48 / 54
第十章
Ⅰ
しおりを挟む「お待たせいたしました。」
私の目の前に紅茶が、龍海さんにはコーヒーが置かれる。
あの後、すぐそばのチェーン店に入った。
もうすぐ日付が変わる時間。
店内には勉強をしている学生と、仕事帰りのような様子のサラリーマン、二人組の大学生くらいの女の子達。
私たちはずっと無言のまま。
有線の音楽が流れる中で、時々女の子の笑い声が聞こえる。
「…」
「…」
「…話したいことって何ですか。」
「…」
「何もないなら帰ります。」
「駄目だ。」
「…」
「…」
「話したいことって何ですか。」
「…さっきの奴は、君の、恋人、なのか。」
「…はい?弥鶴君が?」
弥鶴君の名前が出たとき、龍海さんの眉間の皺がいっそう深くなった。
「違います、けど」
「なら、君はあいつのことが好きなのか。」
「それは、友達なので、」
「違う!
…れ、恋愛感情は、あるのかと聞いている。」
「…ないです」
「そうか…」
話したいことって、これ?
何これ。
「それだけですか?」
「あ、いや…」
「そういえば、琥珀さんと話をしました。」
「は…」
そうだ、この人には琥珀さんがいる。
それを私は知っている。
「龍海さんの好きな人ですよね」
「は?」
「実は前の街に住んでいたとき、お二人でショッピングモールにいたところを見たことがあるんです。
龍海さん、恋してるって言ってたから、あぁこの人だって思って」
「いや、」
「凄く素敵な人ですよね。
先週ちょっとお話しする機会があって、外見も内面も綺麗な人でした。」
「あ、」
「だから…あの時、」
…キス、された時。
「なんでこんなことするのって、言ったじゃないですか…」
「…っ、」
「好きな人だけ大事にしてって、言ったじゃないですか。
あんな素敵な人がいるのに、今日だって何なんですか。」
「あいつは、」
「龍海さんのこと、好きな人がいるのに他に手を出すような人だと思いたくなかったのに。
あれは気の迷いなんでしょう?
なのに引っ越し先にまで来て…やっぱりそういう人だったんですか」
「違う、」
「何が」
「あ、あいつは…」
「…」
「あいつは…ぃ、」
「?何ですか?」
「…ぃもうと、だ。」
もうと?
「…琥珀は、俺の、妹だ。」
…いもうと?妹?
「…え?」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
会社の後輩が諦めてくれません
碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。
彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。
亀じゃなくて良かったな・・
と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。
結は吾郎が何度振っても諦めない。
むしろ、変に条件を出してくる。
誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
同期に恋して
美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務
高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部
同期入社の2人。
千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。
平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。
千夏は同期の関係を壊せるの?
「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる