観客席の、わたし

笹 司

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第四章

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「はい、着いたよ。」

今日のデート場所はプラネタリウムだった。

「奏ちゃんの地元の星空には敵わないと思うけど、綺麗だと思うよ。」

そういえば以前そんな話をした。
都会の空は明るい、星空は地元の方が綺麗に見える、と。
またこの人はよく覚えていた。

「プラネタリウム、初めてです。」

「そっか。
良かったらまた来ようね。」

「はい。」

館内に入ると、かなり座席数があった。

「わぁ…この椅子ふわふわですね…」

近くの座席に触れてみる。
ふと既に座っている客が目に入る。
リクライニングシートなんだ…
プラネタリウム凄いなぁ。
キョロキョロと周りを見ていると

「奏ちゃん、こっちだよ」

「あ、はい。」

「えーっと、はい、ここ。」

「…え?」

案内された場所はただの座席ではなかった。
大きめのソファ。
隣にある別のソファにはカップルが寝転がっている。
これは、所謂…

「…カップルシート?」

「僕達カップルだもんねぇ。
ほら、寝転んでみよう。
このソファもふわふわだよ。」

獅音さんが靴を脱いでソファに横たわる。
こういうシステム、使うタイプなんだ…

『まもなく上映を始めます。』

「ほら、早く。」

上映開始のアナウンスが流れる。
獅音さんにも隣に来るように促される。

靴を脱いで、獅音さんの隣へ横たわる。



「…手、繋いでいい?」

「…今ですか?」

「うん。」

「いいですけど…」

「うん。」

獅音さんに左手を握られる。
寝そべっているから肩が触れあって、いつもより近く感じる。
ちょっ…と、恥ずかしい、かも。

そんなことを思っていると、獅音さんの手が再び動く。
そのまま、私の指と獅音さんの指が絡まる。

「っ、」

…恋人繋ぎだ。
な、何でこんな、こんな感じなの今日…
謎に緊張して体が動かない。

「ふふ…」

笑い声が聞こえて獅音さんの方を向く。
獅音さんもこちらを見ていた。
顔が、とても、近い。



「どきどきするね。」



獅音さんは、それだけいうと人工の夜空に目を向けた。
私も黙って獅音さんから夜空へ視線をうつす。








…頬が、熱い。
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