18 / 53
第四章
Ⅱ
しおりを挟む「んふふ、嬉しいなぁ。」
これで良かったのかと思い悩む私。
その一方でにこにこしているこの人。
「じゃあはい、僕の連絡先。」
「はい…」
「連絡の頻度はどれくらいがいいの?
会う頻度は?デートは家?外?
疲れてるときは放っておいて欲しい?
僕としては病める時も健やかなる時も、
そばに居たいなぁ。」
「ちょ、ちょっと待って、ください…」
もやもやと考えている暇など無いほどの勢いだ。
「…ともかく、これからよろしくね。」
「…はい」
「なんか僕も小腹空いてきたなぁ。
注文していい?」
「どうぞ…」
この人の思考回路、本当に分からない。
…あ、連絡先、登録しないと。
携帯を取り出し、登録を始める。
「登録できた?」
「今始めたところです。」
「明日は仕事?」
「はい」
「仕事楽しい?」
「まぁ、はい…」
「子供達は可愛い?」
「…はい」
「ねぇ、そのティラミスちょうだい。」
「はい…え?」
反応が遅れた。
自分の目の前からティラミスが無くなる。
「いやあの、それもう溶けちゃってるので、」
「うん。」
「あ、」
そして、そのまま一口、食べられた。
「なんで、さっき何か頼んでたじゃないですか…」
「なんかそれが食べたくなったの。」
前もこんなことがあった。
この人、騙し討ち上手すぎないか?
…私がチョロいのか?
「お待たせ致しました。ティラミスです。」
「え?」
そこで何故か店員さんがティラミスを持ってきた。
「あぁ、彼女に。」
「え?」
目の前に新しいティラミスが置かれる。
「…なんで?」
「だってもうこれぬるいじゃん。
そっちの方が美味しいよ。」
「そう、でしょうね…」
「ほら食べて。」
「いや、それと交換…」
「食べて」
押しが強い…
「…いただき、ます。」
獅音さんにガン見されながらという、かなり気まずい状況でティラミスを一口食べる。
この数分間でかなり疲れたのか、凄く甘く感じる。
「美味しい?」
「はい、美味しいです。」
「良かった。」
マイペースで頑固で子供っぽいところもあるけれど、基本凄く優しい人なんだなぁ。
「明日も仕事なんだよね?」
「はい。」
「わかった。
もうちょっとゆっくりしたら今日は帰ろうか。」
「はい。」
「送っていくね。」
「…はい、ありがとうございます。」
一応、恋人、になったから…
こういうお心遣いは受け取った方がいいよね…
「帰り道、手、繋ぐ?」
「は、」
危ない。
獅音さんと話すときは騙し討ちに気を付けなくては。
それに昨日の今日でそれは…
正直、恥ずかしい。照れる。
「…繋ぎません。」
「惜しかったな~」
確信犯だった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる