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第十章
Ⅵ
しおりを挟む「ここ、です…」
本当に、駅から近いのだ。今の家は。
「…そうか。」
「今日は色々とすみませんでした…
あの、ありがとうございました。
それじゃあ…」
「待て、もう少し…」
「でも、終電が…」
「もう少し一緒にいたい。」
「…」
「駄目か。」
「…龍海さん、勘違いしますって…」
足元を見つめる。
「誤解はとけただろう。」
「琥珀さんのことは分かりました。
でも、だからといって私たちの関係は何も変わってないですよ。」
「…」
「龍海さんが、誰かに恋をしているのは変わらないでしょう。」
「…そうだな。」
「…っ、」
「…琥珀や、兄さんの言う通りだった。」
龍海さんの靴が、足元を見つめる私の視界に入る。
いつの間にか目の前まで来ていたようだ。
「言わなくても、伝わると思っていた。
でも何も伝わっていないようだ。
行動ばかりが先走って、結果君に勘違いをさせたまま…」
「…」
「…俺が好きなのは」
…遂に、はっきりとした失恋の瞬間がやってくる。
「俺が、好きなのは…」
私の両手が、龍海さんに取られる。
そのまま視線をあげて龍海さんの顔を見る。
目があった。
龍海さんが口を開く。
「最初から、俺が好きなのは君だけだ。
ずっと前から…愛している。」
「わた、し…」
「そうだ、本当に、君を愛してる。」
「…」
「君は、俺のことをどう思っている。」
龍海さんが私のことを好き…
「私、は…」
琥珀さんを初めて見た日。
紅の写真を見て思った。
私だけ幸せにはなれない、と。
でも…
『ただいま~』
『お帰り、紅。結婚式どうだった?』
『めっちゃ良かった!泣いた!
先輩、幸せそうだった~
いいよね、ウェディングドレス!』
『そうだね、紅、ドレス似合うよ。
紅の結婚式かぁ。楽しみだなぁ。』
『えへへ~まだ先ですけどね!
…今、彼氏、いないのでぇ…!』
『あの浮気男は早く忘れなよ…』
『…なんだかんだ姉さんの方が先に結婚するかもよ?』
『だから出会いがないのよ、相手がいないの。』
『…私がいたから、恋愛しなかった所もあるでしょ。』
『紅』
『あー違う違う!
そういうことが言いたいんじゃなくて!
もう、私のこと最優先にしなくていいんだよってこと!』
『そんなこと…』
『私ももう社会人ですから!
だから、もう姉さんも諦めなくていいの』
『何も諦めてなんかないよ。』
『…うん。』
『…』
『…とにかく!姉さんにも幸せになってほしいってこと!分かった?』
『…うん、ありがとう。』
…今、こんなことを思い出すなんて。
都合がよすぎるかもしれない。
「私、も…」
何故か涙が溢れてくる。
どんな感情の涙なのかは分からない。
龍海さんが滲んで見える。
「私も、本当は…」
私の手を握る龍海さんの手に、力が入る。
「…愛しています。龍海さんを、愛してる。」
本当は、愛してる。
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