で闘ってもらった。

「スライムパンチ」ありの本気。瞬間的にアルバさんを半身不随にしてもいい。

そう言われて戦った。

結果は予想通り。流星錘もトレントの枝も何も通じなかった。

収納指輪から出した有機物も、使う前に弾かれた。

なすすべがなかった。

「負け」と決まっていた80センチまで、私は縮んだ。

最近はノエルまで現れた。反則スキルのフルコンボでも、私が敵わない人間が10人以上に増えている。

だけど、ライナーと妹ちゃんは、そっち側じゃない。

彼らの魔法は派手。

だけどミンチになろうが、私の周りにはランドドラゴンと愉快な仲間たちがいる。

痛みを感じた瞬間に『超回復』を唱える。

「破壊的絶対領域」

とてつもない固さの土の龍を私の細い手足が砕く。
土の龍は、ライナー兄妹から魔力を吸い上げて、体を修復する。


3分間の膠着状態に持ち込んだ。それが私の戦い方だ。

「追加のスライムパンチ」

上下から、攻撃してくる龍の顎が四散し、外が見えた。

龍は復活。

破損した龍を修復するために、さらに魔力を注ぎ込まれるだろう。

体に当たる肉がつぶれ、もはやオークなのかダチョウなのか分からない。

魔法使いが操る土の龍は、万全なら30分は動けるらしい。

万全なら、だ・・

今、1秒ごとに多くの魔力を注がせ、龍を修復させている。

例えライナーのMP総量が1200あったとしても、限界は近い。

案の定、龍の固さが変質した。固いけど緩くなった。

「ここだ。スライムパンチ×10」

ごっ、ごっ、ごっ、ごっ。ぼこんっ!。

周りの肉を「等価交換」で使いながら、土の龍の体内を内側から崩していった。

最後のスライムパンチを使ったとき、外に出ることができた。


「う、うそだろう。魔法適正Aの2人で力を合わせた大技だぞ」

「いや大したもんだよ。無防備で食らってたら、かなりやばかった。だけどね・・」

私は魔力が欠乏し始めた妹ちゃんに近付いた。

「私の倒しかたとしては、間違ってたんだよね」

話してる間も悪あがきのストーンバレットが飛んできた。

『超回復』『超回復』『超回復』ぱーーーん。

ビシビシ。「ぎゃあっ!」

弾き返したバレットが妹ちゃんに当たった。腹と胸にも食らっている。

腹から血が吹き出した。もう放っておいていい。


「さてライナー、まだやる?」

「く、くそう。あれだけの魔法を防ぐとは・・」

「防いでないわ。食らっても、死ななかっただけ」

お決まりのように、ライナーが背を向けて逃げようとした。

だけど、それはノエルが許さない。素早くライナーの退路を防いでいた。

挟み撃ちだ。

「ユリナ、こいつは拘束するのも危険よ」

「どうする?」

「仲良しのフランソワ夫人、可愛がっているフロマージュ。その2人に害をなすものを放置できない」

そうだ。見た目は若くてもノエルは80歳。フランソワ夫人との付き合いも長い。

静かに怒っている。

ノエルは、魔力切れが近いライナーを殺そうとしている。

「じゃあ、とどめはノエルがお願い」

私はライナーにナイフを振りかざして走った。

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