隣の席の、あなた

笹 司

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第三章

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奏ちゃんとはまた週末に会うことになった。
待ち遠しいなぁ。

ちなみに、琥珀には怒られた。




『私の兄たちは犯罪者予備軍しかいないんですかぁ?!
バカ兄2号は家まで付きまとい!!!
バカ兄1号は家の前で待ち伏せ!!!』

『琥珀今更なに言ってんの。
もとから僕らは予備軍じゃん。』

『そんなブラックジョークはいらないのよ…』

『だって会いたかったんだもん。
それに、僕、行くなって言われてはいって答えた?
答えてないよね?』

『なーに開き直ってんだ!』

『ふふ、いいもんね~。
もう僕と奏ちゃんは会う約束しちゃったもんね。』

『んあぁぁぁぁ…!』




あの時の琥珀、面白かったなぁ。

…僕たち、ゆっくり仲良くなれればいいな。
僕のことを、奏ちゃんにも知っていって欲しいな。
自分でも呆れるほど浮かれている。


気づけば背後に龍海が立っていた。
いつのまに帰ってきたのか、気がつかなかった。
いい気分のまま、振り返って声をかける。


「おかえり、たつ…み…」


龍海は酷い顔をしていた。
顔面蒼白で、今にも泣きそうだった。

「…ただいま、兄さん。」

声は、いつも通りのように聞こえる。
が、なんの感情もこもってない。

「…どうしたの。」

龍海は何も答えない。
何も答えないまま、床を見つめている。

「酷い顔だよ。体調悪い?」

そう聞いてはみるものの、恐らく違う。
こいつは昔から病気はほとんどしない。

「それとも、何かあった?」

何か、あったんだろう。翠ちゃんと。

「すまない、兄さん。
…彼女とはもう、会わない。」

静かな部屋に龍海のはっきりとした声が響く。
…こいつは翠ちゃんのことがとっても好きなのに。
どうしてこんな結論に達しているんだろう。

「…もう、休む。」

「…そう、分かった。」

そのまま龍海はリビングから出ていった。
浮かれた気分から一気に冷静になった。
龍海が心配なのもある。
でも…僕も、奏ちゃんと会えなくなってしまったら…
そんな不安が生まれた。
僕も彼女に会わない、と決める日が来るのだろうか。
そう思ってしまうような日が、来るかもしれないのか。
嫌だ。そんな日が来るなんて…
どうする、どうすれば…













「こんにちは、奏ちゃん。」

「こんにちは。」

週末がやってきた。

「じゃあ行こうか。
スイーツの種類が豊富なお店選んだんだよ。
甘いもの好きなんでしょ?」

「琥珀からの情報ですか?」

琥珀には特に何も聞いていない。
でも君が何を喜んでくれるか一人で凄く考えました、というのもなんだか照れ臭い。
ここは誤魔化しておく。

「まぁね…あ、手、繋ぐ?」

「繋ぎませんってば」

無感情に即答した前回と違って、少し笑いながら奏ちゃんが答えた。

…可愛い。
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