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19 不治の病?
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期せずして、1日の休みとなった。
貴族には絡まれる。
いい感じになりかけたリュウには冷たい人間と思われた。
気は重いが、お金はできた。
死んだ友人の1人、モナの代わりに出かけることにした。
安宿から出て北へ2キロ。綺麗な服を着た人がいないが、活気がある地域。
そこにある教会の一角に、モナが育った孤児院があった。
私は山のようなパンとミドルボア、スモールボア、ウサギの肉を収納指輪に入れて訪れた。
「シスタークリス、こんにちは」
「まあ、ユリナちゃん、また来てくれたの」
この2ヶ月間で5回目。
最初に来たときはモナの死亡報告をした。
シスターと2人で泣いた。
シスターは40歳。18歳のモナに先に逝かれたことは、娘を亡くしたような悲しさだっただろう。
「今日もお墓参り?」
「はい、それと寄付に。最近は冒険者で儲かってるんで、モナの代わりに子供達のための食材を持ってきました」
ボアやウサギを丸々、収納指輪に入れてきた。
孤児院には冒険者志望の子供も多い。
獲物の解体も学んでいるので、その子たちに解体を頼んだ。
そうすれば冒険者ギルドに頼む解体費用が浮き、パンを多めに買ってこれる。
焼いた肉を嬉しそうに頬張る子供達を見て、気持ちが晴れてきた。
不意に声がかかった。
「なんでモナを見捨てたやつが、また来たんだよ」
「・・アルン」
「これアルン、言葉を慎みなさい」
シスターの制止も気にせず彼は、私を罵倒し続けた。
「ごめんね。スキルを得たけど、発現が間に合わなかった」
「間に合わなかったじゃねえ!」
彼は泣いている。
ほんわかしたモナと、2歳年下で気が強いアルン。どちらも孤児院育ち。
2人は恋人未満だった。だけど、間違いなく、お互いを想いあっていた。
アルンは鍛冶スキル持ち。まだ工房の駆け出し。
いつか一人前になって、モナを迎えに行くんだろうって思っていた。
「ごめんね、ごめんね」
「モナが、なんで死ななきゃなんなかったんだ」
「うっ、うっ、うえっ、モナ、モナ、うえっ」
「う・・・・」
アルンは悲しい、そして私も悲しい。
アルンだって、本当は分かってる。冒険者のリスク。
私に、小さな声で、ごめんって言ってる。
子供達が見守るなか、シスターが私達の肩をそっと抱いてくれた。
暖かい。
シスターが私とアルンを仲直りさせようと、2人の手を取って重ね合わせた・・・・・
ぞくっ。ぞくぞくぞく。
私がアルンを触れた手から、どす黒いイメージが流れ込んできた。
死神がアルンを連れて行こうとしている。
一体なんなんだ。
それから、シスターとアルンが何を言ったか覚えてない。
◆
アルンが子供達への差し入れを置いて帰ろうとした。
私は彼の腕を強くつかんて引き留めた。
シスターと子供達に囲まれている。
「アルン、お腹は痛くない?」
「よく分かるな。最近、あまり物が食べられなくて、痛みもある。モナのことでショック受けたからだろ」
「ダンジョンで得た、気功みたいたもの、かな・・。さっき触れたとき、血の流れの悪いところを感じ取ったの。手を握らせて・・」
なんだろう。
今度ははっきり解る。怪我とは違う反応が返ってくる。
病気なのだろうか。
アルンの胃が何かに侵食されている。
リュウのときのように、時間がない訳じゃない。
けれど、放っておいてはいけない。そう感じる。
「アルン。このまま、回復用の「気」を流していい?」
「・・ちょっと怖いけど、いいぞ」
「効いて」
『超回復』ばぢいっ。
その瞬間、アルンの顔が真っ青になった。
「う? うぷっ、う、う、うげ!」
「アルン!」
「アルン兄ちゃん!」
「きゃあああ」
アルンが吐いた。
大量の真っ黒い血。塊のようになって、出てきた。
しくじった?
