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114 ミールと初のダンジョン
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サルバさんが動いてくれたおかげで、経営シロウトの私も「同胞」である魔力ゼロの人達に働く場を提供できる。思いついた瞬間からわずか1時間のスピード解決である。
サーラ、カミーラ、タルモ、私の4人は思わずサルバさんに抱きついて、迷惑をかけてしまった。
冒険者ランク降格によりギルドの酒場で酒が飲みにくくなった私も、大きな顔をして酒が飲める。運営は超有能なサルバさんに丸投げなので、私は平常運転でいいみたいだ。
◆◆◆
降格から2ヶ月か過ぎて、奉仕作業の期間が終わった。空いた時間合で家庭の事情などで稼がなくてはならない、11~14歳の子を重点的に鍛えた。
「1年もたてば、同じような子供も現れる。ユリナ式レベリンク教室は、不定期だけど続けよう」
「私もやるからね、ユリナ様」
今日からいきなり特級ダンジョンに狩り場を移す。
今回はペアで、ミールと一緒だ。彼女のリクエストで、キセの街の南東にあるダンジョンでドラゴンパピーの肉を仕入れるのだ。
ミールも私の奉仕活動に付き合ううちに、冒険者の妹分や弟分ができた。特に慕ってくれる3人にいいものを食べさせて、ちょっといいとこを見せたいらしい。
2人で活動するのは私がBランクに上がってからと約束したが、私の方が昇格どころか、降格してしまった。
正式にパーティーを組むのは早くても10か月後。だから、時たま一緒にクエストを受けることにした。
「ユリナ様、やっと一緒に活動できるね」
「長く待たせたよね」
「1800年も待ったから、今さらだよ」
「1800年もごめんね。て、なにそれ」
「へへへ。ただ、頭に浮かんだだけ」
「私も、不思議だね」
なぜだが、すんなり頭に入ってきた。もしかしたら『超回復』をくれた『』にまつわる何かが、関係するのかも知れない。
「超回復走行」で6時間走って、オルシマから250キロ放れたドラゴンダンジョン近くの滝に着いた。
後から知ったが属性ドラゴンの討伐において、難度が高いのは肉の捕獲。私はたまたま「超回復&等価交換コンボ」で捕まえて、極上の肉を得ていたようだ。
「ドラゴンパピー自体は討伐難度は無茶高ではないんだよね」
「火属性なら水属性スキルで倒せるよ、ユリナ様。だけど、それだと肉と鱗が劣化するらしいよ」
私の無属性な倒し方が肉の保存方法にマッチしたらしい。
◆
ミールってやっばりすごい。急流の中にあるダンジョン入り口にニンジャ技「水遁」で難なく侵入。私が溺れながら突入するのと違いがある。
15分して1匹目の火属性パピーが出た。ミールが獲物の首に革ひもを投げて巻き付け、注意を反らす。そこに私が接近して肉弾戦。
火を浴びた体を治すのに『超回復』。体が縮んでパピーの頭に等価交換。獲物の動きが悪くなった頃に、ミールが首を刺して討伐完了だ。
サクサクと39匹を捕まえながら5階に降りてギルド情報通りにセーフティゾーンを発見した。
私は『超回復』を頻繁に使うので、身長がめまぐるしく変わる。今は5階のランドドラゴンを私が囮になってミールが倒したばかり。私の身長は120センチに縮んでいる。ミールはオルシマで過ごすようになって身長が伸びてきて、155センチ。今限定で大きさが逆転している。
私はミールにだっこされた。
「や~ん、ユリナ様かわいい。普段はこのままでいようよ」
「馬鹿いってんじゃないの。けど、この姿を見ても驚かないんだね」
「スマトラ様達も何も言わないけど、ユリナ様が人を助けたり、戦ったりしたあとに体が縮むのは知ってると思うよ」
「やっぱり・・」
「そんで、ユリナ様が自分の血肉を人に与えて傷を治してくれているから、感謝の念も深いんだよ」
「あんたも?」
「私は、それだけじゃないかな。待ってた人に会えた感じだった」
「ミールもなんだ。私も初対面のとき怪我させたけど、顔を見てから普通に受け入れられた。どっかで会ったことあるのかな」
会話の内容はともかく、ミールが私を離してくれない。パワーが違いすぎて抵抗もできない。
私はレベル62になっているがHP186。ミールはレベル40でもHP600に準じたステータスに「ニンジャ」のスピード補正まである。だっこされたまま眠ったが、久々の人肌は心地よかった。
