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44.晃のカミングアウト
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タオと部屋に二人きりになったポームメーレニアンは、途端に目線を落とし、自信無さげに言った。
「タオ、やはり、おかしいか? 母上に似た女性を良いと思うのは、どうなのだろうか? 」
「ワシには、どうにも言えませんが、ポメ様が誠実でいてくれたらそれで良いのですじゃ。全てはハヅキの気持ち次第です……。しかし、ポメ様のご家族が反対されると思うのですじゃ。もう、老い先短い老女ですので、穏やかに過ごさせてあげたいとは思っとります」
「そうか。家の者はハヅキと付き合うのは応援してくれている」
「それは、今だけの話。ポメ様が女性に慣れて子を生せる若い奥様を娶られるまでの事。それまでにハヅキが二ホンの神々の下に戻るなら良いのじゃが、老いてから、仲良い若い夫婦や子を見るのはつらいと思います……。まあ、ハヅキは事情を話せば、大抵のことは了承してくれるでしょうがの」
「そうか……」
廊下からシリがはしゃいで話す声が聞こえる。
「ポメ様、デートに誘ってくれるんだって。ハヅキ、嬉しい? 愛しの王子様だよー! 」
ポームメーレニアンは緊張しながら聞き耳を立てる。
「ポメ様は二十三歳なんでしょ? 二ホンの甥っ子が二十三歳なのよねー。恋愛となると、犯罪臭が漂うけど、洗濯のお姉さん達が言っていたような愛人じゃなくて、お喋りしたり、ご飯食べたりまでなら全然練習台になるけど? 」
シリがひょっこり部屋の入口から顔を出す。
「ポメ様! デート大丈夫だってハヅキがいいました。私、協力したので、飴三つですねー! 」
「こらー! こんなこと賭けたりしたらダメよ! ポメ様、私で良かったら色々お手伝いさせてくださいねー」
「本当に良いのか? タオよ。明日何時位なら良いだろうか? 」
「明日は、ドウが二時には帰ってくるので、それからなら……」
「では、三時前に迎えに来よう。あの、ハヅキ。ありがとう! 」
ポームメーレニアンは白い歯を見せながら、満面の笑みで帰っていった。
※ ※ ※
ポームメーレニアンからデートに誘われた日の早朝、裏庭に続く階段で、恒例になっている手鏡での通話を始める。この頃は日本の昼食時に連絡してくることが多い。飯テロだ。ナ・シングワンチャーの荘園はアジア圏に似ていて、しょう油や味噌に似たものがあった。姫の翻訳機能のスキルは柔軟性があり、近いモノは葉月が良く使っていたモノに変換され通訳されている様だ。残念な事に、海までが遠く、海産物は乾物や塩辛すぎる塩漬けになっている。いつかは、ティーノーンの海に行ってみたい。
今日は当然、午後に迫ったポームメーレニアンとのデートの相談を同年の晴と晃に聞いてみることにした。
「ねえ、晴、晃、どがん思う? 二十三歳の男の子とデート、おかしくなか? 」
松尾家のリビング。晃が作った秋の新作メニュー「豚肉と舞茸のトマトソースパスタ」の昼食を食べながら、手鏡をのぞき込む。手元には、手鏡を置くスタンドとスマホ拡大鏡がある。賢哉が、通話をしやすいように作成してくれたものだ。
「あ、これ見やすい! 賢哉、ありがとう。葉月から見てどう? 」
「ちょっとだけ端っこがグニャって見えるけど、大丈夫! 」
「うっす。こんな風に話してると、葉月さんが異世界じゃなくって海外に行った位に感じるっす」
「ねー。意外にホームシックにはなってはおらんとよー」
「えー。それはそれで悲しかー。ママなんて、元々痩せてたのに5キロは痩せちゃったとけ! そいやとに葉月はモテ期が来とう相談なんて薄情じゃなかと! 」
「ごめんてー。でも、タオには拒否されて、メーオには魔法の事で執着されて、ポメ様に至ってはマザコン解消の練習台とよ。恋愛でもなんでもなかよ。で、デートするのはおかしかかな? 」
「んー、日本だったらママ活疑っちゃうかな? でも、葉月とポメ様は顔が似とるとやろ? お母さんとか親戚のお姉さんとお食事って、ていで良かとじゃなかと? 」
