13 / 53
第三章
Ⅱ
しおりを挟む「いや、ほんっとごめん。」
「もういいよ…」
琥珀はちゃんと獅音さんに、私の家には行かないよう話してくれていたみたいだ。
「ただ…獅音さんってあんな感じだったっけ?」
「どんな感じ?」
「なんか、昔は穏やかで優しいお兄さんって感じだったけど」
「うん」
「今も穏やかではあるけどさ…
なんか、頑固…?
子供っぽいところも、あるような…」
琥珀が苦笑している。
「あ、ごめん…」
「いやいや、その通りだからいいよ。
うん、残念ながら獅音兄さんはあんな感じ、だねぇ。」
「そうでしたか…」
「あんな感じの獅音兄さんは、今度奏ちゃんとデートなんだぁ、と、最近浮かれています。」
「ちょっと」
「ごめんごめん…因みに」
次はニヤニヤし始めた。
「獅音兄さんが奏のことを好きな理由に納得できたら、付き合うの?」
どきっとした。
あれだけ好きだと言われれば、少なからず意識はしてしまう。
でも…
「…わかんない」
「ふむ」
琥珀は納得できないような声色で相槌を一つ打った。
私が続きを話し出すのを、待っている。
「…演劇以上に、好きになれないかもしれない。」
「…人を好きになることとは違うんじゃない。」
「そうだね」
でも、そういうことじゃない。
「また、失うのが怖い。」
「…」
「きっと、その時感じるのは失った辛さだけじゃない。」
もう必要とされなくなったという絶望も。
…確かにそれを感じるのは、人を好きになった時だけかもしれない。
「奏が、私を失う日は来ないよ。」
獅音さんの気持ちは分からないから、「そんなことない」なんて無責任なことは琥珀は言わない。
でも、自分の気持ちは率直に伝えてくれる。
「…ありがとう。琥珀もね。」
それに、いつも、救われている。
「こんにちは、奏ちゃん。」
「こんにちは。」
デートもとい、獅音さんが私を好きな理由を聞く日が来た。
…なんて恥ずかしい…
「じゃあ行こうか。
スイーツの種類が豊富なお店選んだんだよ。
甘いもの好きなんでしょ?」
「琥珀からの情報ですか?」
「まぁね…あ、手、繋ぐ?」
「繋ぎませんってば」
くすりと笑うと、獅音さんも小さく微笑んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
会社の後輩が諦めてくれません
碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。
彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。
亀じゃなくて良かったな・・
と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。
結は吾郎が何度振っても諦めない。
むしろ、変に条件を出してくる。
誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる