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43 モヤモヤの中で

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シクルが言ったことは多分本当だ。

あいつの氷魔法には手も足も出なかった。

私を拘束して連れ去れた。殺すのも簡単だった。なのに何もせず去った。

いや、足は凍りつかされた。

ターニャに迫っている危機を知らせにきた。

ナリスの生前に見せていた好意は本物だった。

だけと・・

「どう納得しろってんだよ!」

間違いない。ナリスとアリサ、モナが殺されたあの日。

シクルは殺した側にいた。



借りた家の中で悶々としていると、ターニャが来た。

「ユリナさん、いいですか?」
「・・うん」

「あのあと、どうなったんですか?」

「歯が立たなかった。動きを止められ、戦いにもならなかった。ナリスの仇を撃てなかった・・」

「・・シクルさん。自分が犯人だって言いましたけど、最後まで優しい目をしてました」

「犯人なのは間違いなく、シクルもナリスを死に追いやった」

思い出すだけで、頭がおかしくなりそうだ。

シクルが言ったこと、ターニャにも伝えた。

ターニャは半信半疑。

悔しいけど、あいつはその気なら簡単に私を殺せた。

ナリスは、私と同じ、劣等人。シクルは氷魔法適正Aの、優等種。
だけど強く生きるナリスに、シクルの方が好意を寄せていた。

「なのに、騙してお姉ちゃんを殺したんですよね」

「今日のシクルは、弁解していたよ。自分の仲間から聞かされた計画と、違ってたって」

「ユリナさんは信じますが」
「分からなくなった」
「・・」

だけど許せる訳がない。

ナリスだけじゃない。

モナもアリサも、一生懸命生きてきたのに、虫けらのように殺された。

あいつらの顔は絶対に忘れない。

ナリス達が喜んでくれなくても、絶対に復讐してやる。

いつの間に、そんなこと繰り返しながら、泣いていた。

「お、お姉ちゃんのために苦しまないでユリナさん・・」

「うう、あああぁぁ」

◆◆

ムカつくけど、シクルは情報屋を使って、私の能力もかなり解明している。

でなければ、あんな危険な魔法は使わない。

アイスフィールドは強力で、足からお腹まで凍った。

普通なら死んでいる。

なのにシクルは、ターニャを守れと言った。

これが『超回復』に、そこから復活できるスペックがある。そう把握していた証拠だ。

高位魔法の威力を体感させたかったんだ。

そして思い返せば、アイスフィールドを出すのを「火炎気功術」を使うまで待っていた。

そして完封して見せた。

シクルは言いたかったんだ。

ドラゴンパピーの強化外骨格程度では、氷魔法適正Aの自分に通じないこと。これを教えた。

これを把握せず、火魔法のジュリア、光魔法のマリリと対戦していたら、悲惨な結果だったろう。

共に適正A。奴らには、ドラゴンパピーの強化外骨格など、服を着るか、裸かの違いしかない。


そこまでは考えて、ヒントをくれたのがシクルだと思うと腹が立った。

納得した自分には、本当に腹が立った。


納得できないけど、ターニャを守ることは大切。

素直にボディーガードをやる。

負けた者が勝者に従う。これ常識。

シクルはターニャの禍根を取り除くために、カスガ男爵家の息子達、盗賊団幹部を殺すと言っていた。

ドラゴンダンジョンの5階以下の挑戦も、何もかも保留。

ターニャの安全を確保するのが最優先だ。


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