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125 アリサの妹と追いかけっこ

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イーサイド男爵家の次女メカリス。プラス兵士30人と戦う。

つまり、盗賊のようなもの。

私は光魔法ジャッジメントの熱線を浴びた。

その傷をミシェルの体と同時に、瞬時に治している。

見る人が見れば、何が起こったか分かる。

メカリスも、自分の欲のため、私を殺さず捕まえに来た。

兵士30人は20人が私、10人がミール&ミシェルに向かってる。

私の方は例によって、兵士達は剣でなく素手か道具。
革ひも、荒縄、鉄のさすまたといったところ。

私の武器はナイフを選んだ。

「ミールもミシェルも、けがをしたら急いで呼んで」
「任せてユリナ様。こっちは大丈夫だよ」

言いながら、ミールが投げナイフ使用。早くも戦闘不能にしている。

私は両手にナイフを持った。敵兵が持っている捕縛用具に、同じ物で対抗する気はない。

男爵家次女に向かって走った。小細工なし。

すると前に2人が立ちふさがる。左側から兵士3が飛ばし、革ひもに首を巻かれた。

「捕まえたわ。さあ、みんなで押さえ込みなさい」

「甘いな、ほんと」

私はナイフで自分の腹を引き裂いた。

それも猟奇的に映るよう、笑いながらザクザクと。

ほんとは、かなり痛い。

「なっ」
「いきなり自殺か」

「超回復&等価交換」ばちっ。

『超回復』で5センチ縮んだ体を治す材料は、革ひもを伝って兵士3の右手から頂いた。
「うっ、あぐぐ」

驚いてひもを緩め自分の手を見た兵士3に向かって走った。

ナイフの柄で頭を乱打した。

そのまま倒れた兵士3に馬乗りになり、今度は素手で乱打。

その間に完全に包囲された。

「今よ、ひもで絡めてユリナを捕獲して!」

投げられた捕縛用具で右手、首、両足を絡め取られた。

だけど甘い。私に接触しているのは革ひもと荒縄。

要するに「有機物」だ。それに私の左手も空いている。

ざくっ。

ナイフを出して、自分の首を刺しまくる。『超回復』、等価交換を唱え続けた。

「うわっ、何が起こった。俺の手が・・」

5回目。私を捕まえたつもりで、革ひもの端を持つ兵士1が声を出した。

あえて兵士1に手をかざして言ってみた。

「変異気功術よ」

自分でも何だそりゃ?だけど効果はあった。

「変異?おれの左手が干からびてる。そうだ、ポーション」

待ってあげた。

ポーションや回復魔法を使っても、等価交換の損傷は治せない。

検証済み。

「治らない・・。どうなってんだ」

「イーサイド家に加担したから、名もなき神が呪ったのよ」

私を囲んだ残り15人。ミールと対峙して、まだ頑張ってる兵士2人が私の言葉に反応した。

「や、やっぱり噂は本当じゃねえか。あの女、敵とみなした人間には悪魔になるって・・。オルシマの知り合いに聞いたんだ」

「そうだ。報酬に釣られたが、オーガ討伐よりやべえ」

3人ほど逃げた。ミールが追ったから、逃亡は無理。

ミールって、本当に可愛くて有能だな。

残った盗賊兵士も浮き足だっている。

兵士8が気丈にも剣を抜いた。ちょうどいい見せしめができた。

私は兵士8に素手で向かって、完全にタイマンの形になった。

基礎能力の差は歴然としており、あっさり斬られそた。

左肩に5センチほどの深さで剣を食らったときだ。

「金剛気功」『超回復』

ばちぃ。「うわっ」。鎖かたびら1枚の私は、剣を弾いた。

兵士8はのけぞった。ここでミールと訓練した技を出す。

ごんっ。兵士8の鍛え挙げた腹筋に私のへなちょこパンチを当てた。

で、私の手首が内側に折れ曲がった。

「超回復&小規模破壊的絶対領域」

どむっ。「ぐ・・・」

折れ曲がった私の右拳、瞬時に前を向く。

すると、瞬時に兵士8のお腹が5センチほど横移動。

深刻なダメージにはならないが、内臓を揺さぶられる不快感。相手の脚が止まる。

それを両腕で繰り返す。

気功術にある「浸透頸」のようなもの。
私のオリジナルだ。

成功率3割。そこは低い。

乱発できる。正しい予備動作が必要ない。自分の強みを活かせる。

例によって斬られているのは私。

なのに、5分の攻防の末、兵士8は腹を押さえて倒れた。

健闘をたたえ、「等価交換」で後遺症を残すことは控えた。

メカリスの方を向くと、もう逃げようとしていた。

手下も彼女を守ろうとしていない。

「逃げるなら早くスタートすべきだったわね」

目が合った。恐怖の色が浮かんでる。

「無駄。視界に入っている限り逃がさな」

彼女も速い。

レベルが50あるとして、土魔法適正BならHPは最低でも600越え。それに準じたスピード。

ミールが念のため位置を把握してくれたが、手を出さないように言っておいた。

メカリスを追いかけた。

最初、離されていったが、あちらも2~3キロ程度の追いかけっこと思っただろう。

5分も走ると少しずつペースが落ちた。

私は時速42キロをキープしてオーク肉スタンバイ。

5秒ごとに「超回復走行」を実行している。


「はあっ、はあっ。低スペックなのに、なんで振り払えないの」

「ほら、逃げて。私に追い付かれたらボコボコに殴られるわよ」

「舐めるな」

彼女は私に向き直って「ストーンジャベリン」を放った。

土の槍は的確に私の胸に向かって飛んでける。ま、悠長に食らう気はない。

刺さった瞬間に『超回復』を唱えた。

魔法の槍は拡散して飛び散り、メカリスの足元にも1本が突き刺さった。

「・・うそ」

私はナイフを右手に持って、再びメカリスを追い始めた。

「いやあああ」

無言で追った。やつは必死に逃げた。

そして30分。

アリサに似てるだけの、醜悪な頬を切りつけた。

進行方向を塞ぐと、今度は来た方向に逃げ始めた。

3分後に追い付いて、口に切りつけた。

もう、アリサと同じ顔で嫌らしい笑いを浮かべさせない。

むかつく目を殴って、アリサと違う形に腫らした。


アリサと同じ色の髪の毛を切った。

そして奴は、とうとう倒れ込んだ。

「はあっ、はあっ、うげっ、うげえ」

「今回は逃がしてあげる。だけど、あなたがアリサに似てるだけでむかつく」

「はあっ、はあっ。そんな」

「私は今まで適当に構わず回復スキルを使ってきたけど、保留するわ」

後悔しろ。

「イーサイド男爵家がアリサを連れてきて私の前で謝罪するまで、貴族は治さない。それを言う」

「なによそれ・・。私達が恨まれるじゃない」

私は返事をせずに、その場を去った。



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