本当に、愛してる

双子のたまご

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第五章

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「ここ…」

連れてきたのは以前、彼女と一緒に行ったチェーン店の寿司屋。の別店舗。
少し緊張した様子の彼女に、声をかけて店内へ入る。

「好きなだけ食え」

あの日と同じように注文のタブレットを渡す。
彼女がメニュー画面に目を通す。
そして、

「…あ。」

…何かに気づいた。
そしてそれは恐らく…

「店によって違うそうだ。」

「え?」

「揃えられているネタが、違うそうだ。
妹と一緒に行っていた寿司屋では、冷凍マンゴーはもうないらしい。
でも他の店舗にはあると言っていた。」







彼女から、先に帰った理由を聞いた日の帰り道。
考えていた。これからどうするかを。
もう側にいることはできないのかもしれない。
だが、できればまた彼女との縁を繋ぎたい。
もし、いつか、また一緒にいることができたら。
もう無意識に彼女を傷つけることはしない。

そして、彼女のために何ができるかを考えた。
彼女を喜ばせたい。
俺は一度もそれができていないから。









「…誰が、言っていたんですか…」

「…前に一緒に行った寿司屋の店長だ。」

「いつ、聞いたんですか…?」

「先に帰った理由を聞いた日だ。」

彼女がぽつぽつと、質問を重ねる。

「…わざわざ、聞きに行ったんですか。」

「……そうだ。」

「冷凍マンゴーがあるお店も、探して…?」

…そう言われると、段々恥ずかしくなってきた。
よく考えると、急に店にきて冷凍マンゴーは置いてないのかと聞いてくる成人男性、ちょっとおかしい。

でもそんなこと、あの時は頭になかった。
彼女のことだけを考えていた。

「……あぁ。」

「…ふふ。」

彼女が笑う。

「ふふふ……ありがとう、ございます。」

「……」

彼女が愛おしそうにメニュー画面を眺めている。
…妹のことを思い出しているのだろう。

「…消えていない。」

思わずそう言ってしまった。

「え…?」

彼女の目が俺を見る。

「妹は消えていない。」






『紅が…っ、消えていく感じがしました…』




彼女はあの時、そう言っていたが、

「そう簡単に消えてはいかない。」

「っ…!」

彼女がはっとして、またメニュー画面へ視線を落とした。

「……はい…」

…泣いているようだった。
小さく返事が聞こえた。

「…早く頼め。」

彼女はそのまま、冷凍マンゴーを注文したようだった。
手元にやってきた冷凍マンゴーを見つめて、時折あの愛おしさが詰まった眼差しになる。
そして一口。

「うまいか。」

彼女は、妹を見つめていたあの時と同じ瞳で俺を見た。

「…はい、美味しいです。」

俺を見たが、俺は映っていない気がした。

「…そうか」

それでも良かった。
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