19 / 188
19 不治の病?
しおりを挟む
期せずして、1日の休みとなった。
貴族には絡まれる。
いい感じになりかけたリュウには冷たい人間と思われた。
気は重いが、お金はできた。
死んだ友人の1人、モナの代わりに出かけることにした。
安宿から出て北へ2キロ。綺麗な服を着た人がいないが、活気がある地域。
そこにある教会の一角に、モナが育った孤児院があった。
私は山のようなパンとミドルボア、スモールボア、ウサギの肉を収納指輪に入れて訪れた。
「シスタークリス、こんにちは」
「まあ、ユリナちゃん、また来てくれたの」
この2ヶ月間で5回目。
最初に来たときはモナの死亡報告をした。
シスターと2人で泣いた。
シスターは40歳。18歳のモナに先に逝かれたことは、娘を亡くしたような悲しさだっただろう。
「今日もお墓参り?」
「はい、それと寄付に。最近は冒険者で儲かってるんで、モナの代わりに子供達のための食材を持ってきました」
ボアやウサギを丸々、収納指輪に入れてきた。
孤児院には冒険者志望の子供も多い。
獲物の解体も学んでいるので、その子たちに解体を頼んだ。
そうすれば冒険者ギルドに頼む解体費用が浮き、パンを多めに買ってこれる。
焼いた肉を嬉しそうに頬張る子供達を見て、気持ちが晴れてきた。
不意に声がかかった。
「なんでモナを見捨てたやつが、また来たんだよ」
「・・アルン」
「これアルン、言葉を慎みなさい」
シスターの制止も気にせず彼は、私を罵倒し続けた。
「ごめんね。スキルを得たけど、発現が間に合わなかった」
「間に合わなかったじゃねえ!」
彼は泣いている。
ほんわかしたモナと、2歳年下で気が強いアルン。どちらも孤児院育ち。
2人は恋人未満だった。だけど、間違いなく、お互いを想いあっていた。
アルンは鍛冶スキル持ち。まだ工房の駆け出し。
いつか一人前になって、モナを迎えに行くんだろうって思っていた。
「ごめんね、ごめんね」
「モナが、なんで死ななきゃなんなかったんだ」
「うっ、うっ、うえっ、モナ、モナ、うえっ」
「う・・・・」
アルンは悲しい、そして私も悲しい。
アルンだって、本当は分かってる。冒険者のリスク。
私に、小さな声で、ごめんって言ってる。
子供達が見守るなか、シスターが私達の肩をそっと抱いてくれた。
暖かい。
シスターが私とアルンを仲直りさせようと、2人の手を取って重ね合わせた・・・・・
ぞくっ。ぞくぞくぞく。
私がアルンを触れた手から、どす黒いイメージが流れ込んできた。
死神がアルンを連れて行こうとしている。
一体なんなんだ。
それから、シスターとアルンが何を言ったか覚えてない。
◆
アルンが子供達への差し入れを置いて帰ろうとした。
私は彼の腕を強くつかんて引き留めた。
シスターと子供達に囲まれている。
「アルン、お腹は痛くない?」
「よく分かるな。最近、あまり物が食べられなくて、痛みもある。モナのことでショック受けたからだろ」
「ダンジョンで得た、気功みたいたもの、かな・・。さっき触れたとき、血の流れの悪いところを感じ取ったの。手を握らせて・・」
なんだろう。
今度ははっきり解る。怪我とは違う反応が返ってくる。
病気なのだろうか。
アルンの胃が何かに侵食されている。
リュウのときのように、時間がない訳じゃない。
けれど、放っておいてはいけない。そう感じる。
「アルン。このまま、回復用の「気」を流していい?」
「・・ちょっと怖いけど、いいぞ」
「効いて」
『超回復』ばぢいっ。
その瞬間、アルンの顔が真っ青になった。
「う? うぷっ、う、う、うげ!」
「アルン!」
「アルン兄ちゃん!」
「きゃあああ」
アルンが吐いた。
大量の真っ黒い血。塊のようになって、出てきた。
しくじった?
