本当は、愛してる

双子のたまご

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第六章

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帰宅後、龍海さんにメールしなくてはと携帯を開く。
でもなんと送ろうか。

『昨日のこと、気にしないでください。』

なんか、上から目線では?

『魔が差したんですよね。気にしてないです。』

言っておいて虚しくなる。

どうしたものかと思っていたら、着信がなった。
龍海さんだった。
電話…電話?!
少し緊張しながら電話に出る。

「…はい。」

「…俺、だ。」

「はい…こんばんは、龍海さん。」

「…」

「…」

「「あ、」」

被った…!

「ご、ごめんなさい!」

「いや、」

携帯の向こうでふーっと龍海さんが深呼吸している。

「…今、家の近くまで来ている。」

「え?」

「少し、会って話ができないか。」

「あ…はい、今出ますね。」

通話を切る。
一度脱いだコートを羽織って、外へ出る。
向かいの家の塀に寄りかかってこちらを見ている、龍海さんがいた。






「き、昨日は…すまなかった」

龍海さんが頭を下げる。

「た、龍海さん…!」

「君の信頼に背いた行動だった。」

「あの、気にしてないので…!
頭をあげてください!」

龍海さんがゆっくりと頭を上げる。
罰が悪そうに、地面を見つめている。

「…勘違いをしているようなので、伝えておきたいんだが、」

勘違い…あぁ。
龍海さんが私のことを好きと勘違いしているのではないか、ということか。

「俺は…」

「大丈夫ですよ、龍海さん。」

「…は、」

「ちょっと魔が差しちゃったんですよね!
大丈夫、龍海さんにはちゃんと好きな人がいるって分かってますよ!」

変に明るく答えてしまう。
メールで伝えようか迷っていた言葉は、本人を前にすると案外すんなり口から出た。
龍海さんは黙ってこちらを見ている。

「考えてみると、好きな人がいるのに他の女の人のお迎えとか、ご飯行くとか…
見られたら勘違いされちゃいますよ。」

「…」

「だから、もう…」

「違う。」

聞いたことのない低い声にビクリと体が震える。

「…」

「迎えに来るのは、やめない。
食事に誘うのもやめない。」

「え、でも、」

「また明日、迎えに来る。」

「ちょっ、龍海さん、」

龍海さんが背を向ける。
何がなんだか分からない。
ただ、龍海さんを怒らせてしまったことは分かった。
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