本当に、愛してる

双子のたまご

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第三章

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「えっと、とりあえず、ここまでの話のまとめと私の解釈伝えていい?」

「うん、お願い。」

ひと息ついて、琥珀が話し出す。

「まず、獅音兄さんは翠さんの事、恋愛的な意味で好きなわけではない。
たっくんの大事な人だから、自分も大事にしたかった。
あってる?」

「まぁ、そうだね。」

「とりあえず獅音兄さんと翠さんが両想いっていうのは、たっくんの勘違いみたいだけど、それはオッケー?」

琥珀に訊ねられるも返事が出来ない。

「え、龍海、まだ納得してないの?」

「うん、そこなんだけどさ、ここから私の考えね。
たっくんも最後まで聞いてね。」

「…分かった。」

「たっくんは…
『兄さんも翠さんの事が好きなのに、俺に遠慮して身を引こうとしているんじゃないか。
自分を犠牲にして、俺と翠さんをくっつけようとしているんじゃないか』
…って、思ってるんじゃない?
今回たっくん珍しくはっきりしないしさぁ
なーんか意見がふわふわしてるんだよね。
そのわりには自分の意見曲げないし…
兄さんに言いづらくて遠慮してたんじゃないの。」





また、沈黙。





を、すぐに破ったのは兄さんだった。


「はぁ~?!」

兄さんがこんなに大きな声を出すことはない。
いや、本当に、記憶にない。
俺も、琥珀も驚いている。

「え、そうなの?龍海?」

「いや、俺は、」

「いや!もうはっきりしよう!
お前ちゃんと自分の気持ちは言ってよ!」

兄さんの焦ったような姿も初めてみた、と思う。

「し、獅音兄さん、落ち着いて」

「僕は!」

兄さんを宥めようとした琥珀がびくりと震える。

「…僕は、ただ、お前達には幸せでいて欲しいだけなんだ…
そのために必要なことはすべて言っているつもりだし、やっているつもりだ。
だから、お前達も遠慮はしないで欲しい。
僕は…お前達が我慢して、辛い想いをさせてしまうことが辛い。」

「獅音兄さん…」

琥珀の目に涙が滲んでいる。

「龍海。お前の考えを聞かずに、お前の気持ちを分かった気でいた。ごめんね。」

「兄さん…」

「お前の考えを、気持ちを、聞かせて欲しい。」

「…あぁ。」

本格的に泣き始めた琥珀が、化粧を落としてくる、と席を立った。
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