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第二章
Ⅴ
しおりを挟む『はぁ~めっちゃ笑った~。』
琥珀が生き返った。
『でもまぁ、まずは謝らないとね。
バカ兄一号が本当にごめん。』
「いや、もういいんだけど…」
『あれだけ笑ったけどさぁ、なんというか、その…
まさか、ここまでするとは思わなくて…』
さっきとは打って変わって、琥珀の歯切れが悪くなる。
「琥珀は獅音さんがどういうつもりなのか、知ってるってこと?」
『う~ん…』
「やっぱり私、からかわれただけ?」
『…違うと思うけど?』
「それ以外にあんなことした理由ある?」
『う~ん…』
これはお茶を濁されているな…
何故、の答えは琥珀からは貰えないようだ。
「なんだかんだ家の場所もバレてるんだけど、急に来たりしないよね?」
『困る?』
「困るね」
『じゃあそれはやめるように伝えとく。』
「それ以外は止めてくれないの…」
『それ以外にどんなご要望がありまして?』
そう言われると難しい。
琥珀の身内に対してああだこうだ言いたくないし。
「また何かあれば連絡するよ」
『分かった。…あのさ、』
「なに?」
『獅音兄さんのやることにはちゃんと理由があって…その、悪いこと考えてるわけじゃ、』
「ふふ、悪い人だとは思ってないよ。
ヤバい人だと思ったよ。」
『おぉ…』
琥珀に話をしたらなんだか落ち着いた。
そう、久しぶりに会った特に親しくもない人に突拍子もないことをされて驚いただけ。
それに、本当に知らない人だったら怖いけど、相手は琥珀のお兄さん。
…どうにかなるでしょ。
最後に舞台の感想とお礼を伝えて、電話を切った。
「ふぅ…」
好き、付き合って…か。
ありふれた台詞だ。
琥珀がくれなかった、何故、の答えを考えてみよう。
妹の友達にそう言った理由。
獅音さんは私のことをどんな人間だと思っているのだろうか。
獅音さんはどんな人間でどう考えていて…
「…ふふ。」
役作り、してるみたい。
「あ、おかえり。」
「え…」
仕事から帰るとマンション前に獅音さんがいた。
「奏ちゃん、ちょっとお話しよう?」
琥珀、約束が違うじゃん…
「…」
「大丈夫?」
「大丈夫、ではないですね。
…琥珀から何か聞いてません?」
「う~ん…聞いたかなぁ。」
分からない…
琥珀がちゃんと話をしてくれたのかどうか。
「どんなお話を?」
「この前の告白の返事について。」
…呆れた。
いや、もともとこういうテキトーな人なのかも。
「…近くのファミレスでも行きます?」
散々考えた、何故、の答え合わせでもするか。
「うん、いいね。」
「行きましょう。」
そういって歩き出す。
「うん。…手、繋ぐ?」
「繋ぎません。」
本当、何考えてるんだこの人。
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