本当は、愛してる

双子のたまご

文字の大きさ
上 下
3 / 54
第一章

しおりを挟む

「姉さーん!パスポートどこ?!ヤバい!」

「また?一番大事なやつでしょ…
 あっ、ソファーの上!あれじゃないの?」

紅も社会人になって数年がたった。
念願叶って通訳者になった。
毎回パスポートが行方不明になるのはもうお約束だ。
今回は日本の歌手の海外ツアーについて行くらしい。

「そこか~!ありがと!」

「はいはい。何時に空港?」

「11時くらい!」

「もう出ないと間に合わなくない?」

「行ける!出る!今すぐ行く!」

パスポートをリュックに入れながら、紅が返事をした。

「もう行くね!頑張って参りますよ!」

「はーい、気をつけてね。
特にあれだよ…なんかどっかの国のギャング?の抗争が…みたいなニュースあったし。」

「そんなこと言ったら日本だって発砲事件とかあるじゃん。銃刀法があるはずなのにね~不思議だね~」

「もう、真面目に聴きなよ…」

そんなことより、と紅が振り返る。

「帰ってくる頃には、姉さん誕生日だね!
欲しいものはあるかい?」

「妹にたかるようなことしないです~
無事に帰ってきてくれたらそれでいいよ。」

「やだ、照れちゃう!
うーん…じゃあお任せということで!楽しみにしててね!」

一度ぎゅっと抱き締めあって見送る。
紅と長期間離れるときの、ルーティーンみたいなものだ。

「気をつけて、いってらっしゃい。」

「うん!行ってきます!」

桜がとっくに散った、4月末のことだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

主人公推しが転生してきました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:13

私の好きな人は異母妹が好き。だと思っていました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:355pt お気に入り:900

だから違うと言ったじゃない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:64

完結 裏切られて可哀そう?いいえ、違いますよ。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35,876pt お気に入り:256

義理妹好き

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

処理中です...