◆
さて、このダンジョンは暫定で特級。ギルド情報では6階から火、水、風、土属性のドラゴンパピーが属性ランダムに2匹ずつ出現するとある。出てくる魔物は1ー3階と同じでも、サイズは1・8メートルから一回りずつ大きくなって、9階では2・6メートルになる。
ミールには『超回復』で他人の体力も全快にできることも明かしている。思い切って今回は10階フロアボスまで倒して、11階転移装置から一度は帰還する予定。6、7、8階はスルーして、9階で2・6メートルのドラゴンパピーを狙うのだ。
これから私と連携する上で、ミールに厳命することがある。だけど、私のことを大切に思ってくれるミールに酷な課題なのだ。
一言で言えば「私を守るな」だ。
私は致命傷を負っても『超回復』で復活する。だから、ミールには私がピンチになっても自分の身を一番に動いてもらう。ミールは強くても、致命傷を負えば終わりなのだ。私は上級ダンジョンを一人で動いて確信した。『超回復』から派生する「等価交換」「破壊的絶対領域」「スライムパンチ」を使える限り、対魔物では無敵に違い。
9階に降りた。
さっそく2・6メートルの水属性ドラゴンパピーが2体現れた。
「ミール、一匹ずつ倒すよ。自分の敵に集中して」
「分かった」
しかし10分後・・・
「ユリナ様!」
「こっちは問題ない。来ちゃダメ!」
「分かってるけど・・」
同じ水のドラゴンパピーでも、レベルと大きさが上がった敵に、私達は簡単に傷を与えられない。相手を疲れさせる作戦に出たが、2人の内容が違いすぎる。
ミールは石つぶてを出して、魔法を使わせて動かせて敵の体力を削っている。素早く敵の攻撃を避けて無傷だ。
私は正面から走って行って激流の水魔法で足を止められ、爪の一撃を頭から食らっている。わずか10分の間に4回は致命傷を負っている。
疲れた敵の首に革ひもを巻いて「等価交換」で一匹撃破。ミールの方の個体の首に革ひもを巻いて、こちらの気をそらせてミールが止め。手順がちょっと面倒だが、肉がおいしい状態で捕まえられる。
「ユリナ様、心臓に悪いよ」
「これが基本ステータスが低い私のスタンダードなんだよね」
そんな会話を繰り返しながら、計32匹の獲物を確保して10階に降りた。
サーラ、カミーラ、タルモ、私の4人は思わずサルバさんに抱きついて、迷惑をかけてしまった。
冒険者ランク降格によりギルドの酒場で酒が飲みにくくなった私も、大きな顔をして酒が飲める。運営は超有能なサルバさんに丸投げなので、私は平常運転でいいみたいだ。
◆◆◆
降格から2ヶ月か過ぎて、奉仕作業の期間が終わった。空いた時間合で家庭の事情などで稼がなくてはならない、11~14歳の子を重点的に鍛えた。
「1年もたてば、同じような子供も現れる。ユリナ式レベリンク教室は、不定期だけど続けよう」
「私もやるからね、ユリナ様」
今日からいきなり特級ダンジョンに狩り場を移す。
今回はペアで、ミールと一緒だ。彼女のリクエストで、キセの街の南東にあるダンジョンでドラゴンパピーの肉を仕入れるのだ。
ミールも私の奉仕活動に付き合ううちに、冒険者の妹分や弟分ができた。特に慕ってくれる3人にいいものを食べさせて、ちょっといいとこを見せたいらしい。
2人で活動するのは私がBランクに上がってからと約束したが、私の方が昇格どころか、降格してしまった。
正式にパーティーを組むのは早くても10か月後。だから、時たま一緒にクエストを受けることにした。
「ユリナ様、やっと一緒に活動できるね」
「長く待たせたよね」
「1800年も待ったから、今さらだよ」
「1800年もごめんね。て、なにそれ」
「へへへ。ただ、頭に浮かんだだけ」
「私も、不思議だね」
なぜだが、すんなり頭に入ってきた。もしかしたら『超回復』をくれた『』にまつわる何かが、関係するのかも知れない。
「超回復走行」で6時間走って、オルシマから250キロ放れたドラゴンダンジョン近くの滝に着いた。
後から知ったが属性ドラゴンの討伐において、難度が高いのは肉の捕獲。私はたまたま「超回復&等価交換コンボ」で捕まえて、極上の肉を得ていたようだ。
「ドラゴンパピー自体は討伐難度は無茶高ではないんだよね」
「火属性なら水属性スキルで倒せるよ、ユリナ様。だけど、それだと肉と鱗が劣化するらしいよ」
私の無属性な倒し方が肉の保存方法にマッチしたらしい。
◆
ミールってやっばりすごい。急流の中にあるダンジョン入り口にニンジャ技「水遁」で難なく侵入。私が溺れながら突入するのと違いがある。
15分して1匹目の火属性パピーが出た。ミールが獲物の首に革ひもを投げて巻き付け、注意を反らす。そこに私が接近して肉弾戦。
火を浴びた体を治すのに『超回復』。体が縮んでパピーの頭に等価交換。獲物の動きが悪くなった頃に、ミールが首を刺して討伐完了だ。
サクサクと39匹を捕まえながら5階に降りてギルド情報通りにセーフティゾーンを発見した。
私は『超回復』を頻繁に使うので、身長がめまぐるしく変わる。今は5階のランドドラゴンを私が囮になってミールが倒したばかり。私の身長は120センチに縮んでいる。ミールはオルシマで過ごすようになって身長が伸びてきて、155センチ。今限定で大きさが逆転している。
私はミールにだっこされた。
「や~ん、ユリナ様かわいい。普段はこのままでいようよ」
「馬鹿いってんじゃないの。けど、この姿を見ても驚かないんだね」
「スマトラ様達も何も言わないけど、ユリナ様が人を助けたり、戦ったりしたあとに体が縮むのは知ってると思うよ」
「やっぱり・・」
「そんで、ユリナ様が自分の血肉を人に与えて傷を治してくれているから、感謝の念も深いんだよ」
「あんたも?」
「私は、それだけじゃないかな。待ってた人に会えた感じだった」
「ミールもなんだ。私も初対面のとき怪我させたけど、顔を見てから普通に受け入れられた。どっかで会ったことあるのかな」
会話の内容はともかく、ミールが私を離してくれない。パワーが違いすぎて抵抗もできない。
私はレベル62になっているがHP186。ミールはレベル40でもHP600に準じたステータスに「ニンジャ」のスピード補正まである。だっこされたまま眠ったが、久々の人肌は心地よかった。
◆
さて、このダンジョンは暫定で特級。ギルド情報では6階から火、水、風、土属性のドラゴンパピーが属性ランダムに2匹ずつ出現するとある。出てくる魔物は1ー3階と同じでも、サイズは1・8メートルから一回りずつ大きくなって、9階では2・6メートルになる。
ミールには『超回復』で他人の体力も全快にできることも明かしている。思い切って今回は10階フロアボスまで倒して、11階転移装置から一度は帰還する予定。6、7、8階はスルーして、9階で2・6メートルのドラゴンパピーを狙うのだ。
これから私と連携する上で、ミールに厳命することがある。だけど、私のことを大切に思ってくれるミールに酷な課題なのだ。
一言で言えば「私を守るな」だ。
私は致命傷を負っても『超回復』で復活する。だから、ミールには私がピンチになっても自分の身を一番に動いてもらう。ミールは強くても、致命傷を負えば終わりなのだ。私は上級ダンジョンを一人で動いて確信した。『超回復』から派生する「等価交換」「破壊的絶対領域」「スライムパンチ」を使える限り、対魔物では無敵に違い。
9階に降りた。
さっそく2・6メートルの水属性ドラゴンパピーが2体現れた。
「ミール、一匹ずつ倒すよ。自分の敵に集中して」
「分かった」
しかし10分後・・・
「ユリナ様!」
「こっちは問題ない。来ちゃダメ!」
「分かってるけど・・」
同じ水のドラゴンパピーでも、レベルと大きさが上がった敵に、私達は簡単に傷を与えられない。相手を疲れさせる作戦に出たが、2人の内容が違いすぎる。
ミールは石つぶてを出して、魔法を使わせて動かせて敵の体力を削っている。素早く敵の攻撃を避けて無傷だ。
私は正面から走って行って激流の水魔法で足を止められ、爪の一撃を頭から食らっている。わずか10分の間に4回は致命傷を負っている。
疲れた敵の首に革ひもを巻いて「等価交換」で一匹撃破。ミールの方の個体の首に革ひもを巻いて、こちらの気をそらせてミールが止め。手順がちょっと面倒だが、肉がおいしい状態で捕まえられる。
「ユリナ様、心臓に悪いよ」
「これが基本ステータスが低い私のスタンダードなんだよね」
そんな会話を繰り返しながら、計32匹の獲物を確保して10階に降りた。
応援ありがとうございます!
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