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112 私らしくない提案
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初級ダンジョン15階で倒れていた3人を地上に送り届けた。
3人は、かつての私と同じスキルなし。「劣等人」だ。
だけど、ダンジョン15階から11階転移装置に向かうときも、外に出て帰る道中も楽しそうだった。1年前まで私のすべてだったのに、私がもう戻れない世界だ。
「あのユリナ・・」
「ん?」
サーラ、カミーラ、タルモが次々と話し出した。
「治療費と、助けてもらった謝礼のことだけど・・」
「今、払えるほど金がないんだよね、ぶっちゃけ」
「必ず払うので、待ってほしいの」
「あ、それは・・」
いらないと言おうとして、私の中の悪魔がささやいた。私は彼女らと縁が切れるのか嫌なのだろう。
「お金はいいから相談に乗って」
「そんなんでいいの?」
「100万ゴールドとか言われるかと思ったよ」
「えへへ、ちょっとビビった」
「3人の今後の予定は?」
「別にないけど」
「あるよサーラ、お金を稼がないと」
「そうだ。今回のダンジョン行きが稼ぎにならなかったから、明日のパン代を何とかしないと。今から薬草採取だよ」
ここで変な提案はできないが、こういうことも想定して子供2人の分も含めてレベル高めラビットを24匹捕まえてある。
「みんなのパン代はあるよ。話したよね。ダンジョンの帰り道にラビットを捕まえたでしょ。割り当ては1人4匹だよ」
「え、ほとんどユリナがつかまえたよね」
「子供を引率するときの約束で、獲った獲物は均等割りって決めてるの。受け取ってくれないと、子供達ももらえなくなるでしょ」
「それは聞いたけどさ・・」
「ありがたくもらおうよ、カミーラ」
「だねサーラ。ありがとう、ユリナ」
「受け取ってくれて良かった。ちょっと付き合って」
◆◆
ギルドを出て、近くの食堂に3人を強引に連れて行って乾杯した。食べ物も山盛り。
「偶然に」サルバさんがいて、一緒に飲むことにした。恐らく、お願いをする流れになる。
乾杯をしながら、頭は回っている。私は寄付なんかをしまくっているが、まだ2000万ゴールドくらい持っている。必要なら、サルバさんたちの主人スマトラさんの力も借りよう。
「さて」
かつての私達4人のような、サーラ、カミーラ、タルモの3人にどう思われるか不安だけど、聞いておきたいことがある。
「私の経歴はギルドで公開している分は知ってる?」
「かなり有名人だもん」
「お酒好きで、強力な攻撃力と回復力を持つ気功術の使い手」
「レベルは高いけど、私達と同じ劣等人を証明するかのような、低いステータス」
「その通りなの。それで、あなた達と帰ってきながら考えたの。かつての私達も仲間4人で一緒に食堂なんて夢を持ってた」
「私達の屋台と似てるね」
「うん、スキルゼロでやれることを考えると、同じ方向に向くのかな」
「だけど、やる気はあっても開業資金も貯まらずに生活がきつかった。料理を勉強する暇もなかった。それを思い出して、戦闘力がない人の受け皿を作るのはどうかなって」
「受け皿ですか」
サルバさんが話に入ってくれた。
「うん。屋台を出している市場横のようなスペースを室内に作るの。イメージは観覧席がないギルドの訓練場」
「なるほど。室内で壁の周りに店を並べ、共有のテーブルと椅子を並べれば可能ですね。すでに南方の街で参考にできそうな形がありますし」
「それなら、一か所で色んなものが食べられる」
「お酒も飲めるよね」
「ユリナがやるの?」
「私は人助けを条件に「名もなき神」からスキルを借りたの。だから閃きを話してみたけど、私が経営をして儲けるのは違うんだよね」
「面白い神様だね」
