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第四章
Ⅰ
しおりを挟む「はい、じゃあ本日二回目?三回目?の仕切り直しといきましょう~」
化粧を落とした琥珀が戻ってきた。
「たっくん、一つ一つ確認していくよ。
まだ信じられないかもしれないけど、獅音兄さんと翠さんは両想いじゃない。
それは一旦納得して、自分の気持ちは正直に言って。いい?」
「…分かった。」
「たっくんは翠さんのこと、少なくとも気になるな、とは思ってるんだよね?」
ちょっと待て。
よくよく考えるとなんだこれは。
いやもうここまで色々と話して、冷静に考えると今これ凄く恥ずかしい状態じゃないか?
自分の顔が熱くなるのを感じる。
「あ、これ、自覚してきたんじゃない?」
「ちょっと冷静になってきたんだろうねぇ。
本当にお前は分かりやすいね。」
「…うるさい。」
どんな辱しめだ。
「で、気になってるんでしょ?」
「…」
「正直に。」
兄さんと琥珀に詰められる。
もう、どうにでもなれ…
「…あぁ。」
拳を握りしめて、小さく肯定した。
二人のにんまりとした顔が、今だけ少し憎い。
「さっき私が言った、獅音兄さんに遠慮してたっていう仮説は、あってる?」
「…そんな風に考えたことはなかったが、言われてみれば、納得できる、とは、思う。」
「獅音兄さんが翠さんの話してるとき…どう思ってた?」
「どうって…なんとも。」
「獅音兄さんからはどう見えてたの?」
「あ~…彼女の話をするといつもイライラしてたね。
絶対嫉妬してると思った。
嫉妬しまくってるくせにいつまでも『好きじゃない』って言ってるから、何言ってるんだこいつはって気持ちになっちゃって…今日は煽っちゃった。」
あはは、と兄さんが笑う。
「たっくんは、兄さんと翠さんがどんどん仲良くなってくの、面白くないなって思わなかった?」
また話の矛先が俺に向く。
「…面白くない、とは…」
「でも、『俺には怯えてたのに』って、お前さっき言ってたじゃない。」
「それは…まぁ、兄さんと俺とで態度が違うことはちょっと」
「もっと俺を見ろ!とか思わなかった?」
琥珀の言葉に、思わず固まってしまった。
「思ったんだー」
「思ったんだねぇ」
二人の目が生暖かい。
…もういっそ殺してくれ。
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