本当は、愛してる

笹 司

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第九章

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琥珀さんとの出会いから一週間。
瑠璃ちゃんと弥鶴君との飲み会の日になった。
私の誕生日。


「はい、今日もお疲れ様です~
翠ちゃん、誕生日おめでとう!飲もう!」

「お疲れ、おめでと」

「ありがとう、瑠璃ちゃん、弥鶴君。」

瑠璃ちゃんが来たがっていたスペインバル。
できたばかりだからか週末だからか、人が多い。

「翠ちゃん、誕生日プレゼントは何がいい?」

「え?いや、こうやって一緒にご飯食べられるだけで嬉しいよ」

「ううぅ…翠ちゃん可愛いいい!」

「こういう素直さをお前も持てよ、瑠璃。」

「あんたもこういう気の利いたこと言えるようになりなさいよ」

「まぁまぁ…」

序盤はいつも通りの二人の夫婦漫才。
お酒が進んでくると瑠璃ちゃんがつぶれる。
つぶれた瑠璃ちゃんはとても素直。

「みつるぅ…」

「なに」

「今日来てたお客さんにデレデレしてたでしょお~」

「どの客だよ」

「巨乳のお姉さんだよ…」

「そんな客いたか?」

「…他の人に、デレデレしちゃやだ…」

「ははっ、はいはい。」

こうなってくると、いつも私は空気。

「だいたい、みつるはさぁ…」

瑠璃ちゃんは弥鶴君のことが大好きだ。
弥鶴君も瑠璃ちゃんのことが好き。
でも驚くことに、この二人、付き合っていない。
初めてこの現場に遭遇したときはびっくりした。
絶対付き合ってると思った。
でも翌日、瑠璃ちゃんは酔ってからの記憶が残っていないことを知った。
つまり、弥鶴君はこの状況を知ってて放置しているということ。

「ねぇ、なんで告白しないの?
瑠璃ちゃん凄く弥鶴君のこと好きじゃん。
待ってるんだよ、きっと。」

今日も今日とて弥鶴君への想いを伝える瑠璃ちゃんを見ながら小声で訊ねる。

「だって可愛いじゃん。
普段ツンツンしてるくせにさぁ、酔ったらこんな素直。
普段のツンツンがどんどん可愛くなっていくよ。
もう暫く見てたいなぁと思って」

「弥鶴君…いい性格してるね…」

「翠ちゃんもこのこと知ってて瑠璃に何も言わないじゃん。」

「う…
誰かに取られちゃっても知らないよ。
瑠璃ちゃんこんなに可愛いんだから。」

「そんなことさせるわけない。」

急に声のトーンが変わってびっくりする。

「誰にも渡さない。」

「そう、ですか…」

「うん。」

弥鶴君はそう言って、またニコニコしながら瑠璃ちゃんの話に相槌を打ち始める。
…やっぱり、弥鶴君いい性格してるよ
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