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57 彼女と再会する前に
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マツクロ子爵邸の襲撃は終わった。あれから3日が経った。
私は子爵領から南南東、ブライト王国で唯ひとつの冒険者ギルドがある街、サルスに向かっている。
「何かやっていないと落ち着かないんだよ・・」
危うく大切なパートナーを失うとこだった。はっきり言って、原因は私だ。
ゲルダが死にかけたことに奨太、楓夏、子爵家三男が絡んでいるが、彼らの責任ではない。敵対者に攻撃するのは当たり前。
すべては敵と状況を甘く見た私の責任なのだ。
「ゲルダに格好良く敵陣に乗り込む姿を見せたいなんて思った私が馬鹿だった。いつもみたいに、意地汚く素早く敵を沼にはめ込むべきだった」
だから楓夏まで殺すことになった・・・。
「ゲルダに早く会って謝りたい。そして抱きしめたい」
『だから待てっていってるだろ。最初の見立てでは3日で一度は外に出せると思ったが、そんな状態ではなかった。あと4日、合計1週間は治療して、お前のとこに一時帰宅だ』
「あ、ごめん沼様。自分に対する愚痴だよ。死んでるはずのゲルダを助けてくれた沼様には感謝の気持ちだけだから。最初の処置が3日から1週間に伸びたのも、予想を上回るくらい危険だったってことだよね」
『うむ。ゲルダを詳細に調べたら肝臓の全体、脾臓と肺の一部も熱で機能しなくなっとった』
「そこから彼女を生き返らせてくれる沼様には、本当に感謝してる。余計な詮索をされず沼様のスイーツを買うためにも、サルスの街に向かってるんだ」
『おう、楽しみにしてるぞ』
沼レベル6の効果で沼様との交信は、週に3時間まで可能になった。
沼レベルも厳密には6・46。ただ、レベル7にたどり着くには、どこかに召喚者でも来ない限り、20年くらいかかりそうだ。
◆◆◆
サスルに行ったらまず、沼様用のスイーツを仕入れる。マツクロ子爵領に固いクッキーはあったが、沼様からダメ出しされた。
「ゲルダに食べさせるためにも多めに買っておこう」
次がサスル冒険者ギルドのギルマスとの面会。
ダツタンでルークに作ってもらった信じていい人リストには、ギルマスの「ベルミン」が記されていた。
そのベルミンに、ギルドで「赤のサーシャ」のことをどの程度把握しているか聞きたい。
あとついでだが、ダンジョンの魔物の話を聞きたい。
「コメンの森で捕まえた爬虫類軍団が「沼」の中で死んだんだよね。餌もあげたのに。あと生きてるのは最後につかまえた15メートル鰐とカバウサギだけ。考えてみれば、外で高位ダンジョンの魔物が生きられたらヤバいし、何か「時限装置」がかけられてるのかな。知りたい」
まあ、高級食材のスッポーン大小合わせて105匹、コドモオオトカゲ40匹、鰐8匹は時間停止の収納指輪に移している。半分は売って、残りはマリアさんにあげよう。
◆◆
油断して大切な人を失いかけたばかり。慎重に動こう。
メインの街道を外れ、人がいない森と林道を選んで移動すること5日間。700キロを移動してサスルまでわずか10キロの位置に来た。自分のことながら、高ランクの脚力は恐ろしい。
そして森の中から悲鳴を聞いて、デジャブを感じている。
女の子2人が大熊に追われているのだ。メロンとカリナに初めて会ったときを思い出した。
さあ、この2人はどうでる。
「うわ、シルバーベアだよメラニー。無理すれば勝てるかも知れんが、逃げよっか」
「ロザンナ、前に人がいる」
走ってくる2人が私に気づいた。
「このまま走ったらまずいね。あそこのお姉さんが熊にやられちゃう」
「よし、右に折れて熊の気を引こうか」
2人はナイフを熊に投げながら走り去り、熊をうまく誘導して連れて行った。
「だよな。普通、シルバーベアが出る森で狩りをするやつは、あれくらい余裕あるよね。初対面のメロンとカリナはお金もなかったし、無理してたんだろうなあ」
メロンとカリナは、マリアさんとともに元気にやっているだろう。
確か、サスルの街もシルバーベアと女冒険者が走って行った方角にある。同じ方向に向かった。
5分もすると、「獲物」を見失ったシルバーベアがいた。
「ちょうどよかった。肉弾戦の訓練がしたかったんだ。40センチ小沼」
ぽちょん。しゅるるるる。ぴた。
「ひえええ、ぐる?ぐ、ぐ、ぐ・・」
さすがはシルバーベア。私が強者だと気づいて8メートルの距離から一気に逃げようとしたが、小沼でとらえた。とりあえず近づいて1発殴った。
「殺さないから、かかっておいで。沼解除」
やけくそになった熊と殴り合いをして、5分でKO。中級ポーションをかけて逃がしてあげた。
「3メートルのシルバーベア相手に素手で勝てるんだ。レベル150越えたかもしれんね」
前を見ると、さっきの2人が戻ってきていた。目立たない予定なのに、やっちまった。
「お姉さんが気になって引き返したけど、とんでもない人だったんだ」