「それで、場所と資金を提供するから、あなた達が主導して屋台村のようなやつをやらない?」
「え、私達はみんな農村とか狩猟の村出身だから、経営とか分からないよ」
「それでしたら、私がお手伝いしますよ」
「サルバさん、いい?」
「はい。ユリナ様に受けた恩も返していませんし、スマトラ様も喜んで協力してくれると思います」
「へへ。最初からサルバさん達を頼るつもりだったけどね。本当に変な負担にならない?」
「もちろん。前々から興味があったんです。善は急げです、では」
サルバさんが、幻影のように消えた。
「3人ともどうかな。初期メンバーとして、失敗してもいいからやって欲しいんだけど」
「私達で大丈夫かな」
「嬉しい申し出だけど、そこまでして、ユリナにメリットはあるの」
「そうだよ。お金もあるんなら、前の仲間を呼んでやればいいよ。私たちも参加させて欲しいけどね」
「私か・・。私はかつての仲間3人との目標を誰かに達成してもらいたいかな」
「なら、なおさら」
「でも、もう無理なの」
「え」
「私が今の強力スキルを得るきっかけは、仲間とともに死にかけたことなの」
「じゃあ、もしかして」
「そう、料理も下手で取り柄もない私だけが生き残り、仲間3人は目の前で死んだ。いえ、殺された」
「・・・」
「ごめん、かつての自分達のような3人がまぶしかったの。友達の身代わりみたいに思っててごめん」
涙声になった私を3人がなぐさめてくれた。彼女達もダンジョンで遭難しかけて街で仕事を探したかったときだし、結局は受けてくれることになった。
サルバさんがたちまち帰ってきて、早くも物件候補をピックアップしてくれた。
彼女らには「冒険者への指名依頼」という形を取り、経費別の月に50万ゴールドで契約した。
体力面の強化も考えて、もう少し仲良くなれたらオークダンジョンで『超回復』を利用した「人でなし肉壁アタック」をやる。最低でもレベル50のHP150になれば、中級ダンジョン22階のビッグウズラくらいなら自分で獲りに行けるはずだ。
予想以上にサルバさんが協力してくれるし、うまくいきそうな予感がある。
3人は、かつての私と同じスキルなし。「劣等人」だ。
だけど、ダンジョン15階から11階転移装置に向かうときも、外に出て帰る道中も楽しそうだった。1年前まで私のすべてだったのに、私がもう戻れない世界だ。
「あのユリナ・・」
「ん?」
サーラ、カミーラ、タルモが次々と話し出した。
「治療費と、助けてもらった謝礼のことだけど・・」
「今、払えるほど金がないんだよね、ぶっちゃけ」
「必ず払うので、待ってほしいの」
「あ、それは・・」
いらないと言おうとして、私の中の悪魔がささやいた。私は彼女らと縁が切れるのか嫌なのだろう。
「お金はいいから相談に乗って」
「そんなんでいいの?」
「100万ゴールドとか言われるかと思ったよ」
「えへへ、ちょっとビビった」
「3人の今後の予定は?」
「別にないけど」
「あるよサーラ、お金を稼がないと」
「そうだ。今回のダンジョン行きが稼ぎにならなかったから、明日のパン代を何とかしないと。今から薬草採取だよ」
ここで変な提案はできないが、こういうことも想定して子供2人の分も含めてレベル高めラビットを24匹捕まえてある。
「みんなのパン代はあるよ。話したよね。ダンジョンの帰り道にラビットを捕まえたでしょ。割り当ては1人4匹だよ」
「え、ほとんどユリナがつかまえたよね」
「子供を引率するときの約束で、獲った獲物は均等割りって決めてるの。受け取ってくれないと、子供達ももらえなくなるでしょ」
「それは聞いたけどさ・・」
「ありがたくもらおうよ、カミーラ」
「だねサーラ。ありがとう、ユリナ」
「受け取ってくれて良かった。ちょっと付き合って」
◆◆
ギルドを出て、近くの食堂に3人を強引に連れて行って乾杯した。食べ物も山盛り。
