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第一章
Ⅱ
しおりを挟む「姉さーん!パスポートどこ?!ヤバい!」
「また?一番大事なやつでしょ…
あっ、ソファーの上!あれじゃないの?」
紅も社会人になって数年がたった。
念願叶って通訳者になった。
毎回パスポートが行方不明になるのはもうお約束だ。
今回は日本の歌手の海外ツアーについて行くらしい。
「そこか~!ありがと!」
「はいはい。何時に空港?」
「11時くらい!」
「もう出ないと間に合わなくない?」
「行ける!出る!今すぐ行く!」
パスポートをリュックに入れながら、紅が返事をした。
「もう行くね!頑張って参りますよ!」
「はーい、気をつけてね。
特にあれだよ…なんかどっかの国のギャング?の抗争が…みたいなニュースあったし。」
「そんなこと言ったら日本だって発砲事件とかあるじゃん。銃刀法があるはずなのにね~不思議だね~」
「もう、真面目に聴きなよ…」
そんなことより、と紅が振り返る。
「帰ってくる頃には、姉さん誕生日だね!
欲しいものはあるかい?」
「妹にたかるようなことしないです~
無事に帰ってきてくれたらそれでいいよ。」
「やだ、照れちゃう!
うーん…じゃあお任せということで!楽しみにしててね!」
一度ぎゅっと抱き締めあって見送る。
紅と長期間離れるときの、ルーティーンみたいなものだ。
「気をつけて、いってらっしゃい。」
「うん!行ってきます!」
桜がとっくに散った、4月末のことだった。
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