「私も、意識する方がおかしかよね。自然体でよかよね? 」
晃はあまり主張する方ではないが、なぜか、表情が硬い。
「晃は、反対? なんでそがん顔しとるとね? 」
「人の恋心をそんなに軽く扱うのってどうかなって思うばってん 」
「何もバカにしたりしとらんよ。女性が苦手なポメ様の女性に慣れる練習台になるだけだって」
晴や賢哉君も心配して晃の近くに寄ってきた。ギュッと眉根を寄せる晃は、苦悩しているのに一層怜悧な顔立を引き立たせている。いつも穏やかな口調なのだが、険を含ん口調で言い放つ。
「それだよ! 相手は葉月に恋心があってデートを申し込んでくれたとやろ? それなら、ちゃんとその恋心を汲んであげないと失礼と思うばい。練習台だとか、お試しでなんて、俺なら嫌とばってん! 」
「えー、そう? 最初から相性バッチリの人なんていないから、お試し大事じゃなかと? 」
「恋愛マスターの晴が言いよるけん、そがんじゃなかと? 私は、全くダメダメだから二十も下のあんたたちに聞いとる時点で終わっとるけど」
おどけて言う葉月や晴を晃はキッと睨みつける。
「晴は恋愛ごっこばっかいしよったら、週刊誌にプリクラや、SNSでやりとりした中身暴露されて、テレビ局の就職できんごとなるとば覚悟しとった方がよかよ! 俺はもっと恋愛も大切にした方がいいと思っとる。葉月はもっと自分の気持ちを大切にした方がよかよ。付き合ってくれるからとか、結婚してくれるからとか考えて、そっちが優先しとるけん、騙されたりして結婚できんとさ! 」
「はぁ? 若くて、顔も体も綺麗で、頭も良くて、センスも良くて、商才もある晃は、もてるけん、そがん事の言えるとよ! バレンタインのチョコば、段ボールいっぱいもらう人には一生分からんね! 私みたいに好きな人に勇気出して告白しても『鏡見たことある? 』とか『無理、無理、無理、生理的に無理だから! 』とか言われたこと無かやろうもん! 」
「あるよ! 俺ゲイだから! 『男は無理』って好きな人に言われた事のある! 晴の読んでるBLなんて嘘ばっかいやん! お試しで付き合っても『生理的に無理』で終わりやもん。練習しても無理なのは無理なんだよ! 」
「タオ、やはり、おかしいか? 母上に似た女性を良いと思うのは、どうなのだろうか? 」
「ワシには、どうにも言えませんが、ポメ様が誠実でいてくれたらそれで良いのですじゃ。全てはハヅキの気持ち次第です……。しかし、ポメ様のご家族が反対されると思うのですじゃ。もう、老い先短い老女ですので、穏やかに過ごさせてあげたいとは思っとります」
「そうか。家の者はハヅキと付き合うのは応援してくれている」
「それは、今だけの話。ポメ様が女性に慣れて子を生せる若い奥様を娶られるまでの事。それまでにハヅキが二ホンの神々の下に戻るなら良いのじゃが、老いてから、仲良い若い夫婦や子を見るのはつらいと思います……。まあ、ハヅキは事情を話せば、大抵のことは了承してくれるでしょうがの」
「そうか……」
廊下からシリがはしゃいで話す声が聞こえる。
「ポメ様、デートに誘ってくれるんだって。ハヅキ、嬉しい? 愛しの王子様だよー! 」
ポームメーレニアンは緊張しながら聞き耳を立てる。
「ポメ様は二十三歳なんでしょ? 二ホンの甥っ子が二十三歳なのよねー。恋愛となると、犯罪臭が漂うけど、洗濯のお姉さん達が言っていたような愛人じゃなくて、お喋りしたり、ご飯食べたりまでなら全然練習台になるけど? 」
シリがひょっこり部屋の入口から顔を出す。
「ポメ様! デート大丈夫だってハヅキがいいました。私、協力したので、飴三つですねー! 」
「こらー! こんなこと賭けたりしたらダメよ! ポメ様、私で良かったら色々お手伝いさせてくださいねー」
「本当に良いのか? タオよ。明日何時位なら良いだろうか? 」
「明日は、ドウが二時には帰ってくるので、それからなら……」
「では、三時前に迎えに来よう。あの、ハヅキ。ありがとう! 」
ポームメーレニアンは白い歯を見せながら、満面の笑みで帰っていった。
※ ※ ※
