観客席の、わたし

双子のたまご

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第六章

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一度室内デートも経験してしまえば、段々外よりも家で会うことの方が多くなった。
それに正直、私はとてつもなくインドアな人間。
家の中の方が気が楽だった。

獅音さんは龍海さんと琥珀と住んでいるのに対して、私は一人暮らし。
獅音さんの家で龍海さんに会うのはなんだか気まずいし、琥珀と会うのはもっと気まずい。
必然的に私の家で会うことが増えた。

家では何をするでもない。
琥珀が出ている舞台のDVDや映画を観ることが多かった。
あとはうちでご飯を食べるくらい。
料理するときは獅音さんも手伝ってくれた。

二人ともそれぞれ違うことをする日もある。
どうしても仕事が終わらなかった時は、申し訳ないが仕事をさせてもらった。
最初の方は仕事が残ってるので今日は…と断りの連絡をいれていた。
だが、邪魔にならないなら一緒にいたいと言われ、私が仕事をしている時は獅音さんはうちにある本を隣で読む、という形におさまっている。
準備している教材を、たまに一緒に解いてみたりもする。
彼は「龍海や琥珀の勉強を見てあげていたなぁ。」と懐かしそうに笑っていた。

会話は減った気がする。
けど、気まずいわけではない。
一人の時と同じくらい、リラックスできている。
手を繋ぐこともなくなった。
それは、少し寂しい気がしている。
色っぽい雰囲気になることはない。
ただただ、穏やかな時間を過ごしていた。

段々と日が短くなってきた。
そろそろ秋がやってくる。














「…というわけで、ごめんなさい。
ちょっと今日は本当に、会えないかも…です。」

『そっか…』

そんな穏やかなお付き合いの中で、初めての出来事が起こった。
それは私の体調不良。

月に一度やってくるもの。
寒くなって体が冷えやすいのか、私は秋冬に悪化しやすい。
そう、生理痛である。
薬は切れてしまっていた。
起き上がれない。今日はダメだ。
だが、今日は獅音さんと会う予定だった。
早めに連絡をしなければ…と考えて、今。
でも直球では言えないので濁して伝える。

「熱はないんですけど、ちょっと貧血で起き上がれなくて…」

『大丈夫?じゃないよね?』

「いえ、ご心配なく…すみません…」

『何か僕にできることある?』

「う~ん…」

正直、ない。
でも何故か、無性に獅音さんに会いたくなった。
電話をするまでは、今日の予定は断ろうということだけ考えていたのに。
声を聞くと、会いたくなった。
調子が悪いから心細くなっているだけだと、分かっている。
だから誰かに甘えたいだけなのだと、分かっている。

大丈夫ですよ、また来週会いましょう。

そう言えばいいのに、今日の私はいつもの私じゃなかった。

「獅音さん…」

『ん?』

やばい。
今回の生理はちょっとメンタルにも来るやつかもしれない。
なんか、泣きそう。

「…会いたい、です…ごめんなさい。」

少し、声が震えた。
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