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第一章
Ⅱ
しおりを挟む「おはよぅ、獅音兄さん、たっくん…」
「おはよう」
三人で暮らす家。
基本的に全員午後から動く為、実はもう、おはようの時間ではない。
「おはよう、琥珀。なぁに?風邪かい?」
「ん~…やっぱりそう思う?
ちょっと声がね…」
「もうすぐ本番じゃないのか」
「そうなの…薬欲しいけど、今日はちょっと稽古前に次の舞台の顔合わせがあって…」
「おやおや、それなら僕達が買いに行こうか。
ねぇ、龍海。今日は夜、店に顔を出すだけだしねぇ。」
兄さんが読んでいた新聞をおいてこちらを見る。
店、というのは、うちのシマにあるホストクラブのこと。
「そうだな。」
「あぁ~ありがとう…
打ち合わせと稽古の間に一瞬家に帰れるかも。」
「分かったよ。でも早い方がいいね。
龍海、今から行く?」
「あぁ、俺が行こう。一人で大丈夫だから、兄さんは琥珀を見送ってやってくれ。
琥珀。熱はないんだな?」
「大丈夫大丈夫。
熱は今のところない。」
「飯は…」
「僕がするから、大丈夫だよ。」
「そうか、行ってくる。琥珀、いつもの薬か?」
「あと、のど飴も欲しい~
蜂蜜的なやつ。なんでもいい。」
「分かった。」
「いってらっしゃ~い」
「あぁ、兄さん、琥珀を頼んだ。」
「はいは~い。」
玄関を開け、外へ出る。
日当たりは良いが、少し肌寒い気がする。
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