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第三章
Ⅴ
しおりを挟む奏ちゃんとはまた週末に会うことになった。
待ち遠しいなぁ。
ちなみに、琥珀には怒られた。
『私の兄たちは犯罪者予備軍しかいないんですかぁ?!
バカ兄2号は家まで付きまとい!!!
バカ兄1号は家の前で待ち伏せ!!!』
『琥珀今更なに言ってんの。
もとから僕らは予備軍じゃん。』
『そんなブラックジョークはいらないのよ…』
『だって会いたかったんだもん。
それに、僕、行くなって言われてはいって答えた?
答えてないよね?』
『なーに開き直ってんだ!』
『ふふ、いいもんね~。
もう僕と奏ちゃんは会う約束しちゃったもんね。』
『んあぁぁぁぁ…!』
あの時の琥珀、面白かったなぁ。
…僕たち、ゆっくり仲良くなれればいいな。
僕のことを、奏ちゃんにも知っていって欲しいな。
自分でも呆れるほど浮かれている。
気づけば背後に龍海が立っていた。
いつのまに帰ってきたのか、気がつかなかった。
いい気分のまま、振り返って声をかける。
「おかえり、たつ…み…」
龍海は酷い顔をしていた。
顔面蒼白で、今にも泣きそうだった。
「…ただいま、兄さん。」
声は、いつも通りのように聞こえる。
が、なんの感情もこもってない。
「…どうしたの。」
龍海は何も答えない。
何も答えないまま、床を見つめている。
「酷い顔だよ。体調悪い?」
そう聞いてはみるものの、恐らく違う。
こいつは昔から病気はほとんどしない。
「それとも、何かあった?」
何か、あったんだろう。翠ちゃんと。
「すまない、兄さん。
…彼女とはもう、会わない。」
静かな部屋に龍海のはっきりとした声が響く。
…こいつは翠ちゃんのことがとっても好きなのに。
どうしてこんな結論に達しているんだろう。
「…もう、休む。」
「…そう、分かった。」
そのまま龍海はリビングから出ていった。
浮かれた気分から一気に冷静になった。
龍海が心配なのもある。
でも…僕も、奏ちゃんと会えなくなってしまったら…
そんな不安が生まれた。
僕も彼女に会わない、と決める日が来るのだろうか。
そう思ってしまうような日が、来るかもしれないのか。
嫌だ。そんな日が来るなんて…
どうする、どうすれば…
「こんにちは、奏ちゃん。」
「こんにちは。」
週末がやってきた。
「じゃあ行こうか。
スイーツの種類が豊富なお店選んだんだよ。
甘いもの好きなんでしょ?」
「琥珀からの情報ですか?」
琥珀には特に何も聞いていない。
でも君が何を喜んでくれるか一人で凄く考えました、というのもなんだか照れ臭い。
ここは誤魔化しておく。
「まぁね…あ、手、繋ぐ?」
「繋ぎませんってば」
無感情に即答した前回と違って、少し笑いながら奏ちゃんが答えた。
…可愛い。
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