ポームメーレニアンからデートに誘われた日の早朝、裏庭に続く階段で、恒例になっている手鏡での通話を始める。この頃は日本の昼食時に連絡してくることが多い。飯テロだ。ナ・シングワンチャーの荘園はアジア圏に似ていて、しょう油や味噌に似たものがあった。姫の翻訳機能のスキルは柔軟性があり、近いモノは葉月が良く使っていたモノに変換され通訳されている様だ。残念な事に、海までが遠く、海産物は乾物や塩辛すぎる塩漬けになっている。いつかは、ティーノーンの海に行ってみたい。
今日は当然、午後に迫ったポームメーレニアンとのデートの相談を同年の晴と晃に聞いてみることにした。
「ねえ、晴、晃、どがん思う? 二十三歳の男の子とデート、おかしくなか? 」
松尾家のリビング。晃が作った秋の新作メニュー「豚肉と舞茸のトマトソースパスタ」の昼食を食べながら、手鏡をのぞき込む。手元には、手鏡を置くスタンドとスマホ拡大鏡がある。賢哉が、通話をしやすいように作成してくれたものだ。
「あ、これ見やすい! 賢哉、ありがとう。葉月から見てどう? 」
「ちょっとだけ端っこがグニャって見えるけど、大丈夫! 」
「うっす。こんな風に話してると、葉月さんが異世界じゃなくって海外に行った位に感じるっす」
「ねー。意外にホームシックにはなってはおらんとよー」
「えー。それはそれで悲しかー。ママなんて、元々痩せてたのに5キロは痩せちゃったとけ! そいやとに葉月はモテ期が来とう相談なんて薄情じゃなかと! 」
「ごめんてー。でも、タオには拒否されて、メーオには魔法の事で執着されて、ポメ様に至ってはマザコン解消の練習台とよ。恋愛でもなんでもなかよ。で、デートするのはおかしかかな? 」
「んー、日本だったらママ活疑っちゃうかな? でも、葉月とポメ様は顔が似とるとやろ? お母さんとか親戚のお姉さんとお食事って、ていで良かとじゃなかと? 」
「私も、意識する方がおかしかよね。自然体でよかよね? 」
晃はあまり主張する方ではないが、なぜか、表情が硬い。
「晃は、反対? なんでそがん顔しとるとね? 」
「人の恋心をそんなに軽く扱うのってどうかなって思うばってん 」
「何もバカにしたりしとらんよ。女性が苦手なポメ様の女性に慣れる練習台になるだけだって」
晴や賢哉君も心配して晃の近くに寄ってきた。ギュッと眉根を寄せる晃は、苦悩しているのに一層怜悧な顔立を引き立たせている。いつも穏やかな口調なのだが、険を含ん口調で言い放つ。
「それだよ! 相手は葉月に恋心があってデートを申し込んでくれたとやろ? それなら、ちゃんとその恋心を汲んであげないと失礼と思うばい。練習台だとか、お試しでなんて、俺なら嫌とばってん! 」
「えー、そう? 最初から相性バッチリの人なんていないから、お試し大事じゃなかと? 」
「恋愛マスターの晴が言いよるけん、そがんじゃなかと? 私は、全くダメダメだから二十も下のあんたたちに聞いとる時点で終わっとるけど」
おどけて言う葉月や晴を晃はキッと睨みつける。
「晴は恋愛ごっこばっかいしよったら、週刊誌にプリクラや、SNSでやりとりした中身暴露されて、テレビ局の就職できんごとなるとば覚悟しとった方がよかよ! 俺はもっと恋愛も大切にした方がいいと思っとる。葉月はもっと自分の気持ちを大切にした方がよかよ。付き合ってくれるからとか、結婚してくれるからとか考えて、そっちが優先しとるけん、騙されたりして結婚できんとさ! 」
「はぁ? 若くて、顔も体も綺麗で、頭も良くて、センスも良くて、商才もある晃は、もてるけん、そがん事の言えるとよ! バレンタインのチョコば、段ボールいっぱいもらう人には一生分からんね! 私みたいに好きな人に勇気出して告白しても『鏡見たことある? 』とか『無理、無理、無理、生理的に無理だから! 』とか言われたこと無かやろうもん! 」
「あるよ! 俺ゲイだから! 『男は無理』って好きな人に言われた事のある! 晴の読んでるBLなんて嘘ばっかいやん! お試しで付き合っても『生理的に無理』で終わりやもん。練習しても無理なのは無理なんだよ! 」
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