効果はあった。アルンの頬が、ピンク色に変わってる。
それに私の体、縮んでいる。
超回復のシステムで考える。
まず、病気で破壊されていた部分、それを欠損として再構築。
病気で破壊された部分は、異物と判定されてる。それが胃にたまって、出てきた。
私が戦闘中、身体に刺さったボアの牙を押し返した。あれと同じ作用だ。
「ごほっ、ごほっ、うげっ。はっ、はっ」
子供達が泣きそう。シスターも目を見開いている。
私が落ち着いて、対処せねば。
「・・気分はどう、アルン」
「はあっ、はあ。あれ?・・久しぶりに腹が痛くない」
「効いたかな」
「黒い血なんて初めて見た。もしかして、これは病気の塊か?」
「恐らく。聖の気が入って、アルンの病魔を排除した気がする」
「・・ありがとう。ユリナ、すごいスキルを手に入れたんだな」
「怪我とかには効果が小さいから、今回のは驚きよ」
原理なんて相変わらず分からない。
「シスター、ちょうどいい機会だから、子供達も全員診察します」
16人いる子供の中で怪我人が2人で、3人が病気だった。
2人は風邪程度。
1人は心臓に、黒いうねりを感じた。
アルンのときの反省を生かし、外で治療した。
シスターだけ立ち合ってもらい、子供に『超回復』を使った。
やはり、黒い血を吐いた。
帰り道、少しだけ気が晴れていた。
モナ・・。 モナの代わりにアルンを助けられたかな。
貴族には絡まれる。
いい感じになりかけたリュウには冷たい人間と思われた。
気は重いが、お金はできた。
死んだ友人の1人、モナの代わりに出かけることにした。
安宿から出て北へ2キロ。綺麗な服を着た人がいないが、活気がある地域。
そこにある教会の一角に、モナが育った孤児院があった。
私は山のようなパンとミドルボア、スモールボア、ウサギの肉を収納指輪に入れて訪れた。
「シスタークリス、こんにちは」
「まあ、ユリナちゃん、また来てくれたの」
この2ヶ月間で5回目。
最初に来たときはモナの死亡報告をした。
シスターと2人で泣いた。
シスターは40歳。18歳のモナに先に逝かれたことは、娘を亡くしたような悲しさだっただろう。
「今日もお墓参り?」
「はい、それと寄付に。最近は冒険者で儲かってるんで、モナの代わりに子供達のための食材を持ってきました」
ボアやウサギを丸々、収納指輪に入れてきた。
孤児院には冒険者志望の子供も多い。
獲物の解体も学んでいるので、その子たちに解体を頼んだ。
そうすれば冒険者ギルドに頼む解体費用が浮き、パンを多めに買ってこれる。
焼いた肉を嬉しそうに頬張る子供達を見て、気持ちが晴れてきた。
不意に声がかかった。
「なんでモナを見捨てたやつが、また来たんだよ」
「・・アルン」
「これアルン、言葉を慎みなさい」
シスターの制止も気にせず彼は、私を罵倒し続けた。
「ごめんね。スキルを得たけど、発現が間に合わなかった」
「間に合わなかったじゃねえ!」
彼は泣いている。
ほんわかしたモナと、2歳年下で気が強いアルン。どちらも孤児院育ち。
2人は恋人未満だった。だけど、間違いなく、お互いを想いあっていた。
アルンは鍛冶スキル持ち。まだ工房の駆け出し。
いつか一人前になって、モナを迎えに行くんだろうって思っていた。
「ごめんね、ごめんね」
「モナが、なんで死ななきゃなんなかったんだ」
「うっ、うっ、うえっ、モナ、モナ、うえっ」
「う・・・・」
アルンは悲しい、そして私も悲しい。
アルンだって、本当は分かってる。冒険者のリスク。
私に、小さな声で、ごめんって言ってる。
子供達が見守るなか、シスターが私達の肩をそっと抱いてくれた。
暖かい。
シスターが私とアルンを仲直りさせようと、2人の手を取って重ね合わせた・・・・・
ぞくっ。ぞくぞくぞく。
私がアルンを触れた手から、どす黒いイメージが流れ込んできた。
死神がアルンを連れて行こうとしている。
一体なんなんだ。
それから、シスターとアルンが何を言ったか覚えてない。
◆
アルンが子供達への差し入れを置いて帰ろうとした。
私は彼の腕を強くつかんて引き留めた。
シスターと子供達に囲まれている。
「アルン、お腹は痛くない?」
「よく分かるな。最近、あまり物が食べられなくて、痛みもある。モナのことでショック受けたからだろ」
「ダンジョンで得た、気功みたいたもの、かな・・。さっき触れたとき、血の流れの悪いところを感じ取ったの。手を握らせて・・」
なんだろう。
今度ははっきり解る。怪我とは違う反応が返ってくる。
病気なのだろうか。
アルンの胃が何かに侵食されている。
リュウのときのように、時間がない訳じゃない。
けれど、放っておいてはいけない。そう感じる。
「アルン。このまま、回復用の「気」を流していい?」
「・・ちょっと怖いけど、いいぞ」
「効いて」
『超回復』ばぢいっ。
その瞬間、アルンの顔が真っ青になった。
「う? うぷっ、う、う、うげ!」
「アルン!」
「アルン兄ちゃん!」
「きゃあああ」
アルンが吐いた。
大量の真っ黒い血。塊のようになって、出てきた。
しくじった?
効果はあった。アルンの頬が、ピンク色に変わってる。
それに私の体、縮んでいる。
超回復のシステムで考える。
まず、病気で破壊されていた部分、それを欠損として再構築。
病気で破壊された部分は、異物と判定されてる。それが胃にたまって、出てきた。
私が戦闘中、身体に刺さったボアの牙を押し返した。あれと同じ作用だ。
「ごほっ、ごほっ、うげっ。はっ、はっ」
子供達が泣きそう。シスターも目を見開いている。
私が落ち着いて、対処せねば。
「・・気分はどう、アルン」
「はあっ、はあ。あれ?・・久しぶりに腹が痛くない」
「効いたかな」
「黒い血なんて初めて見た。もしかして、これは病気の塊か?」
「恐らく。聖の気が入って、アルンの病魔を排除した気がする」
「・・ありがとう。ユリナ、すごいスキルを手に入れたんだな」
「怪我とかには効果が小さいから、今回のは驚きよ」
原理なんて相変わらず分からない。
「シスター、ちょうどいい機会だから、子供達も全員診察します」
16人いる子供の中で怪我人が2人で、3人が病気だった。
2人は風邪程度。
1人は心臓に、黒いうねりを感じた。
アルンのときの反省を生かし、外で治療した。
シスターだけ立ち合ってもらい、子供に『超回復』を使った。
やはり、黒い血を吐いた。
帰り道、少しだけ気が晴れていた。
モナ・・。 モナの代わりにアルンを助けられたかな。
0
お気に入りに追加
167
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる