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第三章
Ⅱ
しおりを挟む「翠ちゃ~ん。お疲れ様。」
今日は獅音さん。
今日こそ迎えに来るのはやめてもらおう。
「…お疲れ様です。」
「…お寿司は嫌いだった?」
「…そんなことないですよ。」
寿司が嫌いなわけじゃ、ない。
「…弟が、何かしてしまったかと気にしていたよ。」
「すみません…」
「…今日はなに食べる?」
「…獅音さん。もう…」
「なに食べる?」
ここで流されてはいけない。
「獅音さん。もう私に関わるのはやめてください。」
「…どうして?」
「獅音さんは私を守るって言ってましたけど…
私、何にも狙われていません。
それに…やっぱりおかしいです。
あなた達の揉め事のせいで、紅は死んだのに…」
「…そうだね。」
「……」
「じゃあ今日はご飯はやめよう。」
「っ、だから…」
「関わるのをやめるなら、今日が翠ちゃんと帰れる最後の日になるじゃない。
せっかく来たんだから、家までは送らせてよ。」
「……」
「あと、明日は弟が来るよ。
あいつ、ああ見えて気にしすぎるタイプだから。
昨日のことはちゃんと話して、お互いスッキリした方が後腐れなくて良いと思うけど。」
「でもっ、」
「いいね?」
「……はい。」
「うんうん。」
じゃあ帰ろうか、と獅音さんが歩き出す。
肌寒くなってきた気がする。
そろそろ10月になる。
紅の月が、来る。
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