「偶然に」サルバさんがいて、一緒に飲むことにした。恐らく、お願いをする流れになる。
乾杯をしながら、頭は回っている。私は寄付なんかをしまくっているが、まだ2000万ゴールドくらい持っている。必要なら、サルバさんたちの主人スマトラさんの力も借りよう。
「さて」
かつての私達4人のような、サーラ、カミーラ、タルモの3人にどう思われるか不安だけど、聞いておきたいことがある。
「私の経歴はギルドで公開している分は知ってる?」
「かなり有名人だもん」
「お酒好きで、強力な攻撃力と回復力を持つ気功術の使い手」
「レベルは高いけど、私達と同じ劣等人を証明するかのような、低いステータス」
「その通りなの。それで、あなた達と帰ってきながら考えたの。かつての私達も仲間4人で一緒に食堂なんて夢を持ってた」
「私達の屋台と似てるね」
「うん、スキルゼロでやれることを考えると、同じ方向に向くのかな」
「だけど、やる気はあっても開業資金も貯まらずに生活がきつかった。料理を勉強する暇もなかった。それを思い出して、戦闘力がない人の受け皿を作るのはどうかなって」
「受け皿ですか」
サルバさんが話に入ってくれた。
「うん。屋台を出している市場横のようなスペースを室内に作るの。イメージは観覧席がないギルドの訓練場」
「なるほど。室内で壁の周りに店を並べ、共有のテーブルと椅子を並べれば可能ですね。すでに南方の街で参考にできそうな形がありますし」
「それなら、一か所で色んなものが食べられる」
「お酒も飲めるよね」
「ユリナがやるの?」
「私は人助けを条件に「名もなき神」からスキルを借りたの。だから閃きを話してみたけど、私が経営をして儲けるのは違うんだよね」
「面白い神様だね」
「それで、場所と資金を提供するから、あなた達が主導して屋台村のようなやつをやらない?」
「え、私達はみんな農村とか狩猟の村出身だから、経営とか分からないよ」
「それでしたら、私がお手伝いしますよ」
「サルバさん、いい?」
「はい。ユリナ様に受けた恩も返していませんし、スマトラ様も喜んで協力してくれると思います」
「へへ。最初からサルバさん達を頼るつもりだったけどね。本当に変な負担にならない?」
「もちろん。前々から興味があったんです。善は急げです、では」
サルバさんが、幻影のように消えた。
「3人ともどうかな。初期メンバーとして、失敗してもいいからやって欲しいんだけど」
「私達で大丈夫かな」
「嬉しい申し出だけど、そこまでして、ユリナにメリットはあるの」
「そうだよ。お金もあるんなら、前の仲間を呼んでやればいいよ。私たちも参加させて欲しいけどね」
「私か・・。私はかつての仲間3人との目標を誰かに達成してもらいたいかな」
「なら、なおさら」
「でも、もう無理なの」
「え」
「私が今の強力スキルを得るきっかけは、仲間とともに死にかけたことなの」
「じゃあ、もしかして」
「そう、料理も下手で取り柄もない私だけが生き残り、仲間3人は目の前で死んだ。いえ、殺された」
「・・・」
「ごめん、かつての自分達のような3人がまぶしかったの。友達の身代わりみたいに思っててごめん」
涙声になった私を3人がなぐさめてくれた。彼女達もダンジョンで遭難しかけて街で仕事を探したかったときだし、結局は受けてくれることになった。
サルバさんがたちまち帰ってきて、早くも物件候補をピックアップしてくれた。
彼女らには「冒険者への指名依頼」という形を取り、経費別の月に50万ゴールドで契約した。
体力面の強化も考えて、もう少し仲良くなれたらオークダンジョンで『超回復』を利用した「人でなし肉壁アタック」をやる。最低でもレベル50のHP150になれば、中級ダンジョン22階のビッグウズラくらいなら自分で獲りに行けるはずだ。
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