本当は、愛してる

双子のたまご

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第七章

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龍海さんと過ごす時間が増えている。
私の生活の中に入り込んでいるのを感じる。
スイーツを見かけたら、龍海さんが好きそうだとか
雪が降ると、龍海さんは暖かい場所にいるだろうか、とか。

一緒に観に行く舞台「ヨルと森」は、春先に公演が始まる。
真冬は越えた天気のいいお休みの日。
公演で来ていく服を買おうと、隣町のショッピングモールに来た。
私が持っている服は基本的に、黒。
何かイベントにあわせて服を買いに行くなんて、したことがなかった。
お洒落な女性客が多いお店は気後れする。
自分に何が似合うかも分からない。
目の前のカラフルな棚を見つめて動けずにいると、

「いらっしゃいませ~!
こちら気になる感じですか?」

若くて可愛い店員さんに声をかけられた。

「あ、いえ、えっと…」

「春の新作になるんです。
他にもゆっくりご覧くださいね!」

店員さんが離れていって少しホッとする。
お店で店員さんに話しかけられるのは緊張してしまうから苦手だ。
棚に向き直り、改めてどれにするかを考える。




…決まらない。
あれから他のお店も見て回るも、よく分からない。
巡り巡って最初のお店に戻ってきた。
そしてまた店内をぐるぐる。
もうダメだ。
やっぱり慣れないことはするもんじゃない。
諦めて帰ろう、疲れたし。
お店を後にしようと振り返る。

「あの…」

振り返った先に、始めに話しかけてきた若くて可愛い店員さんが立っていた。

「あ…はい…」

不審者だと思われたかと焦る。
そりゃ帰ったと思った客が30分後に戻ってきて、服を買うわけでもなく店内を歩き回って帰るとか
怪しいと思われても仕方ない。

「あの、ごめんなさい。違うんです。
服、決まらなくて…ごめんなさい、帰るので…」

不審者ではないですと伝えたくて、捲し立ててしまう。
余計、不審だ…

「いえ!あの、お客様…
よかったら一緒にお洋服探させていただけないですか…?」

「え…」

「凄く色々考えて迷われてたみたいだから!
お力になれることがあればと思って…!」

や、優しい…

「えっと…ありがとうございます…」

可愛い店員さんがほっとしたように笑う。

「デートですか?!」

「えぇ?!」

店員さんが目をキラキラさせて水を得た魚のように話し出す。

「い、いや、ちがっ」

顔が熱くなるのを感じる。

「任せてください!
私これまでデート勝負服沢山相談乗らせていただいたんですよ!」

拳を握りしめてまっすぐ私を見つめる。
こんなに元気で明るい人、紅以来な気がする。
思えば、この店員さん紅と同じ年くらいかもしれない。
自然と笑みがこぼれてしまう。

「…はい、よろしくお願いします。」

「…!はい!
相手の方をイチコロしちゃうような服、一緒に探しましょう!」

店員さんの笑顔が眩しい。
楽しそうな店員さんに、デートじゃないんです…とは言えなかった。
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