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第十章
Ⅴ
しおりを挟む「…あぁ、代わった。悪かったな。
…い、いやぁ…え?………な…」
龍海さんが琥珀さんと話している間、私の脳内はぐるぐるとしていた。
琥珀さんが龍海さんの想い人ではなかったことへの安堵。
疑っていたことへの罪悪感。
そして勘違いしたことへの羞恥心…
…紅。お姉ちゃんは恋愛偏差値が低い、恋愛が下手くそな、現実には存在し得ない女でした…
「おい」
いつの間にか、琥珀さんとの通話は終わっていた。
…龍海さんの目が見れない。
「…はい。」
「…信じてもらえたか。」
「…はい、すみませんでした…」
「…」
「えっと…」
「…」
「お互い、誤解はとけました、ね…」
「…そうだな」
「じゃあ、今日はこれで…」
「送る。」
「え、いや」
「送る。」
このやりとりが凄く、懐かしく感じた。
電車に揺られ、私の家の最寄り駅まで行く。
電車のこと、全然頭になかったけど、まだ電車があってよかった…
都会のいいところだなぁ。
ぼーっと向かいの車窓を見る。
私と龍海さんがならんで座っている。
龍海さんは頭上の吊り広告を眺めていた。
そのまま窓に映った私たちを見つめる。
すると、窓の中の龍海さんの視線が吊り広告から隣に座る私へ映る。
龍海さんは窓越しに私に見られていることに気づいてない。
見つめられている。
龍海さんの左手が動く。
そのまま龍海さんの手が、鞄に添えられた私の右手を握った。
一気に身体が熱くなる。
視線も身体も動かせないまま、龍海さんは私を見つめたまま、最寄り駅まで電車に揺られ続けた。
「あの…」
最寄り駅についた。
「ありがとうございました。
それじゃあ、ここで…」
「こんな時間だぞ?家まで送る。」
「いえ、もうすぐそこなので…
龍海さん、終電無くなっちゃいません?
大丈夫ですから」
「家まで送る。」
「…はい…」
結局、こうなる。
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