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第六章
Ⅴ
しおりを挟むぼーっとした奏ちゃんにご飯を食べてもらい、
薬を飲んでもらい、
「じゃあ寝ようね。
ベッド行こう。」
「はい」
そのまま手を引いて、入ったことの無い奥の部屋へ向かう。
恐らくそこが寝室だろう。
奏ちゃんは僕に手を引かれ、素直についてくる。
不謹慎だが、めっちゃ可愛い。
扉を開けると、ベッドが目に入る。
…これは、良くない。
めっちゃ可愛い奏ちゃんと、ベッド。
あまり奏ちゃんの顔は見ずにベッドに寝かせる。
一緒にいたいけど、離れた方がいいような気もする。
「起きるまでここにいるよ。
リビングに居てもいい?」
そう言って部屋を出ようとしたところで、とんでもない爆弾が投下される。
「…いっしょに、ねますか?」
「…ん?」
…幻聴?
「獅音さんも、ねましょう?」
違う、幻聴じゃない。
この子、僕にもベッドに入れと言っている。
「…それならリビングで、」
やんわりと断ったのに、
「さみしいじゃないですか…」
さみしい?!
え?僕がいなくて?寂しいの?
混乱する僕を、眠そうな目で奏ちゃんが見ている。
…口元が笑っている。
僕、からかわれてるのかな?
何か試されてる?
「はい、となり…どうぞ。」
何も言えず、固まっていると奏ちゃんが壁際にずれてスペースを作る。
誘われているのか?
いやでも、今、奏ちゃん生理だし…
違う、そうじゃない。
奏ちゃんがあくびをする。
…いや、そうだよね、うん。
そうじゃない。
「…じゃあ、お邪魔、します…」
死ぬほど緊張する。
恐る恐る彼女のとなりに横たわると、奏ちゃんが胸元にすり寄ってきた。
「…あったかいです。」
…だめだ、死ぬ。
このまま心臓が止まる。
今日は何度も心臓が止まりかけている。
そっと奏ちゃんの顔を見ると、もう目を閉じてゆっくりと眠りにつこうとしている。
何も考えられないまま、とりあえず胸元にある奏ちゃんの後頭部に手を添えて自分の方へ引き寄せる。
確かに、あったかいなぁ。
それに奏ちゃんの匂いがする。
僕もちょっと、うとうとしてきた。
…いつか、こうやって一緒に眠ることが僕達の当たり前になる日が来るのかな。
可愛い可愛い奏ちゃんはいつか、僕の奏ちゃんになってくれるのかなぁ。
どんどん、欲深くなる。
奏ちゃんの呼吸が一定のリズムを刻み始めた。
眠ったみたいだ。
寝息とぬくもりと匂いに誘われて、僕も段々まぶたが重くなる。
奏ちゃんが起きる前に、起きよう…
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