本当は、愛してる

双子のたまご

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第六章

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「あ、翠ちゃん。お疲れ様。」

「獅音さん…」

翌日、龍海さんは来なかった。

「龍海さんは…」

「あー…」

「…」

「なんかよく分からないけど、龍海が失礼しちゃったみたいだね。
昨日あいつ、顔色真っ青にして帰ってきたから驚いたよ。
翠ちゃんに会わせる顔がないって言ってた。」

「そんな、」

「ごめんね。」








昨日、龍海さんが帰ったあと、暫く動けなかった。
あれは何だったんだろう。
勘違いでなければ、き、キスされそうになった…?
顔がかっと熱くなる。
龍海さんは好きな人がいるはずだ。
なのに、どうして…



『男ってやつは!
近くに行けそうな女いたら行っちゃうのよ!
他に好きな人がいようが!彼女がいようが!』

『ちょっと紅、飲みすぎだって…』

『姉さん!変な男につかまっちゃダメだからね!
ちゃんと私の審査を通してください!』

『そんな相手いないこと、紅が一番よく分かってるでしょ…』

『うぅ~あのクソ男ぉ…』

『水飲みなって…』



紅が当時の彼氏に浮気されて、浴びるようにお酒を飲んでいた日を思い出す。
行けそうな女がいたら行っちゃう…つまり…









「龍海さんには、気にしないで欲しいって伝えてください。
私も帰ったらメールしてみます。」

つまり、魔が差したのだろう。

「…そう?ごめんね、うん、伝えておくよ。」

獅音さんはほっとしたようにそう答える。

「あ。あと、これ。」

鞄から本を取り出す。

「龍海さんに渡してもらってもいいですか?」

昨日、龍海さんが忘れていってしまった本。

「龍海に?分かったよ。」

獅音さんが一瞬不思議そうな顔したあと、ニヤリと笑った。

「…翠ちゃん、龍海とは仲良くなった?」

仲良く…

「前よりは身構えずに話ができていると思います。」

「そっか~好きになっちゃったり?」

「別に元々嫌いじゃないですけど…」

「あは、そうじゃないそうじゃない!
恋しちゃった?ってこと。」

「恋、」

顔が熱くなる。何故だ。

「恋、とか、じゃないですよ~…」

獅音さんの目は見ずに答える。

「龍海さん、好きな人がいるみたいですし…」

その言葉を口にしたとき、胸の辺りがぐっと重くなるのを感じた。
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