本当は、愛してる

笹 司

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第五章

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劇場につき、お互いパンフレットに目を通しているとすぐに開演時間になった。
暗転する。



家族を殺され、復讐のために旅をする主人公。
道中で出会う、同じ志を持つ仲間達。
主人公は復讐を果たす。
そして、ずっと一緒にいた仲間の一人との間に、恋が芽生える。

『…終わったんだね、お父さん、お母さん…』

『…マリー、』

『…これからは二人のことを想いながら生きていくわ。』

『故郷に、帰るのかい?』

『えぇ。これまでありがとう、アレク。
皆にもお別れの挨拶に行かなきゃ。』

『っ!待ってくれ!』

ヒロインを抱き締めるヒーロー。

『アレク?!』

『ここで別れるなんて嫌だ…僕と一緒に生きてくれ。』

『…本当?』

『あぁ…愛している。』

口づけを交わして、二人で生きていくことを決める。
ハッピーエンド。




家族がいなくなる、というストーリーに思うことがなかったわけではなかったが、主人公のバックグラウンドの重さよりバトルや恋愛の色が強かったからか、動揺することはなかった。
恋をする暇など無く、恋の仕方を知らずにここまで来た。
それは失った家族の穴を埋められるものなのか。
愛する家族の代わりになり得るものなのか。
華々しい音楽で舞台が終わる。
笑顔のキャストがカーテンコールに出てくる。
会場が拍手に包まれる。


どうせ私にはこれから先も、紅ほど大切で愛せる人なんて現れない。
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