ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

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129 物理で死なない私だけど

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かつて住んでたカナワの街の近く。

マヤという女の子をオークから助けた。

彼女は私より3歳年下の16歳。Dランク冒険者。

そして私が仮メンバーのまま抜けた「暁の光」の一員。

日は暮れたが、まだ9時間くらいカナワの街の門は開かない。

マヤを暗がりで放り出す訳にもいかない。カナワの城門近くで塀にもたれかかって、2人で休んでいる。

「ありがとうございます。あの、お名前は」

「・・ユリナだよ。ここから離れたオルシマの街で冒険者をやってる」

「ユ、ユリナというんですか」

動揺している。私のことをリュウ達から聞いている。

「失礼なことを聞くかもしれませんが、もしかして、10か月くらい前までリュウちゃんと一緒だったという・・」

「私のことだよ。あなたは仮メンバーの私が抜けたあと、「暁の光」に入ったんだね」

私はエールを飲みながら話を聞いていた。

お腹がすいていた彼女にドラゴンパピー肉をふるまって、すごく沢山の話をした。

かつてリュウが好きだった私。
ずっとリュウを好きなマヤ。

話てて、何だか安心した。

「あれ、ミシェルとミールを見たときのように、胸が締め付けられない。むしろマヤの恋を応援したいような・・」

彼女は16歳。

「暁の光」の3人の1歳年下の幼なじみで身体強化レベル2のスキル持ち。

半年前に3人を頼ってカナワに来て冒険者になったそうだ。

いや、リュウを追いかけて来た。

「それで、なんで夜の森から出てきたの。それも1人で」

自己鍛練だそうだ。

育った村で鍛え、オーグ、ダリア、リュウのパーティーに入れてもらった。

しかし、3人とのレベル差が大きかった。

「へえ、何でだろ」
「あの・・すごく強いユリナさんの恩恵でダンジョンで稼げた上に、別れ際に高価な装備や収納指輪をもらって・・」

犯人は、私みたいだ。

才能ある3人は、私が渡した装備を有効活用できた。

魔物を倒しまくって、強くなった。レベルが45~47くらいある。

「あちゃ、私のせいで3人と差がついたのか。ごめん」

「言い方が悪かったです。私の方こそごめんなさい。ユリナさんに会えたら、感謝の気持ちを伝えようと思ってたんです」

「感謝?」

「ユリナさんの恩恵は私も受けているんです。ダリアさんの前の装備を無償で借りて、強い3人にくっついてるだけでお金が稼げてます」

「あ、そうなんだ、良かった」

彼女も、村に残してきた弟妹のため、家に送金できてるという。

それを聞いて安心した。

けど、彼女は3人とのレベル差を埋めるため、今日は個人鍛練。

狩りをしているうちに、日が暮れてしまった。

「無理したらダメ。リュウが心配するよ」

「あっ、あの・・」

マヤは「リュウ」と言ったとき、分かりやすいくらい反応した。

たき火に照らされた頬が、とても綺麗に輝いている。

私に優しくしてくれたリュウ。きっと、子供の頃から優しかったんだろうね。

マヤもきっと大好きなんだろう。

「さっき見て実感しましたけど、ユリナさんはすごく強いんですよね」

「完全にスキル頼みだけどね」

「ダリアさんに聞いたんです。ダンジョンで罠にはまってモンスターハウスに閉じ込められたとき、100匹の魔物を1人で制圧したって」

「ん? それと、今日の無茶な行動が関係あるのかな」

「ユリナさんって、リュウちゃんを守ったんですよね」

あの日の話か・・

「今度は、私があの人を助けたいんです。そのために強くなりたいんです」

やり方は無茶。

そうか、そんでも好きな人のために決意したのか。

「だけど、ユリナさんが帰ってきたから、もう私はお役御免なんですね」

「なんで、そうなるの?」

「だって、ギルドで起こった壮絶な愛のドラマは、カナワの街のみんなが知ってますよ」

「は、誰かが言いふらしてるの?」

「いえ、吟遊詩人です」

「げ、うそ!」

リュウとお別れした日、事が起こった冒険者ギルドに1人の吟遊詩人がいたらしい。

そこで見た物に脚色を加えて活劇調にしてウケてるらしい。

至近距離のファイアランスから命を捨てる覚悟で彼女を守った男。

そして領主に追われることを承知で、隠していたスキルを解放して愛する男を救った女。

「最後は悪人を制圧した、美少女の話です」

「け、経緯は間違ってないけど・・。見ての通りに美少女じゃないよ、私」

「素敵な話だと思ってました」

泣きそう、マヤ。

「ただ最近、その話が実話だって知ったんです」

「あ、そうなんだ」

「それも男の人がリュウちゃんで、女の人が臨時メンバーだった、ユリナ、という人で・・」

ちょい、お待ち、と言いたい。

「そしたら、私なんかかなわないって・・」

「ま、ま、ま、まさか、吟遊詩人の活劇はセリフつきじゃないよね」

「・・ありますよ。ユリナさんが覚悟してスキルを使うとき、リュウちゃんの頬に手を当てて『馬鹿だけど大好きだよ』って」

「ふぎゅぅえぅぇ~~」

私は5分間くらいフリーズしていたと思う。記憶がない。

顔面を魔物に潰されたときより、死に近付いていた。

「恥ずい、あまりにも恥ずかしい! 」

リュウに会いたいけど、恥ずい。

知り合いもいるカナワの街に入れねえ!

マヤと2人して泣いた。違う意味で。

それはともかく・・

マヤがリュウのことを思う気持ちは、分かった。

この子から受ける感じでは、リュウとは仲良しの域。そこから踏み込めていないのだろう。

だけど私に恋愛相談は無理。

「物理的な相談」なら乗れる。

「マヤ、ひとまずはリュウにレベルが追い付けばいいのかな」

「リュウちゃんが好きになってくれるか分からないけど、一緒に並んで戦えるようになりたいです・・」

「私が乗ってやれるのは、物理的な相談だけなんだよね」

「どういうことでしょうか」

「リュウを愛する女が悩んでるのは見逃せない」

強化したいなら、しばらくパーティーを抜けるように言った。

ダンジョンに行く。

カナワの領主、吟遊詩人絡みで、街に入りたくない。

それもある。

「お願いします。リュウちゃんの役に立てるように、強くして下さい!」

ためらうかと思ったが、決断は早かった。

彼女は、私の恩恵を受けた「暁の光」の3人を見ている。

「ユリナ式レベリング塾を始めようかね」

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