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第二章
Ⅱ
しおりを挟む「…え?」
「僕たちはいわば、妹さんが死んだ原因だ。
この度は本当に申し訳ない。」
獅音さんと龍海さんが立ち上がり、頭を下げた。
ワックスで綺麗にセットされた髪だと思った。
「…帰ってください。」
そもそも紅を撃ったのは相手の国のマフィアだ。
獅音さん達も原因といえば原因だろうけど。
その場にいたのかとか、何が理由だったのかとか。そんなことはもう聞きたくない。
…謝りに来るとか、マフィアも意外とちゃんとした人たちなんだなぁ。
でもやることは銃撃戦か。
「…謝って済む話じゃないよね。」
「謝りに来てくださったのは分かりました。
でももう紅はいません。
謝る相手は私じゃないでしょう。」
冷静なつもりでいたが、止まらない。
「何で妹が死ななきゃならなかったんですか。
そちらの勝手な殺しあいで、何で私の妹が。
死ぬなら勝手に死になさいよ。
紅を撃ったやつも!こんなこと始めたやつも!
何で、何で…」
「おい」
初めて龍海さんが言葉を発した。
涙でどんな顔をしているのかはよく見えない。
「何ですか。勝手に死ねっていったことにお怒りですか。関係のない私の妹は死んだのに?!
あなた達の仲間が紅を撃った訳じゃない。
撃ったやつはとっくの昔に自分の国に帰ってる!」
「……」
「もう、訳がわからない…
お願い、帰って…」
自分でも何が言いたいのか、何を言っているのか分からなかった。
もう何も考えたくない。一人になりたい。
「…龍海、帰ろうか。」
「…ああ。」
「翠さん、今日は帰るよ。
こんなことになってしまった責任が、僕たちにはある。
力になれることは、なんでもするから。」
「……」
二人がそのまま玄関に向かう。
涙がカーペットに吸い込まれていくのをただただ見ていた。
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