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第七章
Ⅴ
しおりを挟む「いや~楽しみですね、デート!」
服を包みながら店員さんが声をかけてくれる。
「…一緒に選んでくださって、ありがとうございました。」
「こちらこそ!ありがとうございます!
あっ、あと…」
目の前にいくつか髪飾りが並べられる。
「5000円以上お買い上げのお客様に、髪飾りを選んでいただくキャンペーン中なんです。
ただ、ワンピースに合わせて赤があればよかったんですけど、人気で…」
残っているのは、紫・黄色・水色・緑。
「じゃあこれで…ありがとうございます。」
緑のバレッタを手に取る。
「お姉さんがつけてるネックレスにあいますね!
ビジネスの場でも使えるシンプルなデザインですし、こちらも沢山使ってあげてください!」
「…はい。」
バレッタを一緒に袋にいれて、お店から見送られる。
「ありがとうございました!
デート、楽しんできてくださいね!
またのお越しをお待ちしております!」
「ありがとうございました。」
とても疲れた。けど、楽しかった。
袋からチラリと覗く赤に、少し元気が出た。
ちょうどお昼になる頃になった。
レストラン街に人が増えた。
人の流れに逆らってショッピングモールの出口へ向かう。
出口近くの雑貨屋さんをふと見ると、見覚えのある後ろ姿。
…龍海さん。
心拍数が急に上がったのを感じる。
龍海さんもショッピングモールとか来るんだな。
獅音さんと一緒に来たのだろうか。
声をかけるか。
いや、何だか服を買いに来たと言うのは恥ずかしい。
ここは気づかないフリをして違う出口から出よう。
来た道を引き返そうと足をさっきまでとは反対方向に踏み出す。
「たっくん、ごめん~お待たせ!」
「あぁ」
思わず振り返った。
龍海さんが、女の人といる。
ふわりと巻いた茶色い髪。
パステルカラーでまとめた服。
華奢な体を小さな靴が支えている。
笑顔が可愛い、とにかく可愛い、女の人。
龍海さんを、たっくんと呼ぶ、女の人。
「もう良いのか?」
「うん、ありがとう~」
「じゃあ飯に行くか。」
ほら、と女の人に手を差し出す龍海さん。
はい、と龍海さんに鞄を渡す女の人。
二人の距離が近い。
龍海さんが女の人の鞄を持ってこちらへ向かってくる。
咄嗟にすぐそばの花屋さんに入る。
二人が花屋さんの前を通る。
「…あ、花屋だ。」
こっちに、来てしまう。
「欲しいのか?」
「ガーベラがね。でも旬なのはちょっと後かなぁ」
「そうか。また買ってやる。」
「ありがとー」
二人はそのまま通りすぎる。
自分が息を止めていたことに気づく。
ゆっくり息を吐く。
…龍海さんの、好きな人、だ。
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