本当は、愛してる

双子のたまご

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第五章

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時々ポツポツと舞台の感想を話しながら、食事は進む。
途中でワインを勧められた。
少しだけ、とグラスワインを注文する。
話題は今日の舞台の結末へと移った。

「やっぱりハッピーエンドは観ていて安心します」

「そうか。」

「あんなにまっすぐ想いを伝えられたら、素敵ですよね。」

「…ああいう男が好きなのか。」

「えっ。そういうわけではないですが…」

どんな男性が好きかなんて、考えたこともない。

「最後のシーン、納得できなかったか。」

「あ…」

「そんな顔をしていた。」

見られていたのか。

「…マリーがアレクをすんなりと受け入れたことが、凄いな、と。」

アルコールが回ってきたのか、正直に話してしまう。

「恋人は家族を失った穴を埋められるものなのか、と。」

「…」

「恋なんて、縁がなかったので。
恋人ができたら分かることなのかな。」

「恋をしたことが、ない、のか?」

「お恥ずかしながら。」

もしかして、今、私は龍海さんと恋バナをしているのだろうか。
こういうのは普通、女友達と盛り上がるものではないのだろうか。

「そう、なのか…」

龍海さんがワインを飲み干した。
私の恋愛経験の無さに呆れているのだろうか。

「龍海さんは恋をしたことはありますか。」

私も少し気が大きくなっているようだ。
こんなことを聞くなんて。

「…ああ。」

龍海さんが私の目を見て答える。

「俺も、初めて恋をしたのは、最近だ。」

「そうなんですか?」

意外だ。

「お相手の方とは?」

「…まだ、何も。」

「そうなんですか…良い結果になるといいですね。」

「…あぁ。」

龍海さんがふっと微笑む。
凄いな、恋の力は。
この人もこんなに優しい顔で笑うんだなぁ。
…良いな。
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