「シルバーベアを素手でボコる人、うちのギルドにいませんね」
今、ギルドに寄ると余計な混乱が起きそうなので回避する。街で宿を取り、ゲルダに会ってから考えることにした。
私は子爵領から南南東、ブライト王国で唯ひとつの冒険者ギルドがある街、サルスに向かっている。
「何かやっていないと落ち着かないんだよ・・」
危うく大切なパートナーを失うとこだった。はっきり言って、原因は私だ。
ゲルダが死にかけたことに奨太、楓夏、子爵家三男が絡んでいるが、彼らの責任ではない。敵対者に攻撃するのは当たり前。
すべては敵と状況を甘く見た私の責任なのだ。
「ゲルダに格好良く敵陣に乗り込む姿を見せたいなんて思った私が馬鹿だった。いつもみたいに、意地汚く素早く敵を沼にはめ込むべきだった」
だから楓夏まで殺すことになった・・・。
「ゲルダに早く会って謝りたい。そして抱きしめたい」
『だから待てっていってるだろ。最初の見立てでは3日で一度は外に出せると思ったが、そんな状態ではなかった。あと4日、合計1週間は治療して、お前のとこに一時帰宅だ』
「あ、ごめん沼様。自分に対する愚痴だよ。死んでるはずのゲルダを助けてくれた沼様には感謝の気持ちだけだから。最初の処置が3日から1週間に伸びたのも、予想を上回るくらい危険だったってことだよね」
『うむ。ゲルダを詳細に調べたら肝臓の全体、脾臓と肺の一部も熱で機能しなくなっとった』
「そこから彼女を生き返らせてくれる沼様には、本当に感謝してる。余計な詮索をされず沼様のスイーツを買うためにも、サルスの街に向かってるんだ」
『おう、楽しみにしてるぞ』
沼レベル6の効果で沼様との交信は、週に3時間まで可能になった。
沼レベルも厳密には6・46。ただ、レベル7にたどり着くには、どこかに召喚者でも来ない限り、20年くらいかかりそうだ。
◆◆◆
サスルに行ったらまず、沼様用のスイーツを仕入れる。マツクロ子爵領に固いクッキーはあったが、沼様からダメ出しされた。
「ゲルダに食べさせるためにも多めに買っておこう」
次がサスル冒険者ギルドのギルマスとの面会。
ダツタンでルークに作ってもらった信じていい人リストには、ギルマスの「ベルミン」が記されていた。
そのベルミンに、ギルドで「赤のサーシャ」のことをどの程度把握しているか聞きたい。
あとついでだが、ダンジョンの魔物の話を聞きたい。
「コメンの森で捕まえた爬虫類軍団が「沼」の中で死んだんだよね。餌もあげたのに。あと生きてるのは最後につかまえた15メートル鰐とカバウサギだけ。考えてみれば、外で高位ダンジョンの魔物が生きられたらヤバいし、何か「時限装置」がかけられてるのかな。知りたい」
まあ、高級食材のスッポーン大小合わせて105匹、コドモオオトカゲ40匹、鰐8匹は時間停止の収納指輪に移している。半分は売って、残りはマリアさんにあげよう。
◆◆
油断して大切な人を失いかけたばかり。慎重に動こう。
メインの街道を外れ、人がいない森と林道を選んで移動すること5日間。700キロを移動してサスルまでわずか10キロの位置に来た。自分のことながら、高ランクの脚力は恐ろしい。
そして森の中から悲鳴を聞いて、デジャブを感じている。
女の子2人が大熊に追われているのだ。メロンとカリナに初めて会ったときを思い出した。
さあ、この2人はどうでる。
「うわ、シルバーベアだよメラニー。無理すれば勝てるかも知れんが、逃げよっか」
「ロザンナ、前に人がいる」
走ってくる2人が私に気づいた。
「このまま走ったらまずいね。あそこのお姉さんが熊にやられちゃう」
「よし、右に折れて熊の気を引こうか」
2人はナイフを熊に投げながら走り去り、熊をうまく誘導して連れて行った。
「だよな。普通、シルバーベアが出る森で狩りをするやつは、あれくらい余裕あるよね。初対面のメロンとカリナはお金もなかったし、無理してたんだろうなあ」
メロンとカリナは、マリアさんとともに元気にやっているだろう。
確か、サスルの街もシルバーベアと女冒険者が走って行った方角にある。同じ方向に向かった。
5分もすると、「獲物」を見失ったシルバーベアがいた。
「ちょうどよかった。肉弾戦の訓練がしたかったんだ。40センチ小沼」
ぽちょん。しゅるるるる。ぴた。
「ひえええ、ぐる?ぐ、ぐ、ぐ・・」
さすがはシルバーベア。私が強者だと気づいて8メートルの距離から一気に逃げようとしたが、小沼でとらえた。とりあえず近づいて1発殴った。
「殺さないから、かかっておいで。沼解除」
やけくそになった熊と殴り合いをして、5分でKO。中級ポーションをかけて逃がしてあげた。
「3メートルのシルバーベア相手に素手で勝てるんだ。レベル150越えたかもしれんね」
前を見ると、さっきの2人が戻ってきていた。目立たない予定なのに、やっちまった。
「お姉さんが気になって引き返したけど、とんでもない人だったんだ」
「シルバーベアを素手でボコる人、うちのギルドにいませんね」
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