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第三章
Ⅴ
しおりを挟む「えっと、とりあえず、ここまでの話のまとめと私の解釈伝えていい?」
「うん、お願い。」
ひと息ついて、琥珀が話し出す。
「まず、獅音兄さんは翠さんの事、恋愛的な意味で好きなわけではない。
たっくんの大事な人だから、自分も大事にしたかった。
あってる?」
「まぁ、そうだね。」
「とりあえず獅音兄さんと翠さんが両想いっていうのは、たっくんの勘違いみたいだけど、それはオッケー?」
琥珀に訊ねられるも返事が出来ない。
「え、龍海、まだ納得してないの?」
「うん、そこなんだけどさ、ここから私の考えね。
たっくんも最後まで聞いてね。」
「…分かった。」
「たっくんは…
『兄さんも翠さんの事が好きなのに、俺に遠慮して身を引こうとしているんじゃないか。
自分を犠牲にして、俺と翠さんをくっつけようとしているんじゃないか』
…って、思ってるんじゃない?
今回たっくん珍しくはっきりしないしさぁ
なーんか意見がふわふわしてるんだよね。
そのわりには自分の意見曲げないし…
兄さんに言いづらくて遠慮してたんじゃないの。」
また、沈黙。
を、すぐに破ったのは兄さんだった。
「はぁ~?!」
兄さんがこんなに大きな声を出すことはない。
いや、本当に、記憶にない。
俺も、琥珀も驚いている。
「え、そうなの?龍海?」
「いや、俺は、」
「いや!もうはっきりしよう!
お前ちゃんと自分の気持ちは言ってよ!」
兄さんの焦ったような姿も初めてみた、と思う。
「し、獅音兄さん、落ち着いて」
「僕は!」
兄さんを宥めようとした琥珀がびくりと震える。
「…僕は、ただ、お前達には幸せでいて欲しいだけなんだ…
そのために必要なことはすべて言っているつもりだし、やっているつもりだ。
だから、お前達も遠慮はしないで欲しい。
僕は…お前達が我慢して、辛い想いをさせてしまうことが辛い。」
「獅音兄さん…」
琥珀の目に涙が滲んでいる。
「龍海。お前の考えを聞かずに、お前の気持ちを分かった気でいた。ごめんね。」
「兄さん…」
「お前の考えを、気持ちを、聞かせて欲しい。」
「…あぁ。」
本格的に泣き始めた琥珀が、化粧を落としてくる、と席を立った。
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