効果はあった。アルンの頬が、ピンク色に変わってる。
それに私の体、縮んでいる。
超回復のシステムで考える。
まず、病気で破壊されていた部分、それを欠損として再構築。
病気で破壊された部分は、異物と判定されてる。それが胃にたまって、出てきた。
私が戦闘中、身体に刺さったボアの牙を押し返した。あれと同じ作用だ。
「ごほっ、ごほっ、うげっ。はっ、はっ」
子供達が泣きそう。シスターも目を見開いている。
私が落ち着いて、対処せねば。
「・・気分はどう、アルン」
「はあっ、はあ。あれ?・・久しぶりに腹が痛くない」
「効いたかな」
「黒い血なんて初めて見た。もしかして、これは病気の塊か?」
「恐らく。聖の気が入って、アルンの病魔を排除した気がする」
「・・ありがとう。ユリナ、すごいスキルを手に入れたんだな」
「怪我とかには効果が小さいから、今回のは驚きよ」
原理なんて相変わらず分からない。
「シスター、ちょうどいい機会だから、子供達も全員診察します」
16人いる子供の中で怪我人が2人で、3人が病気だった。
2人は風邪程度。
1人は心臓に、黒いうねりを感じた。
アルンのときの反省を生かし、外で治療した。
シスターだけ立ち合ってもらい、子供に『超回復』を使った。
やはり、黒い血を吐いた。
帰り道、少しだけ気が晴れていた。
モナ・・。 モナの代わりにアルンを助けられたかな。
貴族には絡まれる。
いい感じになりかけたリュウには冷たい人間と思われた。
気は重いが、お金はできた。
死んだ友人の1人、モナの代わりに出かけることにした。
安宿から出て北へ2キロ。綺麗な服を着た人がいないが、活気がある地域。
そこにある教会の一角に、モナが育った孤児院があった。
私は山のようなパンとミドルボア、スモールボア、ウサギの肉を収納指輪に入れて訪れた。
「シスタークリス、こんにちは」
「まあ、ユリナちゃん、また来てくれたの」
この2ヶ月間で5回目。
最初に来たときはモナの死亡報告をした。
シスターと2人で泣いた。
シスターは40歳。18歳のモナに先に逝かれたことは、娘を亡くしたような悲しさだっただろう。
「今日もお墓参り?」
「はい、それと寄付に。最近は冒険者で儲かってるんで、モナの代わりに子供達のための食材を持ってきました」
ボアやウサギを丸々、収納指輪に入れてきた。
孤児院には冒険者志望の子供も多い。
獲物の解体も学んでいるので、その子たちに解体を頼んだ。
そうすれば冒険者ギルドに頼む解体費用が浮き、パンを多めに買ってこれる。
焼いた肉を嬉しそうに頬張る子供達を見て、気持ちが晴れてきた。
不意に声がかかった。
「なんでモナを見捨てたやつが、また来たんだよ」
「・・アルン」
「これアルン、言葉を慎みなさい」
シスターの制止も気にせず彼は、私を罵倒し続けた。
「ごめんね。スキルを得たけど、発現が間に合わなかった」
「間に合わなかったじゃねえ!」
彼は泣いている。
ほんわかしたモナと、2歳年下で気が強いアルン。どちらも孤児院育ち。
2人は恋人未満だった。だけど、間違いなく、お互いを想いあっていた。
アルンは鍛冶スキル持ち。まだ工房の駆け出し。
いつか一人前になって、モナを迎えに行くんだろうって思っていた。
「ごめんね、ごめんね」
「モナが、なんで死ななきゃなんなかったんだ」
「うっ、うっ、うえっ、モナ、モナ、うえっ」
「う・・・・」
アルンは悲しい、そして私も悲しい。
アルンだって、本当は分かってる。冒険者のリスク。
私に、小さな声で、ごめんって言ってる。
子供達が見守るなか、シスターが私達の肩をそっと抱いてくれた。
暖かい。
シスターが私とアルンを仲直りさせようと、2人の手を取って重ね合わせた・・・・・
ぞくっ。ぞくぞくぞく。
私がアルンを触れた手から、どす黒いイメージが流れ込んできた。
死神がアルンを連れて行こうとしている。
一体なんなんだ。
それから、シスターとアルンが何を言ったか覚えてない。
◆
アルンが子供達への差し入れを置いて帰ろうとした。
私は彼の腕を強くつかんて引き留めた。
シスターと子供達に囲まれている。
「アルン、お腹は痛くない?」
「よく分かるな。最近、あまり物が食べられなくて、痛みもある。モナのことでショック受けたからだろ」
「ダンジョンで得た、気功みたいたもの、かな・・。さっき触れたとき、血の流れの悪いところを感じ取ったの。手を握らせて・・」
なんだろう。
今度ははっきり解る。怪我とは違う反応が返ってくる。
病気なのだろうか。
アルンの胃が何かに侵食されている。
リュウのときのように、時間がない訳じゃない。
けれど、放っておいてはいけない。そう感じる。
「アルン。このまま、回復用の「気」を流していい?」
「・・ちょっと怖いけど、いいぞ」
「効いて」
『超回復』ばぢいっ。
その瞬間、アルンの顔が真っ青になった。
「う? うぷっ、う、う、うげ!」
「アルン!」
「アルン兄ちゃん!」
「きゃあああ」
アルンが吐いた。
大量の真っ黒い血。塊のようになって、出てきた。
しくじった?
効果はあった。アルンの頬が、ピンク色に変わってる。
それに私の体、縮んでいる。
超回復のシステムで考える。
まず、病気で破壊されていた部分、それを欠損として再構築。
病気で破壊された部分は、異物と判定されてる。それが胃にたまって、出てきた。
私が戦闘中、身体に刺さったボアの牙を押し返した。あれと同じ作用だ。
「ごほっ、ごほっ、うげっ。はっ、はっ」
子供達が泣きそう。シスターも目を見開いている。
私が落ち着いて、対処せねば。
「・・気分はどう、アルン」
「はあっ、はあ。あれ?・・久しぶりに腹が痛くない」
「効いたかな」
「黒い血なんて初めて見た。もしかして、これは病気の塊か?」
「恐らく。聖の気が入って、アルンの病魔を排除した気がする」
「・・ありがとう。ユリナ、すごいスキルを手に入れたんだな」
「怪我とかには効果が小さいから、今回のは驚きよ」
原理なんて相変わらず分からない。
「シスター、ちょうどいい機会だから、子供達も全員診察します」
16人いる子供の中で怪我人が2人で、3人が病気だった。
2人は風邪程度。
1人は心臓に、黒いうねりを感じた。
アルンのときの反省を生かし、外で治療した。
シスターだけ立ち合ってもらい、子供に『超回復』を使った。
やはり、黒い血を吐いた。
帰り道、少しだけ気が晴れていた。
モナ・・。 モナの代わりにアルンを助けられたかな。
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